職場・パラリンピック支援両立 母の視線でバランスそごう・西武の高橋延代さん 一つの関心事に偏らない生活

東京五輪・パラリンピックを見据えたボランティア団体のパラスポーツ応援イベントに参加(16年9月)
東京五輪・パラリンピックを見据えたボランティア団体のパラスポーツ応援イベントに参加(16年9月)

そごう千葉店(千葉市)の販売促進部で経費処理を担当する高橋延代(たかはし・のぶよ、55)さんは4つのボランティアを掛け持ちしながら、そごう・西武の植樹ボランティアにも参加する。子育てを終えたいま、働き方は自由だが、職場でも存在感を発揮している。社会貢献、仕事、家事と、一つの関心事に偏らない時間配分を組み立てている。

働き方 不人気な経費処理 円滑に
百貨店の仕事とボランティア活動を両立させている高橋延代さん(千葉市中央区のそごう千葉店)

高橋さんは店内で開かれるイベントの経費を精算する仕事をしている。物産展やジャズライブ、ワークショップなど多岐にわたる催事の費用を確認しながら、販売員や出演者の交通費、宿泊費などをまとめる。こうした経費処理を面倒がる社員は多い。「そういう社員にどうしてこの請求書が必要なのかと伝えることも仕事です。一緒に頑張ろうという気持ち」と高橋さんは話す。

社員や契約社員、協力会社など約30人が集まる部署は毎日、まるで文化祭のように活気にあふれている。その中で一番の古株となった高橋さんは頼られる存在だ。子育てと仕事の両立に悩む社員は、長男(30)と次男(28)を育てた高橋さんの体験談に勇気づけられる。高橋さんとの交流をきっかけにボランティア活動に興味をもつ人も。「様々な立場の人がいるからこそ、元気なあいさつなど当たり前のことを大切にしなくてはいけない。長年チームにいるので、母親のような気持ちで見守っている」(高橋さん)

子どもを出産するまでは食品スーパーの本部で伝票精算の仕事をしていた。そごう・西武で働くようになって、社員登用の話もあったが契約社員の立場を貫いた。「仕事だけとかボランティアだけというのは自分に合っていないと思う」と高橋さん。職場で存在感を発揮し活性剤となりながら、社会貢献活動と重心を案配する。「自分が楽しいんだと思える働き方は今のままが一番よい」という。

社会貢献 オリパラや防災、関心高める

高橋さんは4つのボランティアに参加している。いま力を入れているのは東京五輪・パラリンピックに向けてアスリートや観戦者を支援することだ。当面は準備段階で、毎月1回、イベントに参加し五輪への興味を持ってもらう活動に主眼を置く。「ボランティアは自己満足と思われがちだけれど、(支援対象と)ウィン=ウィンの関係になれる。自分が動くことで周りが興味を持ってくれたらうれしい」と高橋さんは話す。

高橋さんのボランティアは年季が入っている。中でも地域の防災や再開発について話し合いの場を設ける活動が特に長い。学校や企業など様々な立場の人が参加する懇談会を成果あるものにするため、事前に資料をととのえる。帰宅後の作業は深夜に及ぶこともしばしばだ。

町内会の広報誌作りも10年間続けている。2300世帯と規模の大きい町内で広報誌は大切な情報共有ツールだ。「地域の防災訓練や催しは小さなことかもしれないが、間違った情報を載せれば迷惑がかかるので気が抜けない。でも多くの人と関わることができるのは楽しい」という。

電話で悩みを聞くボランティアは週に1回程度、2~3時間を割く。人間関係や健康に不安を抱え、話すうちに怒り出す人や泣き出す人もいるが、聞き役に徹する。顔が見えない難しさもあり、7年目になる今も月に一度、勉強会で鍛錬している。「人の話を聞くことは仕事にも役立つ」と高橋さんは実感している。

会社の支援 植樹を推進、休暇に協力的

そごう・西武にはボランティア休暇といった支援制度はないが、全国で植樹するプロジェクトなどの社会貢献に会社として取り組んでいる。関連イベントには高橋さんら約20人が毎回参加している。2016年3月から8月にかけて、東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県宮古市に広葉樹を800本植えた。「職場で休みを取りやすいように融通してくれるなど、ボランティアへの参加に協力的な雰囲気がある」と高橋さんは感じている。

(井上みなみ)

[日経産業新聞2016年10月18日付]

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