育休で待機児童対策 「勤続1年未満」にも目を
本紙でも報道されたが、厚生労働省は育児休業を子が2歳に達するまで延長可能にする方向で育児・介護休業法の改正を審議している。背景に待機児童問題がある。
大都市部の保育園不足は深刻な状態にある。「保育園落ちた日本死ね」というブログが少し前に注目を集めたが、保育園に落ちても退職を回避できるようにすることが育休延長の目的である。改正法は女性の就業継続拡大と保育園不足解消の双方に資するといえるだろうか。
改正法によって期待できる保育面の効果は0歳児保育の需要緩和である。新年度4月の保育園入園を想定した場合、誕生日が4月から9月の子は現行法が認める1歳6カ月まで育休を延長しても年度途中に育休が終わってしまう。そのため、1歳になる前に0歳児クラスに入園するのが合理的である。
だが、2歳まで育休を延長できれば1歳児クラスから入園できる。認可保育所の保育士配置基準は0歳児が子ども3人に対して保育士1人。1歳児は子ども6人に保育士1人である。0歳児の入園が1歳児に移れば、それだけ保育園は要員確保と人件費負担の両面で助かるだろう。
だが、本格的に0歳児保育の需要を減らすなら次の点にも目を向けてよい。パートや派遣社員など、期間を定めて雇用される有期契約労働者は、勤続1年未満の場合、育休を取ることができない。正社員も労使協定により勤続1年未満の者は育休の対象から除外できる。新卒社員はまれかもしれないが、転職して1年目であれば育休を取る労働者がいても驚くに当たらない。
妻が育休を取得できない場合に夫が代わりに取るケースはまだ少なく、多くは産休明けに0歳児保育を利用して復職している。育休を取得できない労働者には今後も0歳児保育を提供する必要があるのだ。
そうして一部の労働者が0歳児クラスに集中すれば、育休を取得できる労働者にも1歳まで待たず0歳児クラスに入園しようという焦燥感が募る可能性がある。
改正法は企業に負担を強いるものである。それだけに女性の退職回避と待機児童対策の両面でしっかりと成果が表れる改正となることを期待したい。
〔日本経済新聞朝刊2016年10月15日付〕
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