正体は誰だ!? 「タイガーマスクW」、衝撃のデビュー
10月10日、東京・両国国技館で開かれた新日本プロレスリングのビッグマッチ。新たなヒーローの誕生に会場に詰め掛けた大勢のファンが騒然となった。その名は「タイガーマスクW」。テレビの人気アニメから飛び出した覆面レスラーは、情報が瞬時に広がって正体を感付かれてしまう現代でも、大人から子どもまで幅広いファンを獲得する可能性を秘めている。
10月からテレビ朝日系列で放送が始まった「タイガーマスクW」(一部地域を除いて毎週土曜深夜2時45分から)。「タイガーマスク」シリーズの放送は1981~82年以来だ。新シリーズではオカダ・カズチカ、棚橋弘至、永田裕志、真壁刀義ら新日本プロレスの現役レスラーが登場するほか、新日本プロレスのテレビ中継「ワールドプロレスリング」の直前に放送されるなど、アニメとリアルの連動を目玉にしている。
どのようなレスラーか、果たして正体は? 大勢のプロレスファンが大会開始前の「第0試合」として設定されたデビュー戦を固唾をのんで見守った。
筆者はプロレスファン歴約40年、初代タイガーマスク(佐山サトル)の大ブームに熱狂し、歴代のタイガーマスクも見てきた。この日は連載「プ女子によるプロレス観戦術」の写真撮影のために訪れたが、一番注目していたのが「タイガーマスクW」で、入場時から夢中でシャッターを切り続けた。
鼻が突き出た立体的なマスクがしっくりこなかったのか、開始直後はぎこちない動きも見られたが、徐々に自分のペースを取り戻す。華麗な空中殺法や幻惑するようなキックを見舞い、最後は2代目(三沢光晴)の必殺技「タイガードライバー」で対戦相手のレッドデスマスクからスリーカウントを奪った。コーナーに上って人さし指を立ててポーズを決めると、見事な宙返りを披露。花道をさっそうと引き揚げていった。
試合中、会場では華麗な動きなどから「あの選手らしい」とささやかれ始めたようだ。インターネットで検索すると、目元など身体的な特徴をもとに正体を推測するファンの書き込みが出てきた。新聞、ネットなどの「プロレスメディア」も実名こそ避けたものの、正体をにおわす書き方で報じたほか、テレビ朝日の「ワールドプロレスリング」では解説者が「(正体は)絞られました」と話していた。
あえて名前を出さないけれど、正体と有力視されるプロレスラーはファンなら誰もが納得する人物ではないだろうか。歴代のタイガーマスクに勝るとも劣らない空中殺法をこなしたうえで、目の肥えたファンをうならせる試合運びのできる選手は、国内外を見渡してもごく少数に限られる。
歴代のタイガーマスクとの違いは、これまでは無名に近い若手選手がマスクをかぶることで人気を手にしたのに対し、「タイガーマスクW」は既にプロレス界で一定の地位と名声を獲得した選手とみられる点だ。インターネットを通じて情報が瞬時に広がる時代に生まれた、新たなタイガーマスクといえるかもしれない。何しろ当の本人が「この動きは自分にしかできないだろ? 自分だとわかるだろ?」と観客の反応を楽しんでさえいるように見えたのだから。
注目されるのは今後の動向だ。新日本プロレスは恒例の東京ドーム大会を2017年1月4日に開く。「タイガーマスクW」も参戦だけが発表され、アニメのストーリー展開に合わせて対戦カードが決まりそうだ。多忙な人気レスラーとみられるので、東京ドーム大会以降も東京や大阪など都市部で開かれるビッグマッチに限定した参戦になるだろう。
人気拡大のポイントはライバルの存在か。初代タイガーマスクが日本中で大ブームを巻き起こしたのは「爆弾小僧」の異名をとるダイナマイト・キッドの存在が大きかった。キッドとの命を削るような激しい闘いはファンの喝さいを浴び、テレビの視聴率は20%を超えた。
アニメ「タイガーマスクW」は、タイガーマスクとタイガー・ザ・ダークという元は同じ団体に所属した2人の若手プロレスラーが虎のマスクを被ってプロレス界を牛耳る組織「虎の穴」に立ち向かうというストーリーだ。誰がタイガー・ザ・ダークに扮するのか? 現在のプロレス界で探すなら、身体能力や体格などから新日本プロレスで活躍するケニー・オメガが最有力候補かもしれない。アニメとは違う展開で、棚橋や内藤哲也、プロレスリングNOAHの丸藤正道らと対戦したり、タッグを組んだりしても面白いだろう。
マスク一つで新たなキャラクターが生まれ、ファンにとって新鮮な対戦カードを提供できるようになる。これもまたプロレスの大きな魅力の一つである。新日本プロレスは新たなファン獲得に向けた最強の「武器」を手にしたかもしれない。
(コンテンツ編集部 苅谷直政)
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