東京マラソン IBM「ワトソン」がSNSや映像分析

ITの活用で安心・安全な大会運営をめざす(写真は2014年の大会)
ITの活用で安心・安全な大会運営をめざす(写真は2014年の大会)

日本IBMは2017年2月に開催される東京マラソンで認知型コンピューターの「ワトソン」など高度なIT(情報技術)を活用した大会運営の実証実験をする。東京マラソン財団とオフィシャルパートナー契約を締結、SNS(交流サイト)への投稿や監視カメラの映像を分析して安全・安心な大会運営に向け協力する。日本IBMの松永達也常務と東京マラソン財団の早野忠昭・事業担当局長に今後の取り組みについて聞いた。

――締結の狙いはなんですか。

松永氏「すでに東京マラソンの公式会員組織の管理システムを提供している。東京マラソンは3万人超の走者とボランティア、観覧者も含めた大規模なイベントだ。過去のデータも大量にたまっているが、活用できていない。運営効率化にIBMの技術が貢献できると考えた」

日本IBMの松永氏(右)と東京マラソン財団の早野氏

早野氏「現在オフィシャルパートナーは30社弱だ。スポーツ用品・飲料・食品メーカーなど多岐にわたる。今まではパートナーが個別に備品を提供するのが中心で縦割りの色が強かった。10月18日にパートナー企業があつまる会合があり、2月に向けて準備が本格化する。IBMにはITを通じて各業界と連携し、横のつながりをつくる役割を期待している」

――どんな実験を考えていますか。

松永氏「群衆が集中する所は危険性が高い。例えば、当日は沿道で応援する人たちが大量に短文投稿サイト『ツイッター』でつぶやく傾向がある。つぶやきや警備員の音声をリアルタイムで分析して危険を予知し、警備や救護を向かわせる。過去の大会の天気や課題など蓄積されたデータも活用できる。大量のデータから間違った情報を除外し、音声や画像を分析するのは『ワトソン』の得意分野だ」

早野氏「今回からマラソンのコースが変わるため、見えないところで潜在的な危険がある。リアルタイムで『地下鉄のA出口が混雑している』と運営側が把握できれば、パートナーである東京メトロの職員が誘導しにいく。飲料メーカーと協力して、ITで監視すれば給水地点の水の補充も効率的にできる。構想段階だが今後の話し合いで実験につなげたい」

――運営の他にITを活用できるところはありますか。

松永氏「安心・安全以外に大会開始前の準備やトレーニングといった健康増進の分野でも活用する。スポーツメーカーと連携して適切な運動量や食事量を通知するアプリなどを考えている。45万人いる公式会員のデータが活用できる」

早野氏「来年の東京マラソンだけで実証実験を終わらせたくない。東京五輪・パラリンピックにむけて東京を健康都市にするのが目標だ。今回のパートナー契約はその第一歩だ」

(聞き手は薬文江)

[日経産業新聞2016年10月18日付]