ハロウィーンを狙え! ホラーで稼ぐハリウッド商法
仮装パーティーで盛り上がる日本のハロウィーンだが、ハリウッドの映画業界にとっては、この時期はホラー映画の稼ぎ時。例年、ハロウィーン(10月31日)に合わせて話題作が公開されており、シリーズ化されるほどヒットする作品も多く生まれている。米国のハロウィーンシーズンを彩ってきたホラー映画の系譜を振り返ってみよう。
まずは最新作から。今年、話題になっているハロウィーン公開の映画は2本ある。1つは10月21日に全米公開された『Ouija: Origin of Evil』で、「ウィジャボード」(日本のコックリさんみたいなもの)を題材にした作品の続編。大手映画会社ユニバーサルが全米3000スクリーン規模で公開する大作だ。もう1つは、人気黒人俳優タイラー・ペリー主演のホラーコメディー映画『Boo! A Madea Halloween』(ライオンズゲート配給)で、同じく21日に公開された。28日には『ザ・リング』のリメークの公開が予定されていたが、2017年2月に公開延期となった。
この時期にホラー映画が公開されるのは、ハロウィーンの内容と関係がある。ハロウィーンは古代ケルト人に起源を持つ新年と冬を迎えるお祭りで、夜には死者の霊が家に帰るといわれる。子供たちは魔女やお化けなどに仮装して、近所にお菓子をもらいに行く。日本では「ハロウィーン=仮装」のイメージだが、欧米では「ハロウィーン=お化け」を連想させることから、「ホラー映画を公開する時期としてはピッタリ」とハリウッドで判断されているのだ。
元祖はブギーマンが登場する『ハロウィン』
「ハロウィーン=ホラー映画」の元祖といえそうなのが1978年公開の『ハロウィン』だ。文字通りハロウィーンの夜に殺人事件が起きる内容で、白いゴム製のハロウィーンマスクを被り、ブギーマンと呼ばれる殺人鬼が登場する。同シリーズは8作まで作られるとともに、本作のヒットをきっかけに各社がこの時期にホラー映画に取り組むようになった。
このマーケティング戦略は、実は米国の観客層と密接に関わっている。日本の観客はファミリー層が中心で、少子高齢化もあり10代20代の観客が減っている。逆に米国では10代20代の観客が多い。この層を狙ってホラー映画が毎年作られる。アクション大作と比べると低予算で製作できることから、監督やプロデューサーはアイデア勝負で作りやすいという背景もある。
ハロウィーンに公開された近年のホラー映画を見ると、日本製ホラー映画をハリウッドでリメークした『ザ・リング』(2002年)、『THE JUON/呪怨』(04年)、ホラー映画の名作『悪魔のいけにえ』をリメークした『テキサス・チェーンソー』(03年)があるが、続編は作られたものの、シリーズ化されるほどのヒットにはならなかった。
そんななか、シリーズ化されたのが『バイオハザード』だ。日本の人気ゲームの映画化で、02年3月に1作目が公開されて大ヒット。大量発生したゾンビからのサバイバルを描くホラーアクションとあって、その後はハロウィーン前の9月をシリーズの公開時期とし、04~12年にかけて2~5作目が公開され、いずれもヒットした。なお、最終章となる6作目は17年1月に予定されている(日本公開は16年12月23日)。
2017年は『13日の金曜日』のジェイソンが復活
次に生まれたシリーズが、04年から10年まで7作が作られた『ソウ』だ。1作目は猟奇的連続殺人犯ジグソウが仕掛ける死のゲームの巧みなストーリー展開と、死んでいく人間たちの残酷描写が新しいホラー映画として評判となりヒット。映画会社ライオンズゲートでは監督や脚本家を代えながらシリーズを毎年製作。期間を開けず連続して公開することで、「ハロウィーンに見るべき映画は『ソウ』」のイメージを定着、人気を持続させた。
『ソウ』と入れ替わるように09年に登場したのが『パラノーマル・アクティビティ』だ。同居中のカップルに降りかかる超常現象(パラノーマル・アクティビティ)を固定のビデオカメラで撮影したようなリアリティーで見せる。映画会社パラマウントでは『ソウ』シリーズ同様、監督や脚本家を代えながら、09年から15年まで6作を作った(5作目のみハロウィーン時期以外での公開)。
最近、ハロウィーン公開のホラー映画製作に力を入れているのがユニバーサルだ。14年10月に『ドラキュラZERO』『Ouija』(日本版タイトル『呪い襲い殺す』)、15年に『クリムゾン・ピーク』、そして今年『Ouija: Origin of Evil』。既に来年の新作も発表しており、10月20日公開で『インシディアス4』を予定している。実は来年は10月13日に『13日の金曜日』(パラマウント)、27日に『ソウ』(ライオンズゲート)と過去にシリーズ化された作品の新作が予定されている。来年のハロウィーンは今年以上にホラー映画が盛り上がりそうだ。
ティム・バートン監督作品も定番に
一方、ホラー映画ではないが、ハロウィーンに公開されるケースが多い監督がティム・バートンだ。原案とキャラクター設定を担当したストップモーション・アニメーション『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』が93年10月に公開。ハロウィーン・タウンを舞台に繰り広げられるファンタジーで、主人公の生ける骸骨ジャック・スケリントンをはじめキャラクターや世界観がダークながらもかわいらしさがある。「バートン・ファンタジー」と呼ばれる独特の世界観が観客を魅了。根強い人気があり、3D化されて度々ハロウィーンに再上映されている。同じタイプのストップモーション・アニメーション『ティム・バートンのコープスブライド』(05年)、『フランケンウィニー』(12年)がハロウィーンに合わせて公開され、今年は新作ファンタジー『ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち』が9月30日から全米で公開されている(日本公開は2017年2月3日)。
(ライター 相良智弘)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。