スター・トレックが描く異星人は科学的に正しいか?

2016/10/16
ナショナルジオグラフィック日本版

スター・トレックのテレビシリーズで、マイケル・ドーン氏(右)が演じるクリンゴン人ウォーフ。(Photograph by AF archive、Alamy)

50年もの歴史を誇る『スター・トレック』のテレビシリーズと映画には、広く名を知られた架空のエイリアンたちが登場する。クリンゴン人、カーデシア人、バルカン人、トリブルをはじめ、ユニークで多様な地球外生命体があふれている。

今のところ、そうした異星人の存在はSFの域を出ていない。だが、本物の地球外生命体がどんな姿をしているか、そもそも宇宙に地球外生命体がいるのかいないのかについて、科学者たちはさまざまな想像をめぐらせている。

ここ数十年、科学者たちは地球以外で居住可能な領域を探すと同時に、宇宙全域で生命体との出会いを求めて、きわめて精巧な探査装置を開発してきた。これまでに、天文学者は太陽系外惑星を3500以上発見したが、未発見の惑星はまだたくさんあると考えている。

さらに夢膨らむことに、一握りの惑星は、いわゆる「ハビタブルゾーン(居住可能領域)」、つまり恒星の周囲を回る惑星の表面に水が液体で存在する温度になる領域にあるとみられる。よく知られているように、水は生命のカギとなる要素で、水の存在が生物学的な発達を促すと考えられる。

「地球では居住可能な条件がそろった直後に生命体が誕生したわけですから、ほかの星系でも同様のことが起こる可能性は高いでしょう」。そう語るのは、米国アリゾナ大学とNASA宇宙生物学研究所で天文学と宇宙生物学を研究するダニエル・アパイ氏だ。

「地球上で生まれた生命体は、約40億年もさまざまな危機を生き延びてきたのです。いったん生命体を生み出した惑星を“不毛化”するのはきわめて難しいことがわかります」と、アパイ氏は付け加える。「ですから、銀河系のあちこちに生命体が存在する可能性は大いにあります」

生命の種が飛来した?

今後エイリアンが見つかったら、スター・トレックで見られるような姿に似ているのだろうか? 脚本家たちは肉体をもたないエネルギー体から知性をもつ雲まで、きわめてユニークな生命体を描いてきたが、エンタープライズ号の乗組員が遭遇するエイリアンの大半は、炭素でできた生命体で、ほとんどがヒューマノイドだ。

ロミュラン人、バルカン人、アンドリア人など、スター・トレックのよく知られる異星人たちは、地球の人間にそっくりだ。そのことが、長年にわたり多くのファンのあいだで論争の的になってきた。テレビシリーズ『新スター・トレック』(Star Trek: The Next Generation。1987~1994年)の脚本家は、パンスペルミアと呼ばれる実際にある科学的な仮説を用いて、異星人がお互いに似ていることの理由をうまく説明しようとした。

スター・トレックに登場する厄介者、トリブルに埋もれるカーク船長。(Courtesy CBS)

この仮説を提唱する人は、地球の生命の起源は、耐寒性の微生物、あるいはアミノ酸といった生命体の原料となる物質が、彗星(すいせい)や浮遊惑星によって運ばれてきたものだと主張する。初期の地球に激突した隕石(いんせき)が、生命体の“スターターキット”を銀河系の別の場所から運んできたと考える科学者もいる。

この説を裏付ける直接的な証拠はひとつもないが、彗星探査機ロゼッタなどの調査により、生命の基本的な構成要素が彗星から見つかっている。また、クマムシなど生命力の強い生物は、宇宙空間にさらされても生き延びられることが知られている。

パンスペルミア説をとるスター・トレックでは、原初のヒューマノイド型生命体が意図的に銀河系のあちこちの領域にまかれ、それぞれの原型となる新しい種が誕生したと描かれている。そうした種はいずれも、長らく交流がなかったが、進化の過程で枝分かれした近縁関係にある。

パンスペルミア説が正しい可能性もあるが、現実の宇宙でヒューマノイド型生命体に遭遇する可能性は低い、とアパイ氏は考えている。むしろ生命体の未来を決めるのは、地域の環境や偶然の進化なので、すべての生命体は完全に独自の進化を遂げる、と主張する説もある。

「地球の生物圏には平行進化――遠くかけ離れた、近縁ではない種の間で同じような眼球に進化する、など――の例もあるが、私たちが遭遇する異星人がヒューマノイド型であるとは思えません」と、アパイ氏。

炭素をベースにしない生命もいる?

これまでの研究を踏まえれば、銀河系で見つかる生命体は地球にもあふれている微生物である可能性が最も高いと、研究者たちは考えている。

「地球に生物が誕生し、複雑な動物に進化するまでに数十億年かかっています。植物が光合成できるようになって、まだそう長くありません。知性と技術をあわせもつ文明が存続した期間に至っては、地球の歴史のわずか0.000001パーセントにすぎないのです」と、アパイ氏は言う。地球の歴史は、多種多様な微生物に支配されてきたとさえいえる。地球で見られる基本的な分子配列は、宇宙各地でも共通に見られるものである可能性も高い。

スター・トレックに登場するシリコンをベースにした生命体、ホルタ。(Courtesy CBS)

「物質の特性や化学的性質から考えると、地球上の生命体と同様、銀河系のほかの場所でも炭素が生体分子の足場を構成する主要な要素になることは、十分考えられます」とアパイ氏はいう。

それでも、宇宙生物学者は、地球中心の見方に偏らないよう気を付け、異星人についての仮説を立てようとしている。なんとか地球外生命体と遭遇できたら、スター・トレックに登場するホルタのようなシリコンをベースにした生命体や、水晶体(crystalline entity)のような知覚をもつ鉱物に出会う可能性は常にあるという。

「私たちは、探しうるすべての生命体を探しているし、思いつく可能性はひとつ残らず検討します」と、アパイ氏。「もちろん、驚きをもって地球外生命体を研究できる日が来ると信じています」

(文 Andrew Fazekas、訳 倉田真木、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年10月5日付]

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