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膠着相場で注目 ヘッジファンド型投信の活用法 QUICK資産運用研究所 北澤 千秋

2016/10/26

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 世界の金融・為替相場が膠着感を強めると、投資信託業界で注目されるのがヘッジファンド型の投信だ。「絶対収益追求型」といって、株式相場が上げようが下げようが、円高になろうが円安になろうが、どんな市場環境でも運用益を稼ぎ出すことを目指しているからだ。

 実際には、ヘッジファンド型といっても運用戦略によって得手、不得手な相場局面があり、決して全天候型とは言えない。ただ、手持ちの投信との相性を考慮したうえで追加で保有すると、資産全体の運用効率が上がることがある。

■すべての投信が利益最大化を目指すわけではない

 投資家が投信を買うのは資産を増やすのが目的。だが、投信はどんな時にも利益を最大化するために運用されているかというと、実際はそうとは限らない。典型がインデックス投信や指数連動型上場投信(ETF)だ。これらは対象とする指数と同じ値動きをするのが運用の目的だから、指数が下がれば当然、基準価格も連動して下がる。

 ファンドマネジャーが運用するアクティブ型にも投資家の利益ではなく、「指数を上回る成果」を目的としている投信は多い。そうしたファンドはたとえリターンがマイナスでも、マイナス幅が指数より小さければ、市場を上回る超過利益をもたらしたのだから、運用目標は達成できたとされる。

 これに対してヘッジファンドなどの絶対収益追求型は、どんな市場環境でも投資家に利益を提供するのが目的だ。独立系ファンドコンサルタントの吉井崇裕氏は、「相場の膠着が長引き、投資家がもうけにくくなったり、投資先に迷ったりするとヘッジファンド型が話題になる」と指摘する。

 どんな時にも投資家に利益を提供したいという心意気は買うとしても、実際はこうしたファンドも市場環境によって運用成績が大きく揺れる。ファンドマネジャーの手腕や運用モデルの優劣に加え、採用する運用戦略によって得意な相場や苦手とする相場があるからだ。ヘッジファンド型投信の運用戦略をいくつか紹介しよう(表A)。

 まずは、割安銘柄を買い持ちする一方で、割高銘柄を売り建てる「ロング・ショート戦略」。相場が上昇すれば買い持ち銘柄で利益を上げ、相場が下がれば売っている銘柄に利が乗るので、安定的なリターンが期待できるという。

 しかし、今の日本株のように超低金利でかつ、日銀のETF買いが株価を支えているような市場では、十分には実力を発揮できない。バリュエーション(企業価値の評価)が機能しにくく、割高・割安による銘柄選別がなかなか進まないからだ。最も強みを発揮するのは、割安株が見直し買いされる業績相場のような市場環境だ。

 次は「トレンドフォロー戦略」。上げ相場ではどんどん買い上がり、下げ相場では売り乗せていく投資手法で、様々な市場の先物を駆使して運用するCTA(商品投資顧問)に代表される。

 相場が上昇・下落のトレンドを強めるときには大きなリターンが期待できる一方で、相場がこう着してボックス相場が長く続くと、フォロー(追随)すべきトレンドがないため成果は上がらない。そういうときには指数に負けるだけでなく、信託報酬の負担もあって基準価格はじりじり下げるような事態になりかねない。

 「グローバル・マクロ戦略」は世界経済や各市場の分析に基づいて、ファンドマネジャーまたはコンピューター(運用モデル)の指示で投資先や投資額などを決める。どんな運用をしているかは外部からはわかりにくく、どのような市場環境で強みを発揮するかは、過去の運用実績から推し量るしかない。

 これらの異なる戦略を採用する複数のヘッジファンドを束ね、1本の投信に仕立てた「ファンド・オブ・ヘッジファンズ」も同様で、ファンドの特徴をつかむには時間がかかる。仕組みや投資手法が複雑だと、運用成果が市場環境のせいなのか、戦略のせいなのかも見極めにくい。こうしたタイプの場合、少なくとも運用期間の短いファンドは購入を見送るのが無難だ。

 こう見てくると、ヘッジファンド型投信を運用資産の真ん中に据えるのはためらわれる。では、どんな投資方法が考えられるのか。吉井氏は「資産の一部にヘッジファンドを組み入れるのが効果的」と主張する。

■相場の下落時に損失を限定

 具体的な効果としてまず考えられるのがリスクの抑制だ。例えばロング・ショート戦略のファンドは通常の株式相場とは異なる値動きをするので、相場の下落時には損失を限定する効果が期待できる。

 QUICKの情報サービス「Qr1」を使って例を見てみよう。表Bは日経平均連動投信のニッセイ日経225インデックスファンドとロング・ショート戦略のLSオープン(三井住友トラスト・アセット)、そして両ファンドを7:3の割合で組み入れた「合成ファンド」のリスクとリターン(いずれも年率)だ。

 アベノミクス相場の全盛期を含む過去5年ではニッセイ日経225のリターンが合成ファンドを上回ったが、相場が軟調だった過去1年では、合成ファンドのリターンが1ポイント超上回り、リスクは7ポイントほど下回っていた。リーマン危機を含む過去10年でも、合成ファンドの方がニッセイ日経225より値動きは穏やかで、リターンは大きかった(グラフC)。

 もう一つ期待できる効果がリターンの上乗せだ。トレンドフォロー型の投信を少し保有しておき、相場が上放れ・下放れしたときに大きなリターンを狙うという方法だ。ただし、大きな上昇・下落相場に対するヘッジ(保険)のようなものと割り切って、膠着相場が続く間は、損失が少々膨らんでも我慢しなければならない。

 ヘッジファンド型投信は信託報酬も少しずつ安くなり、だいぶ投資しやすくなってきた。それでも一般の個人投資家にはまだなじみが薄く、自分で選んで購入するのは少しハードルが高いかもしれない。そこで最近は、ヘッジファンドを組み入れたバランス型投信も出ている。期待できる効果は株式投信などを保有している人がヘッジファンド型を追加購入するのと同じだ。

 一例がGCIエンダウメントファンド(成長型、安定型)。国内外の株式、債券、不動産投資信託(REIT)にETFを通じて投資する一方、資産の3割はトレンドフォロー戦略のヘッジファンドで運用する。

 今年6月に英国の欧州連合(EU)離脱問題で市場が動揺した際には、組み入れたトレンドフォロー戦略のファンドがうまく機能し、基準価格は大きく下げることなく、その後に大きく上昇していた。吉井氏は「完成度の高いバランス型投信」と評価している。

 ただ、ヘッジファンドを組み入れたバランス型投信も様々で、運用成績がまったく振るわないファンドもある。それらの多くは仕組みが複雑だったり、ヘッジファンドの位置づけが不明確だったりする投信だ。「絶対リターンを目指します」という説明をうのみにして、内容がよく理解できないまま、そうした投信を買うのはご法度だ。

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