一瞬でセレブになれるお薦めの「女ホテル」

細部まで考え抜かれた導線

先にもふれましたが、女性はとくに、思い出や出来事を点でなく“線”で考えやすい。スパやエステ、あるいはプールに向かう途中、ホテル館内を巡る過程で、「いかにも」の日常を感じさせる事象――たとえば、疲れきったビジネスマンや庶民的な家族連れ、耳障りなノイズ、焼き鳥の匂いなど――に接すれば、せっかくシンデレラ気分で乗っていた黄金の馬車も、一気に“かぼちゃ”へと逆戻りしてしまいます。

だからこそ、施設内での導線が重要です。お部屋からプール、ジャグジー、そしてスパやエステに行き来する道のりも、事前のショールーム等でチェックしてみてください。

好例は、たとえばザ・ペニンシュラ東京の「ザ・ペニンシュラ スパ」。総面積900平方メートルを誇り、受付が館内の6階に位置します。そこから専用階段で、5階の広々とした屋内プールやジャグジーにも下りられる流れ。途中の通路にも、静かに流れ落ちる水の壁があったり、ヒーリング系の音楽が流れていたりと、細部まで考え抜いた造りで、日常に引き戻されることはまずありません。

プールから都心の緑をのぞめる(写真提供:ザ・ペニンシュラ東京)

また、プールも皇居外苑と日比谷公園に面し、窓の外には豊かな緑が望めます。とくにプール内のジャグジーに沈むように浸かると、目の位置を緑が彩る高さです。宿泊のお部屋自体、コンテンポラリーな中にも和のテイストを取り入れた極上の造り。バスルームも石灰岩の風合いが美しく、ゆったりとバスタイムを愉しめます。

その分、宿泊も値は張りますが、ドアを開けることなく靴磨きやクリーニングを頼める「バレー・ボックス(部屋の内外につながるボックス)」をはじめ、使い心地を考え抜いたデザインには目を見張るでしょう。一度、「客室 → プール → ジャグジー → スパ → 客室」の贅沢な道筋を体感されると、計算し尽くされた導線に、きっと感動を覚えるはずです。

他方、インターコンチネンタルホテル大阪の「オールザットスパ オオサカ」も、やはり導線の妙に心揺さぶられる空間。プールやフィットネスのインフォメーションが同じ4階に一元化され、スパの個室ではフェイシャルやボディトリートメント、さらにヘッドスパも受けられる。男性からも「時間を忘れて癒された」と評判の高い施設です。

ちなみに、インターコン大阪や、先のホテル椿山荘東京、あるいは箱根のハイアット リージェンシー箱根 リゾート&スパは、スパ空間に、あるいはそれとは別に、高級旅館を彷彿とさせる浴場やサウナも完備。施術前から血行が良くなり、「癒しスイッチ」も入り、より心が開放され、大人の安らぎを長く持続できる造りです。

高級旅館を彷彿とさせるスパ空間が魅力(写真提供:ハイアット リージェンシー箱根 リゾート&スパ)

年に1度、インターコン大阪に宿泊するビジネスマンのGさんは、「(同ホテルで)ヘッドスパや浴場を利用すると、自分の体の中で、至極感覚的な“何か”が、泉のように湧いてくるのが分かる」とおっしゃいます。

確かに現代人は、ふだんのビジネスや家事を、損得や効率で考えやすい。「論理的思考(左脳)」が勝っています。ですが、極上のホテル空間で心身ともに癒され、非日常に心が動くと、五感や感性を司る「感覚的思考(右脳)」が呼び起こされる……。その意味でも、環境や導線に優れたホテルのスパは、感性豊かな「大人磨き」に絶好なのです。

牛窪恵(うしくぼ・めぐみ) マーケティングライター、インフィニティ代表取締役。世代・トレンド評論家。「おひとりさま(マーケット)」「草食系」は、新語・流行語大賞に最終ノミネート。

[日経プレミアシリーズ「大人を磨くホテル術」(日本経済新聞出版社)から抜粋]

大人を磨くホテル術 (日経プレミアシリーズ)

著者 : 高野 登, 牛窪 恵
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 918円 (税込み)


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