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ファッションの伝道者はなぜ毎週、山に登るのか

2016/10/17

■手が届きそうな満天の星

北横岳

――山で過ごすメリットは何ですか。

山の頂近くで夜中にふと目が覚めて、テントを開けてみると、東京では目にできないような全方向の星空が天然のプラネタリウムのごとく広がっています。障害物のない地平線から上がってくる朝日、手が届きそうに近く見える満天の星をただ見るだけでも幸せな気持ちになります。そういったものすごく壮大な景色を見るとやはり心が洗われる思いがします。涙が出そうになるほどきれいな景色を見ると、リフレッシュできるうえ、すがすがしい気持ちになれます。

山に行っていなかった頃の休日は東京の街中で買い物をしたり友達とお茶をしたり、美術館や舞台を見に行ってもいましたが、山に行き始めてからは今まで以上に新しい発見や初めての経験ばかりでした。見たことのない景色に出合えるし、珍しい植物、昆虫などもいます。想像もできなかったような自然現象と時に遭遇できることもあります。

■日常との物理的「切断」

白馬岳

――山ライフや旅は仕事にどんなプラスをもたらしていますか。

ファッションブランドのPRをサポートするという仕事柄、平日はおしゃれの街、原宿、表参道、青山あたりで過ごすことが多くなっています。自分のオフィスも原宿にあります。山登りを始める前は、土日を友達と都心で過ごすことが多く、1週間ずっと同じエリアに通っているのが当たり前でした。生活の行動範囲が狭くなっていました。でも、山に行き始めてからは土日は携帯電話の電波も届かないような自然の中に身を置いていて、物理的に都会暮らしと切断できるようになりました。

気分まで晴れ渡るような景色を頂上から眺めていると、自分は別世界に今、いるのだという実感がわき上がって、平日とのメリハリができます。山でしっかりリフレッシュして気力を充電できると、休み明けからの仕事もやる気が出ます。次の山旅が予定されていると、それを目先の目標として張りが出るという効果もあります。ちょっと気がかりなことがあっても、広大な絶景を見渡していると、そんな悩みはちっぽけだと思えるようになりました。電波が届かない状況では、結果的に外部から遮断されるので、仕事を離れての考え事にも向いています。下山までいっとき、仕事から解放されるのは貴重な体験です。

上高地

――仕事へのプラスのほかに、よかったことや気持ちの変化が起きた点はありますか。

仕事のストレスを晴らしたいという気持ちも手伝ってか、土曜の朝一から山に向かうようになったので、金曜の夜中は飲まなくなりました。体力がつき、重心がしっかりした気がします。初めて本格的な山に登ったのが、「日本三大急登」とも呼ばれる谷川岳(1977m)でした。ロープウエーを使わずに西黒尾根という登山道から登ったのですが、高低差が1200mほどもあり、初心者にはかなりハードでした。最初の30分間でギブアップしそうになりました。そのちょうど1年後にどれぐらい体力がついたか、歩き方がうまくなったかなどを確かめるために同じルートで登ったところ、まだまだ行けるなと感じるぐらい気持ちよく登れました。わずか1年間でだいぶ体力がついたなと実感した瞬間でした。

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