ホテルを予約するときに、立地や値段だけで選んでいないだろうか。ホテルはうまく使えばただの「宿泊場所」ではなく、旅の感動やドラマの舞台となる。自分にあったホテルを選び、充実したホテルライフを送るコツをプロのホテルマンである高野登さんに教えてもらった。
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昨今、情報収集ツールの主流はインターネットになりました。ホテルの予約もまた、インターネット経由が多くなってきました。ホテルのウェブサイト、予約専門サイト、旅行代理店などの通販サイトなど、さまざまな予約ルートがあります。
ウェブサイトはまさに強力な予約手段になりました。しかし、すべてのツールがそうであるように、予約サイトにも一長一短があります。大手旅行代理店の予約サイトは、その規模や便利さから安定的に予約を確保できます。ただその恩恵を受けるためには、ホテルは一定数の部屋を予約サイトに預けなくてはなりません。一日に数室から数十室、予約サイトにホテルの残室数管理を委ねるという形になります。
何室を代理店やウェブサイトに委託するかは、ホテルの規模にもよりますが、要はどこまで、自分たちで客室のコントロールをしたいかによるでしょう。たとえば、ブランドや格式よりも、客室の稼働率を高めて売り上げを重視するホテルもあります。ターゲットを絞ったお客さまにアプローチするために、客室をコントロールしたいホテルもあります。客室のコントロールは、ホテルの戦略と密接に関係しています。
1本の電話から始まる
さて、このようにとても便利なインターネット予約ではありますが、自分流のホテルライフを満喫しながら、感性を磨くステージとして捉えてみたいと思うなら、ネットでなくまず電話で予約されることをお勧めします。
なぜ、ネットではなく、電話の予約のほうがいいのか。
それはホテルマンとお客さまとが、生の声で会話をすることができるからです。お客さまから直接、宿泊や会食、宴会など、ホテルを利用する目的をお聞きすることができるからなのですね。
「実は今年で結婚30周年なんですよ。それで女房孝行の真似事でもしようと思ってね」
こんな言葉が返ってきたら、すぐにホテルマンの血が騒ぎます。お祝いの花束はどんなしつらえがいいだろうか、ディナーの席でちょっとしたお祝いをして差し上げたいなど、瞬時にさまざまな思いが頭を駆け巡ります。
ホテルマンは、お客さまのために何かをしたい、喜んでいただきたいと常に思っている生き物です。であれば彼らを利用しない手はありません。
まずは最初の数回は電話で予約をして、自分を知ってもらいましょう。そしてホテルを使う目的を伝えるのに慣れることですね。それがホテルマンを味方につけて、正しく利用することへの第一歩になります。そうして、ホテルとのよい関係が構築されたら、次はネットを使ったコミュニケーションでも大丈夫です。ただそのときでも備考欄にひと言、思いを添えることを忘れないようにしましょう。利用目的や要望を具体的に伝えることも大事です。