家計

もうかる家計のつくり方

早期リタイアの夢と現実 まずは家計の赤字解消を 家計再生コンサルタント 横山光昭

2016/10/19

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 「50代になったら早めにリタイアしたいと思っています」と明るく話すUさんは現在35歳。独身の男性で、システムエンジニアです。Uさんが家計相談に来た目的は、早期リタイアを目標としたライフプランの相談と、貯蓄・運用などの基本的な考え方を身につけるためです。

 現在の貯蓄額は730万円。基本的にはためられる人だという印象です。「いつも節約を意識して1年間で100万円くらいためていると思う」「先生がよく言う“支出の把握”はアプリで記録をつけているから大丈夫」と自信満々な様子です。ですが、クレジットカードの利用代金を払ったら残していたはずのお金がなくなっていて驚くこともあるというので、本当に支出をきっちり把握しているのかどうかは怪しいと思いました。

 お話を伺いながら家計表をまとめると、貯蓄額に反して、意外にも収支は赤字でした。よく聞いてみると、730万円の大半は長期間にわたって親から少しずつもらったお金とのこと。

 一応、支出を抑える努力はしていて、格安スマートフォンを利用したり、生命保険も保険料が安い共済を契約したりしています。食費や水道光熱費、日用代品なども比較的よく節約できているようです。

 ただ、被服費と娯楽費の支出が多く、これらはUさんにとっては譲れない支出のようでした。被服費については洋服はもちろん、靴やカバンが好きで、好みのものを見つけると衝動買いしたり、クリーニングを頻繁に利用したりしています。娯楽費の内訳は書籍や、趣味である風景写真を撮るために、撮影場所に出向く費用です。そして気軽にクレジットカードを利用するので、支出が分からなくなってしまうようでした。

 支出の仕方にはメリハリがあり、Uさんなりの「お金をかけたい支出」と「お金をかけたくない支出」のすみ分けはできているようです。現状は赤字ですが、把握しきれていない支出をしっかり把握すれば改善が見込めそうです。

 お金をかけたい被服費・娯楽費は毎月7万3000円に達しています。加えてボーナスからも少しこれらの支出に回しているそうなので、年間にすると100万円近く使っている計算になりました。計算してみるとUさんも「使いすぎだ」と実感できたようです。

 毎月の支出については食費や水道光熱費など、生活必需品を購入するだけにし、そのほかの支出はボーナスから支払うようにしました。そうすれば、毎月の赤字が解消できます。予算はボーナスごとに被服費、娯楽費で10万円ほど、プラスαの自由資金として10万円ほどの計20万円に設定しました。

 買える洋服や写真撮影のための旅行の回数は減りますが、その分「計画する」楽しみができました。これに合わせて交通費も減りました。

 少し気になったのが生命保険です。保険料の安い共済に加入していますが、60歳になると保障が小さくなることに気づいていないようでした。そのため、毎月の保険料は少し上がりますが、保険料と保障内容がずっと変わらない医療保険に加入し直しました。

 お金の使い方を変えるという計画を立てたことが影響し、食費、日用品代も少し下がりました。

 月の削減額は合計で7万7000円。収支で見ると6万4000円の黒字です。ボーナスの役割を「生活費の補填、被服・娯楽費の一部、プラスα」という内容から、「被服・娯楽費、プラスα」と整えたため、年間の総支払額が減りました。

 特に被服・娯楽費は今までの年間総額100万円から30万8000円まで落とすことができました。年間の黒字額が76万8000円、ボーナスの残りが年間60万円なので、合計すると1年間で136万8000円を貯蓄できる見込みです。

 これを基に試算すると、50歳になるまでの15年間で、2052万円たまります。現在の貯蓄730万円と合わせると2782万円。3000万円弱という金額は、60歳時点で老後資金として用意しておきたい金額です。つまり、早期リタイアは難しそうだという結論になりました。

 「やはり、しっかり働いたほうがよさそうですね」と苦笑いしながらも、老後資金をつくるために上場投資信託(ETF)など比較的リスクの小さい投資商品を購入したり、個人型確定拠出年金(DC)を始めて運用したりすることにしました。もちろん、投資経験はまだほとんどないので、しっかり勉強してからの話です。

 最近はアプリで支出管理をしている人が増えています。しかし、有効利用しないまま記録しただけで満足してしまうと、支出全体の流れが分かりにくくなります。支出を管理したい、貯蓄を管理したい、増やしたいと思うなら、きちんと月ごとの収支を見ることが大切です。そのうえで、予算を立てるのも効果的です。

 そして、もしアプリやパソコンソフトではうまくいかないなと感じたら、ぜひ一度、アナログに戻ってみてください。2、3カ月の暫定的な期間でも構いません。手書きで家計簿をつけることによって、きちんと支出が把握できたというケースも結構あるのです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は11月2日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,512円 (税込み)


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