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疲れない脳をつくる 1日1回プチ瞑想のススメ パフォーマンスUPのための“疲れ知らず脳”のつくり方(2) 

日経Gooday

2016/10/18

腰が真っすぐに立ち、胸を開いた状態であれば、椅子に座って行ってもいい(c)Marcin Balcerzak 123-rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

マルチタスクに追われて何かと拡散しがちな意識を、瞑想(めいそう)などによって「今ここ」に集中させることで「マインドフル」になっていく。本特集の第1回「睡眠より仕事に直結! マインドフルネスで脳を鍛える」では、疲れない脳をつくるためにマインドフルネスの考え方やそのトレーニング方法の一つである瞑想が役立つことを紹介した。では、瞑想を上手に生活の中で実践するにはどうすればいいのだろう? 第2回は、具体的な瞑想の方法、実践のコツについて、組織の健康づくりに関する調査・研究などを行う会社Campus for Hで予防医学研究者の石川善樹さんらと活動する西本真寛さんに聞いた。

■瞑想の基本は「調身」「調息」「調心」

瞑想をするうえで意識したいのは、「調身(姿勢を調える)」「調息(呼吸を調える)」「調心(心を調える)」の3つ。それぞれを実践する際に心がけたいポイントは以下の通りだ。

1「調身」=姿勢を整える

(1)長く座っていてつらくないこと
(2)胸が十分開いていること

瞑想というと、足をあぐらに組んだ蓮華(れんげ)座という姿勢が思い浮かぶが、これは昔、インドなど椅子がないところで長時間瞑想するために行われていた座り方で、腰を真っすぐに立たせやすく、かつ肺を広い状態に整えやすい姿勢。こういったポイントを満たす姿勢が維持できさえすれば、椅子に座って行ってもいい。椅子に座るときは、体と脚の角度が狭い状態で長く座ると血流が滞るので、この角度を90度以下に縮めないようにするとよい。

「座る姿勢を保持する補助具がいろいろ市販されているので、そういったものを利用するのもよいと思います。骨盤が支えられて、腰を真っすぐに保ちやすくなります」(Campus for Hの西本真寛さん)

また、肩が前方に出て胸が小さく閉じていると肺や横隔膜が圧迫されて十分活用できず、呼吸が浅くなってしまうので、胸が十分に開いていることを意識しよう。ただし、普段猫背の人が姿勢をよくしようとすると反り過ぎてしまう場合が多いので、一度肩をすくめるように力を入れて上の方に引き上げてから脱力してストンと肩を落とすと、よい具合に力が抜けるという。また、伝統的に丹田といわれる部分(おへその約9センチ下の奥)に力を入れると腰の反り過ぎを防げる。

「1点だけ意識するのであれば、丹田です。丹田を意識して、おなかをへこませ保つことです」(西本さん)

慣れないうちは、瞑想を5分も続けると体がグラグラしてくる人が多いという。これは体幹が弱っているから。雑誌などで紹介されている体幹トレーニングを行うのもいいが、日ごろから背筋を伸ばしておなかをへこませて、よい姿勢を維持すれば自然と体幹は鍛えられる。

2 調息=呼吸を整える

(1)ゆっくり呼吸すること
(2)吸うよりも吐く時間を長くすること

3秒くらいかけて鼻から息を吸い、5~10秒くらいかけてゆっくりと口や鼻から息を吐くイメージだが、細かいやり方にこだわらず、ゆっくりと吐くことを意識するとよい。息を吸うよりも吐く時間を長くすることによって、副交感神経優位の時間を長くし、緊張状態を緩めることができるという。

「姿勢を正し、丹田を意識しておなかをへこませながらも、息は止めずに呼吸は深くしましょう。少し慣れが必要ですが、慣れてくると動きながらでもおなかをへこませて呼吸をすることができます」(西本さん)

3 調心=心を整える

3つの中でも最も難しいのが「調心」だ。調心の方法の中でも、基本的な2つの方法を知っておこう。

(1)集中瞑想

(西本さんの話を参考に編集部が作図、下の図も)

一つの対象物に注意を集中させる瞑想法。呼吸などの一つの対象に集中することで、脳内で自然にわき起こる思考(拡散思考)を少なくする。初心者は自分の呼吸に集中するとやりやすい。

集中瞑想をすると、脳の前頭前皮質と呼ばれる部位が活性化する。それが、この部位が担う認知能力(集中力、記憶力、意思決定)の向上と関係があるのではないかと考えられている。

呼吸に集中する

呼吸とは別のことを考えてしまうなど、拡散思考が起こってきたら、自分の注意がそれたことに気づく

ゆるやかに呼吸に意識を戻す

上記のことを繰り返す

(2)観察瞑想

瞑想中にわき起こる思考や感情、体の変化などをそのまま観察して受け流す方法。「今、涼しいと感じているな」「肩にコリを感じているな」など頭に浮かんだ思考・感覚をそのまま映像で見ているかのように客観的に観察するもので、やや上級者向け。判断を加えずフラットに観察するのはなかなか難しいため、頭に浮かんだことを次々と実況中継していくという方法がよくとられるという。

観察瞑想をすると、集中瞑想とのときとは違う、「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」が活性化する。DMNは脳の複数の領域で構成されたネットワークで、過去のさまざまな感情や記憶などをつなぎ合わせるときに重要な役割を果たすと考えられている。そして、何かに集中しているときは活動レベルが低下し、逆に何も考えていない“アイドリング状態”のときに活性化するといわれる。観察瞑想を行うと、このDMNが活性化することで、さまざまな経験や記憶、知識が組み合わせやすくなり、想像力や発想力が高まるのではないかと考えられている。

拡散する思考・感覚を抑制しない

思考・感覚が拡散していることに気づく

気づいた思考・感覚に対して、判断を加えずに客観視・観察する
(このとき「セルフナレーション」と言って、自分自身の思考の移り変わりを心の中で実況中継すると客観視しやすい)

■1日1回プチ瞑想を取り入れよう

瞑想の方法が分かったら、大切なのは実践すること。いわゆる瞑想状態に深く入り込むには15~20分のトレーニングを要するが、まずは姿勢と呼吸を意識し、1日に5分でもいいので、移動中や入浴中などいつもの習慣のついでに瞑想を取り入れるのがおすすめだ。

5分の瞑想も難しいという場合は、細切れの“瞬間瞑想”でもいいので、時々姿勢と呼吸を意識し、「その瞬間」に集中するのでもいい。

「まだ検証中ではありますが、短くても頻度を上げることで瞑想の効果があるのではないかという研究もされています。マインドフルネスはやり方にこだわらず『今ここ』に集中すること自体が重要なので、実践は生活の中のいろいろな場面で可能です」(西本さん)

「今ここ」に集中することは、どの瞬間でもできる。例えば、洗顔しながら、移動中の電車内で、あるいはメールの送信ボタンを押す前に「今ここ」に集中してひと呼吸する、なども一つの手かもしれない。

また、シャワーを浴びているときや、歩いているとき、ヨガやストレッチをするときなど、自分の体に何らかの感触があるときに、その感覚に集中するのも取り組みやすい方法だ。

「人間はいろいろなことに考えを巡らせながら生きているのですが、それが多すぎると疲れてしまいます。意識は過去や未来にも向いてしまうものですが、感覚というのは基本的に今ここにしか起こっていないので、体の感覚を通すのは意識を今ここに持ってくる近道になると思います。おいしいものを食べるとき、スマホを片手に『ながら』で食事するのでなく、本気で味覚に集中するのもマインドフルネスを取り入れる一つの方法になります」(西本さん)

瞑想を1週間に2回ほど実践すれば、ある程度「すっきりする」「落ち着く」という実感が得られる人は多いという。ただし、脳の基礎力を高め、疲れにくい脳をつくるには、継続して実践することが最も大切だ。

まずは日常の習慣の「ついで」となるタイミングを見つけて、できれば5分、それが無理でも瞬間、瞬間の瞑想を取り入れ、楽しみ工夫しながら続けてみよう。

西本真寛(にしもと・まさひろ)さん
Campus for H リサーチマネージャー・公衆衛生学修士。東京大学大学院医学系研究科公共健康医学専攻修了。専門は組織における健康づくり、特にメンタルヘルス(精神保健)。キャンパスフォーエイチはマインドフルネスのアプリ「MYALO」もリリース。

(ライター 塚越小枝子)

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