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営業女子の活躍には社会全体の働き方改革が必須

日経BPヒット総研所長 麓幸子

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NIKKEI STYLE

エンターテインメント、トレンド、健康・美容、消費、女性と働き方をテーマに、ヒット案内人が世相を斬るコラム「ヒットのひみつ」。今回のテーマは、営業職の女性社員。電通新入社員が過労自殺に追い込まれたように、長時間労働などが大きなネックになってこれまでは一向に増えない状態が続いている。しかし、営業職女性が活躍している会社もある。そういった会社から学ぶべきことは多い。

女性活躍推進に関する課題の一つとして職域の拡大がある。企業の女性比率は高くなっているものの、その配属には偏りがある。総務、人事や経理、広報などには多いが、営業部門にはまだ少ない。営業に配属されたとしても、子育てがネックとなる。育休復帰後は、営業には戻らず営業事務などの内勤へと「社内転職」してしまい、営業職の女性がなかなか増えないという構図がある。今回は「営業女子」が活躍するにはどういう条件が必要か考えてみたい。

「営業職女性は増えているが、同じくらい辞めてしまう。バケツに大きな穴が開いた状態だ」

こう指摘するのは、一般社団法人営業部女子課の会代表理事の太田彩子氏。自身もリクルート社の営業職出身。営業職女性の育成をミッションに全国的に活動する。27都道府県に支部を持ち同会の会員は3000人を超える。営業女子が増えないのはハード面、ソフト面、両方に課題があるという。

「ハード面は長時間労働。営業は残業の巣だ。昼間はお客さん回り、夜は会社に戻って事務処理、資料作成が一般的な仕事の仕方。残業ありきで男性を前提にした働き方になっている。ソフト面は、女性の営業は数が少ないので孤立無援になりやすく将来のキャリアが描けないこと。2012年に現役女性営業254人にアンケートをしたときも、その悩みの85%は『キャリアについて相談できる人がいない』ということだった。また、57%が営業と育児を両立できるイメージがわかないと答えている」

「頑張った分だけ評価される」「お客さんに感謝される」「名刺一枚でいろいろな人に会える」と営業の仕事そのものに魅力を感じる女性は多い。営業女子は営業が好きなのだが続けられないというのが大きな課題なのだ。

残業が当然という慣習、長時間労働が美徳という価値観――営業女子が増えないこの構造こそ、電通の新入社員高橋まつりさんの過労自殺を生んでしまった原因ともつながる(同世代の娘がいる身としては人ごととは思えなかった。これについてはまた別稿で書く)。その意味で営業女子の活躍に成功している企業の要因を探ることは、同じ悲劇を繰り返さない一つのヒントになるかもしれないと思う。

営業女子が劇的に変わった6カ月間

次に営業女子の取り組みとして成果を上げているものをみていこう。そのひとつが「新世代エイジョカレッジ」(エイカレ)だ。エイジョとは営業女子の略。2014年、営業職女性の行動変容・意識改革を目的に、サントリーホールディングス(HD)とリクルートホールディングスが中心となり、異業種7社(キリン、KDDI日産自動車、日本IBM、三井住友銀行)で開始した合同プロジェクトだ。「どの会社も営業部門の女性活躍が課題だった。ライフイベント前後に営業現場から離れてしまうケースも多く、営業で経験を積んでマネージャーになるというパイプラインが構築できていなかった」とサントリーHDダイバーシティ推進室長の弥富洋子氏は語る。

この半年間のプロジェクトには、各社から5人程度、合計で約30人が参加、キックオフ合宿を皮切りに、各社混合のグループに分かれて議論を重ねた。最終的には、各社の営業役員が勢ぞろいした成果発表会で営業職女性が活躍するための提言をした。

結果は、「目を見張る効果だった」と弥富氏。「当社からは5人の女性が参加したが、参加前は、『営業はやりたいけれど子どもが生まれたら難しい』という思い込みがあり、全員がもやもやした状態だった。しかし、エイカレを経験することで意識面がガラリと変化した」。プロジェクト終了後の社内報告会の席上で、5人全員が「営業のプロフェッショナルになる」「ママにもなるし営業マネージャーにもなる」という前向きな決意表明したのだ。そしてその言葉どおり、その後、5人中3人が妊娠・出産。復帰後も営業部門で活躍している。

「彼女たちに、子どもを持っても営業を続けるという覚悟と自信ができたということ。他社で活躍している営業女性と切磋琢磨(せっさたくま)し、営業女性役員と出会えたことで刺激を受けたことが大きい。また、提言を受けた経営幹部にも女性たちの本気度が伝わったことで意識が変わったように思う」(弥富氏)

16年でエイカレは3期目。今期から20社と参加社が拡大し、約200人の女性が参加している。今期は「労働生産性アップ」がテーマ。各社でプロジェクトを実施し、その成果を広く発信する予定だ。「女性が営業を続けられないという思い込みは払拭された。次は長時間労働是正のため、労働生産性向上に効果的な施策を明らかにして、より広範囲な営業女性の活躍を推進したい」(弥富氏)

サントリーHDでは、エイカレを含めた様々な施策が奏功し、16年春初めての女性支店長が大分県に誕生。営業マネージャーが2011年以降3倍以上になり、女性営業数も大幅に増え、着実にパイプラインができつつある。

悩み始める5年目女子を対象にメンタリング研修

JTBが11年から導入したのは、入社5年目以降の女性営業職を対象としたメンタリング集合研修だ。「当社では入社5年目くらいから先行きを悩むという傾向が見られた。そこをターゲットとして研修を開始した」(ダイバーシティ推進担当・田中奈津子氏)。女性営業職の先輩をメンターに迎え、自らの体験を話してもらうことで、参加者にロールモデルやキャリアパスを見せる。また社内で数少ない営業職女性が一堂に会することで情報や課題を共有できる仕組みだ。14年からはこの研修受講者を対象とした「3年目のフォロー研修」を新たに実施。社外の営業職経験者の女性エグゼクティブをメンターに迎える。また、前回の研修で作成した5年後の自分像の進捗状況を共有し、必要な行動を確認していく。「メンタリング研修の目的は営業職としての就業継続。それに対しフォロー研修はステップアップに向け、具体的な行動、意識づけを目的としている。女性営業職対象の意識調査で『今の仕事で働き続けたいと思うか』との質問に『思う』と回答した人が、12年と15年の対比で9.5ポイント増え、確実に効果が上がってきている」(田中氏)

長時間労働是正についても、11年から営業職現場を中心に働き方見直しプロジェクトを3年間展開。16年は人事担当者、各社の組織運営職と対象ごとに分けた働き方見直しマニュアルをそれぞれ作り配布、一般社員向けにはイントラネットに掲載した。「また在宅勤務やモバイルワークなどの検討も進めている。女性の職域拡大に働き方改革は必須」と田中氏。

労働生産性を評価する制度で女性の意欲高める

不動産流通業の東急リバブルも14年から女性営業職(売買仲介)対象のメンター制度を導入した。「営業職(売買仲介)女性は全体の3.3%。圧倒的に女性が少ないため成長に至る過程で適切な指導ができにくいという課題があった。そこで入社1年から3年目の女性たちを営業経歴5年以上の女性メンターがサポートするメンター制度を導入した」(人材開発部長兼ダイバーシティ推進課長・野中絵理子氏)。現在3年目。のべ人数ではメンター56人、メンティー146人を数えるまでになった。「効果は高い」と野中氏。同社では「キャリアアップしたい」という女性営業職が87%に上っているが、その一因となっている。

同社で注目したい制度は、「営業職キャリアパスプログラム」だ。これは、育休から復帰後、営業目標の軽減を選択できる期間を従来の1年間から子どもが小学3年生になるまで延長するもの。一見すると育児期の女性社員をケアする制度の拡充かと思うが、その目的は「時間制約のある社員を適正に評価するための制度」と野中氏は言う。

「育児両立をしている営業職の女性は時間内で効率よく成果を上げている。しかしそういう女性は残業できないために予算が達成できず昇進のテーブルに乗せられなかった。能力もあり労働生産性の高い社員たちでも時間の制約があると昇進は難しい。それを改めて予算の8割の営業目標を選択し、なおかつそれを100%達成したら本来の目標達成と同等の評価とすることにした。当社では目標を連続して達成することが昇進の条件だが、この目標軽減期間を子どもが小3までに伸ばすことで昇進のチャンスを失わないようにした」(野中氏)

つまり労働生産性を評価した制度なのだ。画期的なのは対象を女性には限定していないこと。子どものいる男性営業職も使える。「営業女性からこういう制度を待っていたと言われた。自分たちの生産性の高い働き方を正しく評価してもらえるのがうれしいと。女性は評価や昇進を重視しないと思われているが、それは違う。適正な評価は彼女たちのモチベーションを高めることがよくわかった」。現在のべ14人の女性がこの制度を利用している。

クライアント含め、世の中全体で変革を

前述のエイカレの中心的企業で営業出身の女性役員も多い日本IBMは、営業職女性の育成・登用に最も成功している企業の一つだろう。

営業職女性の活躍拡大に欠かせない働き方改革は、89年にフリーアドレス制、97年にモバイルワーク、サテライトオフィス、09年ホームオフィス(終日在宅勤務)制度導入と日本企業をリードする先進ぶりだ。11年の東京本社に続き15年には幕張オフィス(千葉市)内に2番目の企業内保育園も開設。「保育園に子どもを預けるために会社の近くに引っ越すなど当社の女性は積極的。子どもが複数いる部長級の女性営業も珍しいことではない。育児とキャリアの両立は女性社員の活躍支援とは切り離せない問題ではあるけれど、それが女性のキャリアの主な阻害要因だった段階ではなくなっている」と語るダイバーシティ企画部長の梅田恵氏。ではそのIBMで次なる施策は何なのだろうか。

「数年前に日本人役員全員に「役員になった理由/きっかけ」についてヒアリングしたところ、「若い頃にお客様に厳しく鍛えていただいた経験が自分を成長させ、今日、自分が役員になるきっかけを作った」という回答が男女を問わず多かった。そのようなタフな仕事を女性に与える男性管理職、特に男性役員を増やすことが重要ではないかと思う。リスクを取って女性にチャンスや高い目標を与えるようにする取り組みが重要だ」(梅田氏)

「それともう一つ、営業には当然だが、必ずお客様がいる。女性の営業職が活躍するためにはお客様にも変わっていただく必要があるし、世の中全体も変わらないといけない。自社の取り組みだけでなく異業種がタッグを組んで社会にインパクトを与えるようにならないと日本のダイバーシティーは次の段階に進まない。そういう思いがエイカレにもつながっている。また女性営業が握っている売上が上がれば会社の経営にインパクトがある。ダイバーシティーの経済効果も実証してみたい」(梅田氏)

営業女子が増えることで生まれる好影響

さて、冒頭の営業部女子課の会の太田氏は、今年度の内閣府の女性のチャレンジ賞を受賞した。「営業職の女性が子育てしながら仕事を続けられる環境づくりをサポート」したというのが受賞理由だ。その太田氏は「営業女子100万人で輝く社会を!」というスローガンを掲げている。

「総務省の統計によると営業職女性は53万人だが、それを倍にしたい。内勤より給料の高い営業女子が増えれば消費が活性化し経済も活性化する。労働生産性が高い営業女子が増えることで、長時間労働・体力勝負ではない、新たな勝ちパターンが出てくる。顧客にも多様な価値が提供できる。直接利益に貢献できる営業女子を会社に増やすことで会社にも貢献できる。女性も会社も社会もハッピーになると思う」(太田氏)

営業女子を増やすには、女性同士のネットワークやメンタリングなど、孤立無援となりがちな女性を支援する施策が効果的だ。もちろん男性上司によるパワハラ、セクハラなどは論外だ。ただし、女性自身のマインドセットに成功しても長時間労働がそのままでは続けられない。梅田氏がいうように、1社が変わるだけでは限界があり、社会全体で変わらなければいけない。日本社会全体が長時間労働の美徳という価値観、労働慣行から脱すること、生産性高く働く人を評価する制度を導入するなど新たな取り組みが必要なのだ。

麓幸子(ふもと・さちこ)
日経BP社執行役員。筑波大学卒業後、1984年日経BP社入社。2006年日経ウーマン編集長、2012年同発行人。2016年より現職。2014年、法政大学大学院経営学研究科修士課程修了。筑波大学非常勤講師。内閣府調査研究企画委員、林野庁有識者委員、経団連21世紀政策研究所研究委員などを歴任。2児の母。編著書に『女性活躍の教科書』『なぜ、あの会社は女性管理職が順調に増えているのか』(いずれも日経BP社)、『企業力を高める―女性の活躍推進と働き方改革』(共著、経団連出版)、『就活生の親が今、知っておくべきこと』(日本経済新聞出版社)などがある。
日経BPヒット総合研究所

日経BPヒット総合研究所(http://hitsouken.nikkeibp.co.jp)では、雑誌『日経トレンディ』『日経ウーマン』『日経ヘルス』、オンラインメディア『日経トレンディネット』『日経ウーマンオンライン』を持つ日経BP社が、生活情報関連分野の取材執筆活動から得た知見を基に、企業や自治体の事業活動をサポート。コンサルティングや受託調査、セミナーの開催、ウェブや紙媒体の発行などを手掛けている。

女性活躍の教科書

著者 : 麓幸子、日経BPヒット総合研究所
出版 : 日経BP社
価格 : 1,728円 (税込み)

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