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地ビールに蚤の市… NYブルックリン最新案内(上)

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NIKKEI STYLE

摩天楼と喧噪(けんそう)のニューヨーク・マンハッタンから地下鉄で数駅の場所にある「ブルックリン(Brooklyn)区」を訪れる旅行者が増えている。高層ビルが少なく、スーツ姿もあまり見かけない。目につくのは自転車に乗る生活者や、カフェでくつろぐ地元住民。ゆるやかに時間が流れるこの地区が米国で最もヒップでおしゃれな街と呼ばれるようになった理由を、ニューヨーク在住のコラムニスト、黒部エリさんに聞いた。

◆       ◆       ◆

さまざまな移民や、古さと新しさが混在

アイルランドからブルックリンに移住してきた女性(主演シアーシャ・ローナン)を主人公にした映画「ブルックリン」(2015年)で描かれたように、ブルックリンは移民たちが育てた街です。ユダヤ系、イタリア系、ポーランド系、ロシア系、アイルランド系といった、ヨーロッパからの移民がブルックリンでそれぞれ特定のエリアに住みつき、独自の文化圏を生み出しました。南米やカリブ海の島々からの移民も多く、ブルックリン全体で独特のダイバーシティー(多様性)文化を醸し出しています。

ブルックリンは映画監督のスパイク・リー氏が「ドゥ・ザ・ライト・シング」(1989年)や「クルックリン」(94年)で描いたように、ヒップ感があるエリアで、音楽面でもヒップホップやラップの本場。夏になれば、そこかしこで地域のお祝い的イベントの「ブロックパーティー」が開かれて、バーベキューがふるまわれ、音楽が街角にあふれます。

古くからの住宅街には「ブラウンストーン」と呼ばれる、れんが色をした2、3階建ての懐かしげなたたずまいの住宅が並びます。一方、以前は工業エリアだったり、湾岸エリアだったりした地域が再開発されていて、話題のお出かけスポットになっています。こういった新旧の混在がブルックリンらしさを印象づけます。

押さえておきたいおすすめスポット

初めての観光で出かけるなら、まず足を運びたいのは、アーティストが住み暮らす街として知られ、一番ホットな地区でもあるウィリアムズバーグ。地下鉄のL線でマンハッタンからわずか1駅というアクセスのよさ。毎週のように新しいお店がオープンしているほど変化の多いエリアです。おしゃれなショップやレストランがいっぱいあって、一度では回りきれません。

ぜひ訪れたいのは、春から晩秋まで毎週末に行われる「ブルックリン・フリー」という蚤(のみ)の市と、「スモーガスバーグ」という屋台フードのイベントです。大規模な蚤の市に限らず、ブルックリンではビンテージ店がたくさんあって宝探し気分が味わえます。スモーガスバーグにはいわゆるB級グルメの屋台フードが集結。新たなブームとなる食べ物がここから生まれていて、「ラーメンバーガー」や「水信玄もち」などのヒット商品も出ました。どの屋台も7~8ドルほどの軽食なので気軽にトライしやすいはずです。

日本でも小規模生産のクラフトビールが盛り上がってきたようですが、ブルックリンはその先輩格。人気の地ビール醸造所「ブルックリン・ブリュワリー」では工場見学と試飲ができるツアーもあるので、ビール好きは試してみたいところでしょう。ウィリアムズバーグにはワイン醸造所の「ブルックリン・ワイナリー」もあります。都会の街中につくられたいわゆる「アーバンワイナリー」で、ワインバーも併設されています。

日本からの観光ではマンハッタンに泊まる人が多いでしょうが、実はブルックリンはホテル好きの間でも関心を集めています。火つけ役になったのは、ウィリアムズバーグに2012年に開業した「ワイス・ホテル」。稼働から100年以上もたつ縫製工場をリノベーションしたホテルです。昔ながらの風情と、モダンなデザインが同居しているところが好まれています。ピカピカの新築ビルではない点がいかにもこの街らしい。夕暮れ時にルーフトップバーで過ごすのもおすすめです。「ブルックリン・ブリュワリー」のすぐ隣には2016年にスタイリッシュな外観の「ザ・ウィリアム・ヴェイル」が開業しました。ブルックリンでは新オープンのホテルも割と小ぶりの建物で、街並みと調和するように配慮されています。

食、文化、アート……尽きない魅力

住民の構成を映すかのように、ブルックリンでは様々な料理が味わえます。老舗のピザ店「グリマルディーズ」は行列が絶えない人気を誇ります。本格的にお腹が空いたら、ステーキハウスの「ピーター・ルーガー」へ。ここの熟成肉は「世界一」とも呼ばれる味わい深さで、肉好き垂ぜんの的です。

古き良きブルックリンを体験するなら、パーク・スロープへ。広大なプロスペクト・パークに隣接するパーク・スロープは、古くから住宅街としての歴史を持ち、ブラウンストーンの街並みが美しいところです。映画「スモーク」でも知られる作家のポール・オースター氏をはじめとして文化人が多い街としても知られ、文化の薫りがするエリア。イタリア料理の「アル・ディ・ラ・トラットリア」や米国料理の「ストーン・パーク・カフェ」は味にうるさい住人たちからもお墨付きのレストランです。

近くには現代美術家の村上隆展を開催したこともあるブルックリン美術館、そしてBAM(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック)もあります。このBAMは音楽、ダンス、芝居などの演目がすばらしく、世界の一流アーティストたちが野心的で、斬新な公演をするので名高いところ。旅行期間中に公演があったら、足を運んでみることをおすすめします。

黒部エリ(くろべ・えり) コラムニスト。東京都出身。雑誌ライターとして「アッシー」などの言葉をはやらせ、講談社X文庫から「青山えりか」名義でジュニア小説を三十数冊出版。1994年からニューヨーク在住。NYの最新トレンドやウェルネス、ビューティ情報を雑誌を中心とする各メディアで発信している。
・ブログ「黒部エリぞうのNY通信」http://erizo.exblog.jp/

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