液晶で挑戦続けるシャープ 未来は「丸いスマホ」も西田宗千佳のデジタル未来図

四角くない液晶パネルが登場し始めた
四角くない液晶パネルが登場し始めた

スマートフォン(スマホ)の差別化が難しくなってきた、と言われる。確かに、フィーチャーフォンの時代は二つ折りやスライドなど「機構」とデザインがセットになっていた関係で、もっとバリエーションがあった。どうしても板型にしかならないスマートフォンは差別化が難しい、というのもよくわかる。

一方で、そこに一石を投じようという動きもある。2016年10月4~7日に千葉市・幕張メッセで開かれた「CEATEC JAPAN 2016」の一角でそれを見つけた。今回は、「角が丸い液晶」から「四角くないスマホ」が生まれる可能性について考えてみたい。

「フリーフォームディスプレイ」で四角くないスマホを

写真1をご覧いただきたい。

写真1 よく見ると、角が丸いディスプレーが使われている。ありそうでなかったスマホの形だ

一見普通のスマートフォンだが、角が「丸く」なっている。角が丸いスマホなんて珍しくない……と思われるかもしれないが、これは違う。普通の「角が丸いスマホ」は、ボディが丸いだけでディスプレーは四角い。だがこのスマートフォンは、ディスプレーの角が丸まっている。すなわち、普通の長方形ではなく、「角丸の長方形」のディスプレーが使われているのだ。別にマジックではない。ほんとうに液晶パネルの角が丸くなっているのだ。そして同時に、液晶パネルの端から端末の端まで、俗に「額縁」と呼ばれる部分が非常に狭いこともわかるだろう。そうでないと、パネルが特別な形をしていることの意味がない。

これを開発したのはシャープだ。同社は数年前より、四角以外の形をした液晶ディスプレーである「フリーフォーム液晶ディスプレイ」を開発してきた。今年のCEATECでもその最新の成果が展示された。

「これはディスプレーだけじゃないです。きちんとスマートフォンとして動いています」

開発を担当している、シャープ・ディスプレイデバイスカンパニー・技術本部の木村知洋さんは、そう言って懐からスマートフォンを取り出した(写真2)。確かに、このディスプレーはきちんとスマートフォンに搭載され、普通に動いている。写真はデモ映像だが、ほんとうにAndroidで動くスマートフォンだった。

写真2 OSにAndroidを使ったスマートフォンに、角丸の「フリーフォームディスプレイ」を搭載

「特別な設計はする必要がなく、単に組み込むだけで大丈夫です。画面描画も今まで通り行い、丸くなっている部分を描かないようにするだけです」

そう木村さんはいう。非常にシンプルな仕組みかつ、すぐに採用できるもので、量産も難しくはない、とのことだ。

角が丸いのはまだ序の口だ。完全に「円」になった液晶や、楕円形を傾けて使った液晶も展示されていた。

写真3 円形・楕円形の「フリーフォームディスプレイ」を使った例

「フリーフォームでは円が一番難しいので、これができるなら他の形でも大丈夫、と思っていただいていい」(木村さん)のだという。

「枠の細さ」を生かしてスマホで強みを

そもそも、いままで液晶はなぜ「四角」だったのだろうか? フリーフォームになることの難しさはなんなのだろうか?

液晶への配線をまとめるには、四辺があってそのうちのどこかへまとめるのが容易だ。また、液晶を光らせるためのバックライトについても、ある一辺に配置するのが基本。どちらにしろ、「四角い」のが一番楽だ。巨大なガラスや半導体から部品を切り出す場合にも、四角い方が効率的だ。

しかし、デザインを考えると、「四角い」ことは制約だ。世の中には意外と四角くないものは多い。四角く見えても角が丸かったりする。さらに自由な形が必要になる部分もたくさんある。例えば、自動車のコントロールパネルなどだ。メーターは丸いし、コントロールパネル全体は角がない、緩やかな形を採ることが多い。シャープはもともと、自動車などのメーターでの採用を目指してフリーフォーム液晶を開発してきた。だが今年は、自動車向けのメッセージは弱くなり、スマートフォンなど、もともと液晶が強かったジャンルへと展示の方向を切り替えてきた。木村さんはその背景を次のように説明する。

「スマートフォンでフリーフォームを使うには、ディスプレーの枠を細くする必要があります。今回、その点で大きな改善が見られたため、スマートフォン向けをアピールしました」

確かに、展示されたものの「枠」はとても細い。すでに述べたように、液晶にはバックライトが必須で、これが「枠」「額縁」を太くする。光源であるLEDを背面に置けば「枠」を作る必要はなくなるが、その分厚くなり、今のトレンドから離れる。例えば円形のものについては、一辺にLEDを寄せず、四方向に搭載してうまく光を回すことで、「枠」を最低限に抑えている。

写真4 一番難しい円形のディスプレー

「現在は有機ELなど様々なディスプレー技術があるが、枠を細くする、という意味では、他の技術よりも液晶の方が有利だと思い、開発を進めています」と木村さんは続ける。

すなわち別の言い方をすれば、「枠が小さく、デザイン自由度が高い」ことが液晶の差別化点になる、とシャープは考えて、フリーフォーム液晶の開発を続けているのだろう。自動車などでは、フリーフォームにせず、四角い液晶を「デザイン的に隠す」形で使ってもいい。だが、実際に手に持つスマートフォンでは、液晶の形の違いが、さらに大きな意味を持つ。

経営陣を刷新し、事業の立て直しに取り組んでいるシャープだが、そのシャープを苦境に招いたのは「液晶」だった。だが、技術という側面で見れば、シャープに残された資産もまた「液晶」である。デザインの変化、という意味で、枠の細いフリーフォーム液晶の出番はありそうに思える。まず自社製で「大胆な形のスマホ」を作り、その可能性を見せてほしい、とも思う。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)
フリージャーナリスト。1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。
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