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クルティシェフさん ロシアのピアノは歌う

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NIKKEI STYLE

ロシアのピアニスト、ミロスラフ・クルティシェフさん(31)が10月に来日し、ソロのほか、妻でバイオリニストの神尾真由子さんとのデュオでも全国各地で公演する。2007年チャイコフスキー国際コンクールで最高位となった若手実力派に、ロシア伝統のピアノ奏法や来日公演について聞いた。

10月14日、高級ブランド店が並ぶ東京・表参道を長身で細身の青年が歩いてきた。「さっき日本に着いたばかり。サンクトペテルブルクの自宅から直接来た」。多弁で陽気なロシア人青年は「カワイ表参道」のサロンルームに入ると、グランドピアノに向かってさっそく練習を始めた。フランツ・リスト作曲「愛の夢 第3番」。「もう20年間は弾き続けている。叙情的な音楽。すごく親しみのある曲だ」。弾きながら無音で口ずさんで歌っている。愛の夢を歌い上げるピアノだ。

愛を歌うように弾くピアノ

同じ07年チャイコフスキー国際コンクールのバイオリン部門で1位優勝した神尾さんと13年に結婚した。世界トップの演奏家どうしの夫婦はサンクトペテルブルクに暮らしている。15年に第1子が誕生。「日本には20回くらい来ている。妻の実家にも何度も行った」と語り、「これからは日本での演奏活動に特に力を入れていきたい」と意気込む。今回の来日では10月25日のサントリーホール(東京・港)をはじめ神尾さんとのデュオで11回、ソロで2回の公演を催す。「日本の聴衆は非常に注意深く私の演奏を聴いてくれる。ホールの静けさが印象的だ」。結婚を通じて日本が特別の演奏会場になったようだ。

1985年に旧ソ連のレニングラード(現サンクトペテルブルク)で生まれた。6歳でリサイタルを開き、10歳でユーリ・テミルカーノフ指揮サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団とモーツァルトの「ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466」を共演しデビューした。サンクトペテルブルク音楽院を卒業後、同音楽院のピアノ科で5年間教えている。19世紀のピアニスト兼作曲家のアントン・ルビンシテインが創設し、作曲家のチャイコフスキー、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチらを輩出した名門校だ。同音楽院で学んだクルティシェフさんの演奏にはロシア独特のピアノ奏法「ロシアピアニズム」の伝統が流れているはずだ。

ロシアピアニズムの伝統を継承

ロシアピアニズムとは何か。そんな問いを発しただけでチャイコフスキーやラフマニノフのピアノ協奏曲のロマンチックなメロディーが聞こえてきそうだ。ロシア正教会では、人間の声が神の言葉を最もよく伝える、との初期キリスト教の教えを守ってきた。楽器の演奏を禁じたため、無伴奏の声楽曲(アカペラ)が発展したという。こうした環境下で人声に近い「歌い上げるピアノ」の演奏が生まれたといわれる。日本を代表するピアニストの中村紘子さんは生前、「ロシアには西欧の文化が遅れて入ってきた。20世紀になっても19世紀のロマン派の伝統が堂々と生き続けた。その恩恵を最も受けたのがピアノという楽器」と語っていた。ロマン派の歌が生き続けているのだ。

「ロシアピアニズムは今やブランドだ」とクルティシェフさんはその価値を指摘する。「偉大な伝統は19世紀のルビンシテインから始まり、ラフマニノフを経て現代まで受け継がれている」。クルティシェフさんの説明では、ロシアピアニズムの特徴は3つ。まず「演奏のスケールの大きさ」。次に「作曲家の作風に注意深く寄り添う演奏」。3つ目は、これが最も重要と思われるが、「歌い上げるように(ベルカント、カンタービレで)弾くこと。ピアノの一つ一つの音の質を大切にして弾くことだ」と説明する。そして「自分の演奏もロシアピアニズムに近いものだと信じたい」と話す。

旧ソ連時代もスヴャトスラフ・リヒテル、エミール・ギレリスら世界的ピアニストを輩出したロシア。村上春樹さんの小説「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」では、リストのピアノ曲集「巡礼の年」を弾くピアニストとしてラザール・ベルマンが紹介されている。ベルマンも19世紀ロマン派の作品を得意とし、豊かな情緒表現で鳴らすロシアピアニズムの体現者だったといえる。そして現代ロシアの若手を代表する一人として、クルティシェフさんがリストの「愛の夢」を情感たっぷりに弾く。

神尾さんとのバイオリンとピアノのデュオでは、ドイツロマン派の作曲家ブラームスの「バイオリンソナタ第1~3番」全曲を演奏する。「ブラームスの曲は夫が特に好きで選んだ」と神尾さんは言っていた。彼が得意そうな、叙情とロマンに満ちた音楽なのは言うまでもない。「私たち夫婦は言葉がなくても互いに繊細に感じ合える」とクルティシェフさんは言う。言葉の無い歌だからボブ・ディランのようにノーベル文学賞を受賞することはない。しかし「無言歌」としての伝統のロシアピアニズムは、ロシア文学と並ぶ文化遺産として現代にも魅惑の輝きを放つ。

(映像報道部シニア・エディター 池上輝彦)

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