1日に野菜350g、果物200gが目安
厚生労働省、農林水産省が作成した『食事バランスガイド』は、健康のために何をどれだけ食べればよいかを示したもの。これによれば、1日に野菜は350g、果物は200g摂取することが目安となっている。野菜は意識してとっている人が多いだろうが、果物はどうだろうか?
ちなみに、果物200gはみかんなら2個、りんごなら1個くらいの量だ。
野菜は「不足している」とよくいわれるが、充足率からみると、実は、果物のほうが低い。特に、40代までの若い世代で圧倒的に不足している。
果物には抗酸化成分が豊富に含まれる
そもそも、果物を食べるメリットとは何か。
「果物にはビタミン、ミネラル、食物繊維、フィトケミカルが含まれています。これらは体の調子を整えたり、疾病予防に役立ちます」(女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏)
果物=ビタミンCというイメージがあるが、それだけではない。種類によって、カロテン、ビタミンB群、ビタミンE、カリウム、カルシウム、鉄などを含むため、野菜と同様の役割が期待できる。
フィトケミカルとは野菜や果物の色素や辛み、香りの成分だ。強い抗酸化作用を持ち、体内で発生した活性酸素を取り除くといわれる。さらに、免疫力を高め、病気を予防する働きもあるとのことで、研究が進められている。以下は、主なフィトケミカルの色による分類と効果・効能だ。
「果物にも野菜にも、ビタミンC、E、A(植物にはカロテノイドとして含まれる)などの抗酸化成分が含まれますが、果物は野菜よりもカラフルなものが多いため、さまざまな抗酸化成分を取り入れやすい食品と言えます」(上西氏)
現代人はストレスなどにより、体内で活性酸素が発生しやすいといわれる。活性酸素から身を守るためは、抗酸化成分をたっぷりとったほうがいい。果物は調理せずに食べられるため、野菜よりも手軽に取り入れられるといった良さもある。
果物を食べると太るはウソ?
果物は体にいいのはわかったが、「太るのでは?」と心配している人も多いだろう。
果物に含まれる果糖、ブドウ糖、ショ糖などは、糖の結合数が少ないため、デンプンなどに比べると体内に吸収されやすい。これが「果物を食べると太る」説の根拠の一つだが、「糖尿病や脂肪肝などで糖質を制限されている人は別として、健康な人は果物を1日200g程度とっても問題ありません。確かに、食べすぎれば太りやすくなりますが、“抗酸化”という側面を考えると、やはり、果物は食べたほうがいいでしょう」(上西氏)

ちなみにアメリカの研究では、「果物は肥満や生活習慣病の原因にはならない」とする報告も複数ある[注]。
果物に期待できる栄養素として、ビタミン、ミネラル、食物繊維、フィトケミカルを挙げたが、なかには、バナナのように糖質の供給源となるものもある。
「バナナはエネルギー源として優れていますが、果物の摂取目安量の200gをとろうとすると、約2本食べることになります。糖質が多い果物をとりすぎると太りやすくなるのは事実なので、肥満が気になる人は、バナナよりもみかんやキウイフルーツなど、ほかの果物を選ぶといいでしょう」(上西氏)
果物は健康や美容に役立ち、生活習慣病も予防してくれる強い味方だ。過度に敬遠することなく、上手に取り入れよう。
この人に聞きました
女子栄養大学栄養生理学研究室教授。徳島大学大学院栄養学研究科修士課程修了後、雪印乳業生物科学研究所を経て、1991年より同大学に勤務。専門は栄養生理学、特にヒトを対象としたカルシウムの吸収・利用に関する研究など。『日本人の食事摂取基準2015年版』策定ワーキンググループメンバーを務める。
(ライター 村山真由美)
Glinsmann,W.H.et al.:Evaluation of health aspects of sugar contained in carbohydrate sweeteners.Report of Sugars Task Force,1986.J. Nutr. 116:S1-S216.(1986)
Apple. L.J.et al.:A clinical trial of the effects of dietary patterns on blood pressure. DASH Collaborative Research Group.Engl. J. Med., 336:1117-1124.(1997)
FAO Food and Nutrition Paper No66. Carbohydrates in Human Nutrition .Report of a Joint FAO/WHO Expert Consultation. FAO Rome(1998)