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『キンキーブーツ』 社会的少数者の純な心が爆発

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NIKKEI STYLE

女装した大男たちが舞台狭しと踊りまくる。「ううっ、こんなの初めて」。ミュージカル大好き、元気なMちゃんがうめいた。「最初はちょっとヘンと思ったの。でも、不思議とだんだんキレイに見えてきた。最後の方は気高いとさえ思えた。これって、すごくない?」

頭のかたい、すれっからしのシアターゴーアーは、Mちゃんの正直な見方にうなずかされた。この「キンキーブーツ」という名の来日ミュージカル、歌と踊りの力だけで、女装する男、つまりは社会的マイノリティーの純な心を爆発させている。3年前に米ブロードウィーで開幕、トニー賞を6部門で受賞しただけのことはある。何といっても「トゥルー・カラーズ」で知られるアメリカン・ポップスのクイーン、シンディ・ローパーの音楽(トニー賞最優秀楽曲賞)が絶妙のフィーリングなのだ。

「でも話は単純ね」とMちゃん。確かに。ダメ・チームが一念発起、盛り返すという、いかにもアメリカ人好みの筋立て。倒産寸前に追い込まれた田舎の靴工場が、起死回生の妙手「女装する男のための靴」(キンキーブーツ)というニッチな市場に挑む。男が女に変身する美しいドラァグクイーン、ローラをデザイナーに迎えて、若き経営者が公私にわたる苦難を乗り越えていく……。

お決まりの展開ではある。が、逆に驚かされるのは、そのお決まりをめくるめくショーに仕立てるミュージカルづくりのセンスだ。歌って踊れる役者陣のパワーも並ではない。先だって上演された日本人キャストの翻訳版(小池徹平、三浦春馬ら)も相当の成果ではあった。が、しなやかでキレのある黒人俳優J・ハリソン・ジーのローラを見てしまうと「あっ、かなわないな」(Mちゃん)と思わせられる。東京ディスニー・リゾートのショーにも出ていたとか。苦労を重ねた末、大役を射止めた。

Mちゃんが「体つきも雰囲気も声もぴったりの役者ばかり」とみるとおり、ツアー公演とはいえ適役ぞろい。バラエティーに富み、しかも柄に合わない俳優がひとりもいない。このあたりに日米ショービジネスの差が出てしまう。

抜群なのは、ベルトコンベヤーに乗ってドラァグクイーンたちが現れる場面。ベルトの上で行きつ戻りつ、パイプを鉄棒代わりに使って回転し、工員たちと入り乱れる。だんだん群舞になっていく面白さはブロードウェー・ミュージカルの真骨頂だろう。すれっからしのシアターゴーアーも思わず手をたたいていた。意見の違いをボクシングで決着させるメチャクチャな展開も納得のにぎやかさ。サッカーではないけれど、日米の差は個々のフィジカルの強さ、決定力にあると言えそうだ。

Mチャンが「シンディはシアター・ミュージックを一から学んだそうね」と話を持ちかけてきた。そうなのか、と調べてみた。

舞台のもとは2005年の英米合作映画「キンキーブーツ」。まずプロデューサーがスピーディーな振り付けで売れっ子になったジェリー・ミッチェル(演出も)に話をもちかけた。ミッチェルはドラァグクイーンとしても知られる劇作家ハーヴェイ・ファイアスタインを脚本家に指名。日本でも自伝的作品「トーチソング・トリロジー」が知られる、ゲイ・カルチャーの先導者だ。ファイアスタイン周辺がマイノリティーの文化に理解を示すシンディに話をつないだという。ミッチェル、ファイアスタインの妥協のない仕事ぶりに触発され、ミュージカル初挑戦のシンディも舞台音楽の技巧を懸命に摂取したとされる。

「才能が才能を呼ぶ。いい加減なところで手を打たない。ショービジネスに必要なのは、これよね」とMちゃん。そうだね、と相づちを打ちつつ、サビのきいたソウルフルな曲を思い返した。たとえばローラの「ホールド・ミー・イン・ユア・ハート」。偏見に傷つきながら、人間の尊厳を追求するピュアな心が切々と伝わるではないか。

風俗的な珍しさから始まった舞台であっても、音楽の決定力がドラマを一気に高みへ引き上げる。「人間は皆人間らしく生きる権利がある。そんな祈りが感じられなかったかい?」。勢い込んでMちゃんに問いかけたら「あんまり重く受け止めない方がいいんじゃない」との返事。

みればMちゃん、帰り道でテーマ曲を口ずさんでいる。こちらも思わずハミング。「やっぱり、いいミュージカルを見終わったら歌わなくちゃね」。最後は言葉の二重唱になった。

Bunkamuraの企画・招へい。10月30日まで、東京・東急シアターオーブ。11月2~6日、大阪・オリックス劇場。

(編集委員 内田洋一)

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