眠れないあなたへ 味方につけたい2つの生体リズム

日経Gooday

眠れないのはあなたのせいではない。2つの生体リズムを押さえ、睡眠の技術さえ習得すれば、多くの人は眠れる(c)sKatarzyna BiaAasiewicz 123-rf
眠れないのはあなたのせいではない。2つの生体リズムを押さえ、睡眠の技術さえ習得すれば、多くの人は眠れる(c)sKatarzyna BiaAasiewicz 123-rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

「眠りは上達します。そのために必要なのは、技術を身に付けること」と語るのは、企業向けに睡眠のオーダーメイドソリューションを提供するニューロスペースの小林孝徳社長。社員の睡眠の実態を調査したうえで提案する、現場に寄り添った実践的な技術が好評を得て、DeNAや吉野家など数々の企業の社員向けにセミナーを実施。90%以上の参加者から満足度の高いフィードバックがあるという、今注目されている睡眠の伝道師だ。本サイトでも、ハイパフォーマンスな人とそうでない人の睡眠パターンの違いを示した「デキる人の睡眠パターンを身につける3つのコツ」で協力いただいた。そんな小林さんに、良質な睡眠をとるためのコツを聞いた。

「なかなか寝つけない。眠れたところで何度も目が覚めてしまい、寝た気がしなかった」「ぐっすり眠れないせいで仕事に集中できなかった」――。そんな経験を持つ人は多いのではないだろうか。うまく眠れないことを思い悩み、「眠らねば」と焦るあまり、ますます眠れなくなり、日中のパフォーマンスが下がる…という負のスパイラルに陥る人も少なくないだろう。

そんな状況下では、ただ単に「ぐっすりと眠りたい」と願って目を閉じるだけでは、何も変わらない。自己流の眠り方に疑いを持ち、根本的な解決方法を見出すことで初めて改善につながる。ニューロスペースの小林孝徳社長は、「眠りのメカニズムを知り、医学的な知見に基づいた“眠りの技術”さえ身に付ければ、眠りの質は必ず向上させられます」と言う。

「眠れない自分を責めたり、眠そうにしている部下を『やる気がない!』と責めたりするのは、もうやめてください。原因は、眠りの技術を活用できていないだけというケースは意外に多くあります」(小林さん)。

そこで今回は、睡眠の質を左右する2つの生体リズムと、それを生かすためのテクニックを教えていただく。

私たちの睡眠を司る2つの生体リズム

「眠りを充実させるためにまず重要なのは、メラトニンと呼ばれるホルモンと、体温のリズムを味方につけること」と、小林さんは言う。

・味方につけたい生体リズム【1】メラトニン(ホルモン)

睡眠中に分泌される主なホルモンに、メラトニンがある。「メラトニンには、疲労回復のほか、がんの予防や、認知症リスクの軽減の働きがあるといわれます。良質な睡眠のカギは、このメラトニンをしっかりと分泌させることにあるといえるでしょう」(小林さん)。

メラトニンには、暗くなると増え、明るくなると減るという性質がある。そのため、就寝前に暗い環境に身を置けば徐々に分泌が増え、就寝3時間後にピークを迎えて次第に減少する。その後、目が覚めて明るい環境にいるときには、分泌量が抑えられている。

このようなメラトニンの分泌リズムを味方につけ、ぐっすりと眠るための技術。それは、就寝時間に合わせて光をコントロールするというものだ。

「眠る前には、部屋をできるだけ暗くしてメラトニンの分泌を増やしましょう。明るい環境にいたり、パソコンやスマートフォンを見続けたりしていると、メラトニンが減少して眠りの質が落ちます。暗くするのが難しいなら、煌々(こうこう)とした蛍光灯の光を避けて穏やかなオレンジ色の照明にしたり、パソコンを使うときにブルーライトを遮断するメガネをかけたりするだけでも効果的です」(小林さん)。

就寝前には光を避けて、メラトニンを分泌させる。その反対で起床後は、積極的に光を浴びるといい。メラトニンは、朝しっかりと光を感知すれば減少する。すると、分泌リズムにメリハリが生まれて、夜に増えやすくなるのだ。だから、目が覚めた時には窓の近くで光を浴びたり、明かりをつけたりするといいのだという。

また、朝の光を浴びることには、目覚めを良くする効果もある。メラトニンが減ることによって、眠気が覚めてスッキリと起きられるのだ。

【メラトニンを分泌させるコツ】
・寝る前は、できるだけスマホやパソコンを見ない(見る場合はブルーライトをカットするメガネを着用)
・寝る前は、蛍光灯ではなくオレンジ色の電球色の間接照明を活用
・朝起きたら光を浴びる

そしてもう一つ、眠りの質と深く関係するのが深部体温のリズムだ。

・味方につけたい生体リズム【2】深部体温

深部体温とは、脳や内臓といった身体の内側の体温のこと。深部体温には、起床11時間後に最も高くなり、徐々に下降して16時間後から急降下し、22時間後には最も低くなるというリズムがある。

たとえば朝6時に起きた場合、午後5時にピークに達し、その後は低下し続けて、夜10時から急降下して朝4時ごろに最も低くなる、という感じだ。

「深部体温が高いときには心身の働きが活発になり、低いときには深い眠りにつくことができる。こうした体温のリズムと生活リズムをうまく合わせることが、質の高い睡眠を得るコツです」と小林さん。

理想的なのは、深部体温が急降下するタイミングで就寝すること。そのため、眠る直前には深部体温を入浴やストレッチなどで上げてあげると、後に急降下させることができるので眠りの質が上がります。

「寝る直前の食事は、消化のために内臓が活動を始めるので、深部体温が下がりづらく眠りの質が悪くなる原因となります。眠る直前には食べ過ぎないようにすることが大切。また、気温が高い夏であれば、深部体温の下降をサポートするように、エアコンをつけて寝室を涼しくしてから眠るといいでしょう」(小林さん)。

ちなみに、深部体温が関係するのは睡眠だけではない。仕事のパフォーマンスにも関係する。高温時には心身の活動が活発になるため仕事などのパフォーマンスが上がるが、低温時には鈍くなってしまうのだ。

したがって、重要なプレゼンをしたり、スポーツの試合をしたりするのであれば、深部体温が高く心身の働きが活発になっている時間帯が最適だ。だが、そんなに都合よくはいかないのが現実。だからこそ、「ライフスタイルやそのときの状況に合わせて、深部体温をコントロールすればいいんです」と小林さんは言う。

例えば、深部体温が低い起床直後や午前中に会議やプレゼンがある場合は、シャワーを浴びたり温かい飲み物をとったりして深部体温を上昇させれば、パフォーマンスが上がりやすくなる。

また、起床22時間後(朝7時に起きる人の場合は、翌朝5時頃)は最も体温が低く、この時間帯には極力、眠りについているようにしよう。「徹夜せざるを得ない場合は、このタイミングで30分だけでも眠るようにすれば、睡眠不足による心身へのダメージを減らすことができます」。

【深部体温を味方につけるコツ】
・寝る直前に食べすぎないようにする
・起床22時間後には極力、眠りについているようにする

このような体の仕組みを理解し、体のリズムに寄り添って生活をすれば、眠りの質は確実に高まっていくはずだ。

(ライター 西門和美)

この人に聞きました

小林孝徳(こばやしたかのり)さん
ニューロスペース社長。1987年生まれ、栃木県出身。新潟大学理学部物理学科卒業。ITベンチャー企業を経て2013年にニューロスペースを起業。筑波大学や医療機関そして多くの民間企業と連携し、産業現場での睡眠改善と労働生産性の最大化を専門とする。

[日経Gooday 2016年7月21日付記事を再構成]

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