遠藤周作の『沈黙』映画化、M・スコセッシ監督が会見

マーティン・スコセッシ監督(中央)、出演の窪塚洋介(左)と浅野忠信(右)
マーティン・スコセッシ監督(中央)、出演の窪塚洋介(左)と浅野忠信(右)

「タクシードライバー」「ディパーテッド」などの映画で知られる米国のマーティン・スコセッシ監督が、遠藤周作の小説を原作にした「沈黙―サイレンス―」の映画化に取り組んだ。構想28年。完成を間近に控え、出演俳優の窪塚洋介、浅野忠信とともに19日、東京・六本木で来日記者会見を開いた。

映画はキリシタンが弾圧された江戸時代初期の日本を舞台に、ポルトガル人司教と日本人信徒たちの苦悩を通して、人間にとって大切なものとは何かを問う歴史大作だ。原作の「沈黙」は66年に発表された遠藤周作の代表作のひとつ。監督は「カトリックの家庭で育ち、遠藤さんの作品に興味を持ち続けてきた。映画で意識したテーマは文化の違い、文化の衝突。この映画については語りつくせないほど言いたいことがある」と熱く語った。

スコセッシ監督が原作と出合ったのは88年。キリストを主人公にした映画「最後の誘惑」(88年)を撮影していたころ、教会関係者から英語に翻訳された「沈黙」を手渡されたという。読み終えたのは「俳優として出演した黒澤明監督の映画『夢』の撮影でまさに日本に滞在していた時。精神世界を追求するうえでこの本は大事になると感じた」。以来、映画化を切望してきたが、表現方法について悩んでいるうちに映画化を巡る権利問題が生じるなどして、企画は暗礁に乗り上げた。一時は「マネジャーからこの作品に手をつけない方がいいのではないか」とさえ言われた。曲折を経てようやく映画化にこぎつけただけに、感慨はひとしおのようだ。

物語は、ポルトガル人司祭ロドリゴとガルペが、マカオで出会った日本人キチジローの案内で日本に潜入し、恩師フェレイラ教父を探す旅を軸に進む。フェレイラ教父はかつて布教のため日本に渡ったものの、弾圧に屈して棄教したといわれていた。

記者会見するマーティン・スコセッシ監督

「私はたびたび裏社会を映画で描いてきたが、テーマをもっと深掘りしなければならないと感じていた。言葉で表現できない次元に到達しなければならないと。それが『信じることとは何か』というテーマだった」と監督。

ロドリゴの運命を変えるキチジロー役には窪塚洋介を起用した。「特別な役であるキチジローの描写に新鮮な解釈を与えたいと思っていた」。そこへキャスティング・ディレクターから、窪塚がオーディションのためキチジローを演じたビデオを渡された。「力強さだけでなく、心から正直に演じ、心底この役を理解していた。2014年に東京のホテルで窪塚さんに会い、もう一度演じてもらって『この人だ』と思った」という。

通辞(通訳)役には浅野忠信が選ばれた。浅野はもともとキチジロー役のオーディションを受けていたが、過去の出演作品を見て「通辞役はどうかと提案したが、(彼の通辞役は)パーフェクトだった」。

窪塚は「クランクイン初日、監督はきれいなスーツを着ていたが、薄汚れた酒場での撮影で(監督が床に体を投げ出して演出したのを見て)『スーツが汚れちゃう』と思った。その時に情熱の氷山の一角を見た。監督はメラメラした(情熱を持つ)人なんだなと思った」と語る。

浅野は「監督は俳優の(心の)奥にあるものを期待してくれる」。デジタル撮影が一般的な現在の映画界にあって、今回の作品はフィルムで撮影された。そのことについても「若いころフィルム撮影を経験した僕にとってうれしく、フィルムで撮影することが監督の1つの演出にもなっていると感じた」と話した。

司祭ロドリゴ役はアンドリュー・ガーフィールド、教父フェレイラ役はリーアム・ニーソンが演じる。他にアダム・ドライバー、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシほかが出演。映画は来年1月21日から日本で公開される。

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