「もらう」から「与える」へ アラフォー女子の働き方
こんにちは。社会保険労務士 佐佐木由美子です。職場において、アラフォー女子はまさに働きざかり。頼られる存在として、様々な仕事を任される人も多いと思いますが、これからさらにすてき女子になるために大切にしたいこととは……。
様々な年代の女性が働く中で
出産をしても、仕事を辞めずに働き続ける女性が増えています。あるいは、シングルで着実にキャリアを重ねている女性もたくさんいらっしゃることでしょう。働き続けることで、20代に偏っていた職場の女性が30代、40代……と様々な世代へ広がり、働く女性も多様化しています。
新人のころは仕事を覚えるのが精一杯。仕事の基本をマスターして、職場で戦力となってくるのが一般的にはアラサー世代です。人によっては、結婚や出産などのライフイベントに直面したり、昇進や転勤、転職を経験したりするなど、様々なバックグラウンドを持ちながら仕事を続けていることと思います。
そして、キャリアや体力、家族関係など幅広く変化を迎えるのがアラフォー世代といえるでしょう。女性の場合、数値的にみると管理職は男性と比べて著しく少ないので、引き続き現場での仕事を任されている方は多いといえます。
長年、現場で培われた経験とスキルは、20代と比べると相当奥深いものとなって身についているはずです。同じ仕事をしているようでも、前向きな人は自分なりに工夫を加え、独自のノウハウを身に着けて進化しているのではないでしょうか。
人は加齢によって肉体的には衰退するといわれますが、精神面で考えたとき、時間の流れとともに様々な経験を通して成長し続ける可能性を持っていると私は思います。
役割は変化していく
アラフォー世代ともなると、熟練したこれまでの技術やノウハウを後輩たちに教え引き継ぎ、サポートする立場へと役割が変化していきます。自分に与えられたミッションもこなしつつ、人を育てていくことは決して容易なことではありません。
成果主義によって本人の成果ばかりが強調されてしまうと、自分の業務以外に育成を担うのはあまりにも荷が重い、という意見もあるかもしれません。
個人の業績も大切ですが、職場は基本的にチームで動いています。組織としての力が底上げできれば、その成果は自分にも返ってくる、と大きな視点で捉えて、育成やサポートに積極的に関与されてみるのはどうでしょうか。
管理職の立場となれば、部下のマネジメントは必須ですが、非管理職であっても、人を育てていくという視点は大切だと思います。特に、アラフォー世代ともなれば、そうした役割が求められてくるでしょう。
ライフ・サイクルと発達課題
発達心理学者のエリクソン(E.H.Erikson、1902~1994年)は、人間の精神的発達について、人生を8段階に区分し、それぞれの段階には自我の発達課題があると指摘。人は各ステージにおける課題を克服しながら生涯をかけて発達する存在であるとしました。
8段階のライフ・サイクルは以下のように分かれており、各段階に応じて課題があります。
幼児期初期(1歳半~3歳)
幼児期後期(3歳~6歳)
学童期(6歳~13歳)
思春期・青年期(13歳~22歳)
成人期初期(22歳~40歳)
壮年期(40歳~65歳)
老年期(65歳~)
たとえば、青年期においては、自我同一性(アイデンティティー)の確立が課題であり、「本当の自分とは何か?」といった根源的な問いに向き合う試行錯誤の時期とされています。
思春期を乗り越え、社会に出てから30代ごろまでは、信頼できる人との親密な関係性を構築する時期であり、親密性にはアイデンティティーの確立が必要だとされています。確かに、個の確立がある程度保てないと、違った価値観を持つ人たちと対等に語り合うことは難しいかもしれません。過度に相手に依存したり、妥協する形での付き合いとなってしまうと、自分を傷つけてしまったり、失うことへの恐怖などで、孤立感を強めてしまうことにもなりかねません。
アラフォー世代は社会に還元し始める時期
アラフォー世代(壮年期の開始あたり)となると、新たな発達課題として、「世代性」と「停滞」の拮抗がテーマとなります。この世代性(Generativity)とは、エリクソンの造語ですが、次の世代を支えていくものを生み出し、育み、積極的に関わっていくことをいいます。それは子どもだけに限らず、たとえば、知識や技術なども含まれます。
これまでは、家族内においても、職場などにおいても、自分を中心として考えてきたとしても不思議ではありません。親や先生、上司など周囲から、与えられること、教えられること、を当たり前のように受け取ってきたのですから。
アラフォー世代ともなると、そうした時期を過ぎて、これからは自分がしてきてもらった多くのことを、社会に還元し始めていく時期ともいえるかもしれません。これまで自分が培ってきた知識や経験、技術などを後輩たちに伝えていくことによって、それがまた自分自身の成長をもたらしてくれるのです。
次世代を育てるために、積極的な関わり合いを持つこと。こうした日々の行動が、職場をはじめとする様々な人、ひいては会社から求められる存在となり、さらに良い循環が生まれてくるのではないでしょうか。
社会保険労務士。米国企業日本法人を退職後、社会保険労務士事務所等に勤務。2005年3月、グレース・パートナーズ社労士事務所を開設し、現在に至る。女性の雇用問題に力を注ぎ、「働く女性のためのグレース・プロジェクト」でサロン(サロン・ド・グレース)を主宰。著書に『採用と雇用するときの労務管理と社会保険の手続きがまるごとわかる本』をはじめ、新聞・雑誌、ラジオ等多方面で活躍。
[nikkei WOMAN Online 2016年9月13日付記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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