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不妊治療に公的助成 国は縮小、自治体上乗せも 不妊治療サポート(下)

2016/10/25

 自治体などが実施している不妊治療への助成に年齢や回数の制限が設けられたと聞きました。これから不妊治療を始めることを検討していますが、費用面が気になっています。

 排卵日のタイミングを計る方法などで自然妊娠しない場合の不妊治療には、いくつかのステップがある。まず精液を子宮に入れる「人工授精」。それが難しければ、体外で受精させた胚を子宮に戻す「体外受精」、精子をガラス針で卵子に入れる「顕微授精」などの方法がある。

 こうした人工的な方法はいずれも公的医療保険が適用されない自由診療のため、全額が自己負担になる。ただし、体外受精、顕微授精は1回で少なくとも30万~50万円かかるため、国はこれらを「特定不妊治療」と位置づけ、夫婦合算の所得が730万円未満であれば治療するごとに助成金を出している。助成件数は2014年度で15万2320件に達している。

 不妊治療は一般的に、年齢を重ねると成功率が下がるため、今年4月までに妻の年齢や治療回数に制限が設けられた。妻が39歳までに治療開始した場合、42歳までに通算6回、助成を受けられる。一方、40歳を迎えてから治療開始すると助成回数は42歳までに通算3回。43歳以上の治療への助成はなくなった。

 顕微授精の経験があるファイナンシャルプランナーの塚原哲氏は「特定不妊治療に進むまでのプロセスを考えると、妻が38歳までに病院で検査したほうがいい」と勧める。

 例えば妻が38歳であれば、最初から夫婦そろって検査するのが基本だという。「不妊の原因が男性にあった場合、すぐに顕微授精などに進めるため、無駄に時間とお金を費やすことがない」(塚原氏)からだ。

 国からの助成金は1回目の治療が30万円、2回目以降は15万円だが、事業主体である自治体が独自に上乗せしている例が多い。東京都は2回目以降の助成金を最大10万円上乗せしている。少数だが、富山県、浜松市など所得制限を撤廃している自治体もある。

 所得制限で助成金を受けられない夫婦も、治療費用が年間10万円を超えると医療費控除の対象になり、確定申告すれば税金が戻ってくることを知っておきたい。不妊治療に年間数百万円を費やしている夫婦もいるため、医療費控除のメリットはかなり大きい。

 共働き夫婦はどちらが申告したほうが有利か、よく確認したい。夫の年収が妻よりも多い場合、夫のほうが税率が高いので税金が多く戻ってくると考えがちだが、そうとは限らない。夫に扶養控除や住宅ローン減税などがあると、収入の少ない妻が申告するほうが有利になる場合もある。

 特定不妊治療は費用だけでなく、体力的な負担も重くなる。治療のタイミングが成否を左右する面があるだけに「十分な治療ができる働き方を実現することも重要」(塚原氏)。最近では、ワークライフバランス向上の意識の高い企業で不妊治療の休暇制度を設ける例が出てきた。

[日本経済新聞朝刊2016年10月19日付]

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