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情熱の「街角サンバ」に酔う リオデジャネイロ 素顔のブラジルを歩く(上) 写真家 渋谷敦志

2016/10/26

リオの街角でサンバを踊る男女

この夏、リオデジャネイロ五輪・パラリンピックに沸いたブラジル。どの国や地域の選手にも惜しみなく声援を送る温かい国民性に、あらためて親近感を抱いた人も多いだろう。ただ、多くの日本人にとって、ブラジルは遠い国であり、一定のイメージしかない人が多いかもしれない。学生時代からブラジルに魅せられ、20年にわたって写真を撮り続けてきた写真家の渋谷敦志(しぶや・あつし)氏に、「素顔のブラジル」の魅力を3回にわたって紹介していただく。旅の始まりはサンパウロ、そしてリオへ――。

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■スロースターターだが本番に強い

南米で初めての開催となったリオ五輪が終わり、東京へとバトンが渡された。「後半のパラリンピックまでブラジルの温かさや寛容の精神が伝わっていた」「もっとブラジルのことが知りたくなった」。五輪に関わった知人友人からの声を聞き、我がことのようにうれしかった。

前評判は散々なものだった。スタジアムや選手村の建設は間に合うのか、市内から会場までの交通手段は、リオは銃弾が飛び交うっていうじゃないか、等々。全くの見当違いともいえず、ぼくも返答に困っていたのだが、昨年リオに行った際、カリオカ(リオっ子)の友人に「正直なところ、オリンピックは本当に大丈夫と思う?」と聞いてみると、「大丈夫、大丈夫。日本の方が準備が進んでいるのは間違いないけどね」とジョークで返された。そして、「これがブラジルの新幹線さ。時速はボルトより速い」といって、リオ市内からオリンピックの会場をつなぐバス専用レーンを案内してくれた。

確かな根拠があるわけではないけれど、一見、無計画で非効率でも、ちゃんと大一番に合わせてくるのがブラジル流、というのがぼくの見方だ。サッカーW杯だってそう。セレソン(ブラジル代表)はいつもスロースターターで、このチームで大丈夫か?と予選で不穏な空気を漂わせながら、ちゃっかり決勝に合わせて仕上げてくる。逆に予選から調子よすぎると不安になるくらい。そう。ブラジルは本番に強いのだ。

ぼくは今、写真家としてアフリカやアジアを中心に60カ国以上を回り、紛争や貧困、災害の地で生きる人びとを撮り続けているのだが、写真家人生の原点はこの愛すべきブラジルにある。

■セントロ、日系人街……ありのままのブラジルに魅せられて

学生時代に働いていた法律事務所で(右から2人目が筆者、真ん中が所長で弁護士の二宮正人氏)

最初にブラジルに行ったのは1996年、20歳のときだった。大学を1年間休学し、サンパウロの法律事務所で研修生として勤務した。写真家を目指していたぼくは、週末や休暇を利用してカメラ片手にブラジル中を駆け回り、旅先で出会った人や風景を撮る中で、ブラジルの魅力や写真の楽しさを知った。大学を卒業して、写真家になってからもブラジルを繰り返し訪れ、20年の間に撮りためた作品をまとめて、この夏、写真集『回帰するブラジル』(瀬戸内人)を発刊した。リオ五輪開催に合わせ、東京と大阪で写真展を開催し、華やかな祭典のよそ行きのブラジルとは違う、普段着の飾らないブラジルを写真で紹介しようと考えたのだ。

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