800万人の主婦パート 二重負担でも低評価の悲痛
女男 ギャップを斬る(水無田気流)
9月末、首相官邸で第1回「働き方改革実現会議」が開催された。今後も非正規雇用や女性就労等について検討されるという。総務省「就業構造基本調査」(2012年)によれば、すでに日本の被雇用者に占める非正規雇用割合は4割。そのうち既婚女性のパートタイマーなど「主婦パート」は、非正規雇用全体の4割に相当する約804万人いる。
労働ジャーナリスト・渋谷龍一氏によれば、サラリーマン世帯のうち妻がパートタイマーの世帯は、05年から15年までの間に26%から32%まで増加した。これは、専業主婦の世帯が同時期45%から34%まで減少したのとは対照的である。他方、妻がフルタイマーの世帯は26%前後で推移し大きな変化はない。
また子どものいるふたり親世帯の平均世帯年収を妻の就業形態別に見ると、高い順に正社員世帯約798万円、専業主婦世帯約618万円、パートタイマー世帯約552万円で、主婦パート世帯の妻の家計負担の重さが見て取れる。近年非正規雇用者の「基幹化」も進行しており、正社員に近い仕事を任される非正規雇用労働者が増加する一方、それに見合う報酬は支払われていない。
「主婦パート」は半人前の労働者などではなく、9割超に正社員経験があり、基礎的ビジネススキルは身についている人が多い。問題は、女性が家庭責任負担の重さから、結婚・出産を経て多数が離職していくという雇用市場からの「斥力(せきりょく)」と、労働力不足や経費節約目的など企業からの「引力」が、「低待遇でも一定水準以上のパフォーマンスを見せる主婦パート」を増加させている点だ。
さらに主婦パートは専業主婦と同水準の家事育児を担うため、有償労働・無償労働の二重負担に苦しむことにもなる。
雇用市場と家庭生活双方にまたがる女性の「負担増・低待遇・低評価」な現状は、主婦パートのあり方に収れんされることから、私は「主婦パート問題」と呼びたい。
日本社会は女性に重い負担は負わせても、それに相応する評価も待遇も与えようとしない。必要とされる人には、それにふさわしい評価と待遇を与えるという「当たり前」が成立しなければ、「働き方改革」などなし得ないのではないか。そう強く問いたい。
〔日本経済新聞朝刊2016年10月8日付〕
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。