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スマホ「実質0円」禁止の次に総務省が狙うこと

佐野正弘のモバイル最前線

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NIKKEI STYLE

日経トレンディネット

2015年に突如巻き起こった総務省による携帯電話の料金引き下げに関する議論。その結果、2016年の携帯電話市場では大きな変化が起きている。さらに総務省は、競争活性化に向け、新たな議論を進め始めた。10月から実施されている「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」から、総務省の新たな狙いが見えてきた。

タスクフォースの影響を大きく受けた2016年の携帯市場

2016年の携帯電話業界を振り返るにはまだ早いが、総務省が業界全体に大きな影響を与えたのは間違いないだろう。

2015年9月に、安倍晋三首相が携帯電話料金の引き下げを検討するよう発言したのをきっかけに、同年10月より総務省のICTサービス安心・安全研究会が「携帯電話の料金その他の提供条件に関するタスクフォース」を開始。議論の中でまとめられた問題点の解消を総務省が大手キャリアに求めた。2016年はその結果が反映されてきている。

中でも、大きな影響を与えたのが、タスクフォースの結果を受けて総務省が4月に打ち出した「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」だ。同ガイドラインでは、従来キャリアのビジネスにおいて"常識"とされていた、端末を実質0円、あるいはそれを割り込む価格まで引き下げ、割引額を毎月の通信料でまかなう販売手法が、通信料の高止まりを招くうえ、新規参入事業者の成長を阻害するなど公平性を欠くと指摘。「スマートフォン(スマホ)を購入する利用者には、端末を購入しない利用者との間で著しい不公平が生じないよう、端末の調達費用に応じ、合理的な額の負担を求めることが適当である」として、実質0円販売を事実上認めない方針を打ち出した。

これを基に総務省は、端末価格を0円前後まで値引くキャリアに対して行政指導を実施した。最近では10月7日にも、大手キャリアがクーポンの送付により不適正な端末購入補助を行っていたと指摘。NTTドコモとソフトバンクが文書で是正の要請を、KDDIが口頭注意を受けたほか、KDDIの連結子会社で、沖縄で携帯電話事業を展開する沖縄セルラーに対しても、注意を促した。その結果、大幅な値引き販売はほとんど姿を消している。

総務省の影響はそれだけではない。2016年の初めに大手キャリアが相次いで、月額5000円程度で音声通話込み、1GBの高速通信容量が利用できる安価な料金プランを出したのに加え、2年縛りの影響を受けにくくする仕組みや料金プランも導入。KDDIは、長期利用者優遇サービスの「au STAR」を開始するなど、これまでキャリアがあまりやりたがらなかった施策を相次いで始めている。

携帯電話業界の商習慣に対して厳しい目を向けているのは、総務省だけではない。独占禁止法を運用する公正取引委員会も、8月に「携帯電話市場における競争政策上の課題について」という報告書を公表。総務省と同様、大手キャリアの値引き販売などに対して、厳しく指摘しているほか、国内での中古端末の流通量が少ないことを問題視。キャリアだけでなく端末メーカーに対しても、端末の中古販売を制限することには問題があると明言している。

「フォローアップ会合」で何が議論されているのか

このように、行政側は大手キャリアに対して厳しい姿勢を示す一方、MVNOに対しては競争力拡大に向けた施策を積極的に展開してきた。それを象徴しているのが、2016年8月、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)がNTTドコモに対して加入者管理機能の連携を申し込み、自社でSIMカードが発行できる「フルMVNO」になることを発表したことである。

両社の加入者管理機能開放に関する議論は2014年から進められていたそうだが、タスクフォースの議論によって、総務省が開放促進に向けた議論を推進すべきという方針を打ち出した。これが連携協議の加速、そしてIIJのフルMVNO化に大きく影響したものと見られる。

こうした行政側の一連の取り組みによって、大手キャリアのスマホの販売が落ち込んだ。一方で、安価なサービスを提供するMVNOや、SIMフリースマホを手掛けるメーカーは一層大きな伸びを見せており、市場に大きな変化が生まれてきている。

タスクフォースから1年が経過した2016年10月、総務省のICTサービス安心・安全研究会は次のステップとして、2014年のSIMロック解除義務化を含めた一連の措置を振り返り、市場動向をフォローアップする「モバイルサービスの提供条件・端末に関するフォローアップ会合」を開始した。

このフォローアップ会合の概要を見ると、議論のテーマは大きく分けて2つある。1つはMVNOの拡大を通じた「競争の加速」、そしてもう1つは、利用者による「通信サービスと端末のより自由な選択」である。

これだけでは少々分かりにくいが、実は今回のフォローアップ会合に関しては、メーンの会合だけでなく、「モバイル接続料の自己資本利益率の算定に関するワーキングチーム」という会合が別途、設けられている。それゆえ1つ目のテーマは、大手キャリアがMVNOから回線を借りる際に支払う「接続料」と解釈できる。

MVNOが支払う接続料のキャリア間格差を是正

このワーキングチームの会合で進められているのは、大手3社の間で大きな開きがある接続料の差をいかに小さくするかということだ。

実際、2014年度の10MBのデータ通信に関する接続料は、NTTドコモが月額79万円であるのに対し、KDDIが月額97万円、ソフトバンクが月額117万円と、最大約1.5倍の開きがあると指摘されている。この接続料の差が、MVNOの利用する回線がNTTドコモに極端に偏っていることにもつながっており、総務省側としてはそれを是正したい考えのようだ。

この差を生み出しているのは、接続料を算出する際に用いる「β」という値だ。第二種指定電気通信設備制度の対象となる事業者(移動体通信では大手3社と沖縄セルラーが相当)の場合、電気通信事業法では「適正な原価」と「適正な利潤」が接続料の上限と規定されており、βはその適正な利潤を算出する際に用いられる値である。

βは事業者が独自に算出でき、各社の「移動電気通信事業に係るリスク」や「財務状況に係るリスク」を組み入れられる。だが、各社とも移動体通信電話事業だけを展開しているわけではない。それゆえ、各社でβの算出方法は異なっているようで、最も移動体通信事業の比率が高いNTTドコモは、自社の株価などを基にしている。KDDIはNTTドコモの株価などを基に、自社の事業・財務リスクを加える形で算出している。一方、ソフトバンクは持ち株会社ソフトバンクグループの株価などを基に算出しているようだ。

また、βを計測する期間も、NTTドコモとKDDIは、NTTドコモが上場した1998年10月からとしているのに対し、ソフトバンクは、現在のソフトバンクグループが移動体通信事業に参入を表明した2004年4月からに設定しているなど違いがある。そうしたいくつかの違いが、βの値に大きく影響しているそうだ。

現状のβの算出方法に関して、ある構成員から「ソフトバンクの算定式は理解が難しい内容が含まれる」という意見が出る一方、別の構成員からは「計測期間が1998年からというのは長すぎる」という意見が出るなど、各社の算出式には改善の余地があるとの見解が多く聞かれた。しかし一方で、移動体通信は公共性が高いとはいえ、固定通信やエネルギー産業などとは異なり、市場や技術の変化が非常に激しく、時として大きな業態転換を図るケースがあることも考慮する必要がある。

総務省側では、そうした業界独自の特性を加味しつつ、他の業界の動向も参考にしながらβの算出方法を考慮。接続料の格差是正に向け、議論を進めていく方針だ。今回の格差是正によって、現状特に数が少ないソフトバンク回線を利用したMVNOが増加することが期待されるが、一方でソフトバンクとしては、ワイモバイルで低価格層の獲得を積極化しているだけに、何らかの抵抗を見せる可能性も考えられそうだ。

SIMロック解除までの期間が短くなる?

そしてもう1つのテーマは、SIMロック解除に関するより踏み込んだ施策や端末の値引き販売抑制に関する対応になりそうだ。

SIMロック解除に関しては、一昨年のSIMロック解除義務化を受け、現在大手3社ともに、スマホなどの端末購入後、6カ月以降にSIMロックを解除できる仕組みを導入している。だが細かな部分に関しては各社で違いがある。

例えば、解約した端末のSIMロック解除に関して、NTTドコモとソフトバンクは解約後3カ月経過した端末や、中古端末のSIMロック解除には応じていないが、KDDIは応じている。また自社のネットワークを利用したMVNOのSIMを、SIMロック解除前の端末に挿入した場合、NTTドコモでは利用できるが、KDDI(VoLTE対応端末のみ)やソフトバンクでは利用できず、SIMロック解除が必要だ。そうした細かな違いがユーザーの混乱を招くとして、よりユーザーが利用しやすいよう改善を求める声が、構成員から上がっていた。

しかしながら、中古端末のSIMロック解除に関しては、端末を不正転売目的で購入し、通信料金を踏み倒して売却してしまうケースもあることから、KDDIも今後の規制強化を検討するなど、各社とも慎重な姿勢を見せている。またSIMロック解除していない端末でのMVNOのSIM利用に関しても、KDDIやソフトバンクは顧客の契約が異なるため、現在の対応は適切であるとの姿勢を崩していない。一方で、ソフトバンクはSIMロック解除できるまでの期間を現状の6カ月より短くする方針を示すなど、課題に応える代替案も提案している。

だが、いくらSIMロックが解除しやすくなったといっても、キャリアが販売する端末は自社が保有する周波数帯のみに対応していることが多い。幅広い周波数帯に対応するiPhoneを除けば、他のキャリアのSIMを挿入しても端末性能はフルに発揮できず、かえって不便さを感じてしまう。一方で、最近では、SIMフリースマホの側でも、NTTドコモだけでなくソフトバンクや、従来対応が難しいとされてきたauのネットワークにも対応する端末が増えてきており、MVNOを利用するならそちらに買い替えた方が便利だという流れもできつつある。

それゆえ、現状では、キャリアが販売する端末のSIMロックを解除しても、海外渡航時に現地のSIMを挿入して利用できるくらいしかメリットがない。利用活性化のためには、SIMロック解除のしやすさを追求するよりも、別の側面での環境変化が求められているように思う。

キャリアの総務省に対する要望とは?

逆に、第1回のフォローアップ会合でキャリア側から要望の声が相次いだのが、先のガイドラインによる事実上の割引規制の見直しだ。

中でも多くの要望を出したのがソフトバンクである。同社は新規・番号ポータビリティ(MNP)の通信料金割引も端末割引補助と見なされたことで、キャリア間の競争が後退する半面、より規模の大きなキャリアは、長期割引や家族割引などで、ガイドラインの制約を受けずにメリットを強調できることから、顧客が固定化すると指摘。その上で、端末購入を必須としない新規・MNP向け割引や、キャリア間をまたいでフィーチャーフォンからスマホに移行するユーザーに対する割引の規制緩和を要望した。

加えて、携帯電話と固定事業者が異なる場合の割引が規制の対象外となっていることに対しては、規制を強化すべきとしたほか、高価格端末と廉価端末に規制の差がないため、廉価端末に対する規制を緩和、もしくは撤廃すべきではないかとの意見も述べていた。

またNTTドコモは、端末購入を条件としない回線販売の奨励金が規制の対象外となっているため、代理店がそれを原資として端末割引を実施し、iPhone 6s等が実質0円未満で販売されるケースが散見されるなど、ガイドラインに抜け穴があることを指摘。抜け穴に対する厳しい施策を求めた。

今回の会合における各社の要望を振り返ると、ガイドラインによって発生するライバル他社の優位性を強く警戒している印象が強い。総務省が実質0円販売の徹底した排除を望んでいるだけに、キャリア側から、実質0円復活を望む声が出ているわけではない。だがガイドライン施行後の市場環境は、大手キャリア同士の競争を失わせる要素が多く、上位キャリアほど有利になり、下位キャリアほど不利に働きやすいのは事実だ。

それだけに、拙速に決まったガイドラインの問題点を突く形で、下位キャリアは攻め、上位キャリアは守りを固めるために、総務省側から有利な要素を引き出したい狙いが見て取れる。

やり過ぎ感のある行政指導も散見

キャリアとは別に、現状のガイドラインと、それを基とする総務省の指導には、ユーザーの側からの疑問の声も出てきている。最近の事例を挙げれば、10月にNTTドコモが指導を受けた、同社のクレジットカード「dカードGOLD」向けの「ケータイ購入ご優待券」がそれだ。

ケータイ購入ご優待券は、ユーザーのクレジットカード負担額に応じたクーポン券が提供される仕組みで、dカードGOLDの前身である「DCMX GOLD」の時代から提供されている。携帯電話料金ではなくクレジットカードの料金が原資となっており、通信事業者の直接的なキャンペーンによる割引施策とは性質が異なる。

しかし、総務省は、そのケータイ購入ご優待券と、NTTドコモが提供する別のいくつかの特典を用いた場合、実質0円を下回るケースがあることを問題視し、指導に乗り出している。ただその対象となる高額な優待券がもらえるユーザーは、dカードGOLDを2年以上利用し、なおかつ、その利用額が200万円を超えるなど非常に限られた人であり、NTTドコモを長い間利用する"上得意様"である可能性が高い。そのため、疑問の声が多く上がっているのだ。

こうしたキャリアの声や、ユーザー側が感じる矛盾点に、「実質0円販売撲滅」こそが最適解と判断していると思われる総務省がどこまで耳を傾けるかはわからない。だが、タスクフォースの経緯を振り返っても、その議論やガイドラインの策定が急速に進められた印象が強い。さまざまな面で、曖昧さや矛盾を抱えながら運用されており、時として強引な印象を受けるのだ。

フォローアップ会合は、10月17日にMVNOのヒアリングを実施した第2回の会合が実施されており、11月上旬まで継続して議論が進められるとのこと。真にユーザーメリットのあるフォローアップの議論が進展することに期待したい。

佐野正弘(さの・まさひろ)
福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。

[日経トレンディネット 2016年10月19日付の記事を再構成]

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