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五輪に向けスポーツ、文化、ビジネスの融合で国づくり 文科省の官民融合の国際会議始まる

2016/10/19

スポーツ・文化・ワールド・フォーラムで演奏する尺八奏者の藤原道山氏と京都市交響楽団弦楽カルテット(19日午前、京都市左京区)

2020年の東京五輪・パラリンピックに向けた国際的な情報発信の第1弾となる国際会議「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」が19日、京都市で始まった。義家弘介・文部科学副大臣や京都府の山田啓二知事らが、文化による国づくりを推進していくことを宣言。19~20日に京都、20~22日に東京で開催する。

義家副大臣は冒頭、「20年に向けてスポーツ、文化、ビジネスの融合を図り、新たな価値を生み出していきたい」と述べた。

講演する京都大学iPS細胞研究所の山中伸弥所長(19日午前、京都市左京区)

基調講演では京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が登壇。山中氏は邦楽、京料理、お茶、花、舞妓(まいこ)など京都の文化を挙げ、「文化に触れることで研究でいっぱいになっている頭に風を吹き込んでくれる。行き詰まっている時も新しいアイデアにつながる」と話した。また「京都の文化が世界中からトップクラスの科学者を呼び寄せ、イノベーション発信の地となっている」と述べた。

フォーラムでは講演に加え、音楽や踊りなど関連イベントも開く。京都会場では有識者や芸術家が文化資源の活用を巡り議論する分科会のほか、二条城でのクラシックコンサートなどが予定されている。

東京会場では国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長らが20日に基調講演するほか、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんらが出演する文化プログラムなども披露される。21日には、東京都の小池百合子知事らが出席し、東京五輪後に残すべきレガシー(遺産)について議論する。(京都支社 渡辺直樹)

政府はスポーツ産業の市場規模を25年までに約3倍の15兆円に増やす目標を掲げる。21日に東京で開かれるスポーツ・文化・ワールド・フォーラムの「官民ワークショップ」では企業経営者や政府関係者らが集まり、スポーツで経済を活性化させる提言や議論を交わす。

明治安田生命保険の根岸秋男社長はワークショップでスポーツによる地域経済活性化の必要性を訴える。同社は全国の支社などがJリーグの全クラブと個別にスポンサー契約を結び、各地で小学生向けのサッカー教室などを開催して地域を盛り上げる支援をする。地元出身のアスリートの試合に地域住民が足を運び、応援グッズの購入などを通じてサポートすることで、地域経済に活力をもたらす考えだ。

根岸社長は「スポーツを通じて地方自治体、企業、地域住民を結びつけ、大きな活性化プロジェクトができるようなコミュニティーを形成させたい」と話す。都市化によって住民同士の結びつきが薄くなった地域社会は、高齢化や過疎化という深刻な問題に直面している。その危機感を背景に、「スポーツとビジネスの融合によって新しいアイデアを生み出す」チャンスとして五輪開催をとらえる。

スポーツをテーマに地域との結びつきを強める(明治安田生命が奈良県で開いた小学生向けサッカー教室)

スマートフォン(スマホ)向けのコンテンツを開発するサイバードの創業者、堀主知ロバート氏はワークショップで、アスリートとスポーツファンが交流できるIT(情報技術)基盤の構築を提起する。すでに新会社を設立し、有能なアスリートをファンが資金面でサポートするためのサイトを準備中。市民がアスリートを応援できる場をネット空間に設け、企業もサポートに参画できるようにする体制の構築を目指す。

19年のラグビー・ワールドカップ、20年東京五輪・パラリンピック、21年ワールドマスターズゲームズと日本では国際的なスポーツイベントが相次ぎ、企業はスポーツに熱い視線を注ぐ。そこには新しいビジネスの芽も育つ可能性がある。

フォーラムを主催する文科省もスポーツ行政をめぐって官民連携を模索しながら「ビジネス」を意識した政策を打ち出し始めている。松野博一文科相は「ビジネスとスポーツを結びつけることは成長戦略の一環。今回のフォーラムが経済面のインパクトを与えられるようにしたい」と強調する。

文科省の外局としてスポーツ庁が発足して1年。「経済の活性化を打ち出したことが一番大きな変化」(高橋道和スポーツ庁次長)で、政府の「日本再興戦略2016」には、「官民戦略プロジェクト10」の一つとしてスポーツの成長産業化も盛り込まれた。

このプロジェクトは赤字体質になっている地方自治体のスポーツ施設に民間企業のノウハウを導入して収益力を高める「スタジアム・アリーナ改革」などが柱だ。スポーツ施設の収益力強化に向けた指針も策定。企業の施設運営ノウハウを生かしやすいコンセッション(運営権売却)方式の導入なども検討する。

スポーツ産業を「15兆円ビジネス」に育てるという壮大な目標に向けて、官民の取り組みは始まったばかり。ただ、国内IT市場に匹敵する規模への成長が実現すれば雇用創出の効果も期待できる。重厚長大産業の斜陽化の一方で新しい成長産業にできるかどうかが期待される。スポーツ庁はこのための具体策を盛り込んだスポーツ産業ビジョンを今年度中にまとめ、17年度から5カ年の新しいスポーツ基本計画に反映させる方針だ。

(山根昭)

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