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世界の首脳をもてなすワイン 足利で醸す 主役は障害者、「ココ・ファーム・ワイナリー」

ライター / 日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパート 猪瀬聖

2016/10/12

「ココ・ファーム・ワイナリー」のワイン。「風のルージュ」は洞爺湖サミットで振る舞われた

ワイン愛好家が一度は訪れたいワイナリーが、栃木県足利市の山の中にある。名前は「ココ・ファーム・ワイナリー」。2008年の北海道洞爺湖サミットや今年広島で行われた主要7カ国(G7)外相会合など、日本で開かれる重要な国際会議の舞台では、必ずと言っていいほどココ・ファームのワインが振る舞われる。そんな日本を代表するワインを造っているのは、個性あふれる元気な知的障害者たちだ。

仕込みの秋 手作業が決め手

ココ・ファームを訪れたのは9月中旬。ブドウを収穫しワインの仕込みに入る秋は、ワイナリーにとって1年で最も忙しい季節だ。

倉庫のような大きな施設の中では、運び込まれたブドウの選果が行われていた。房の中から、熟し具合が足りなかったり潰れたりしている実を人の手で取り除く作業で、ワインの質を左右する重要な工程だ。ワイン造りは機械化が進むが、選果は依然、人手に頼るところがほとんどだ。選果を経た実は、機械で茎から切り離され、集められて発酵タンクに運ばれる。

この日、選果作業をしていたのは、ワイナリーの専従スタッフや海外からの研修生ら数人。両手を素早く動かし、実をより分けていた。そのかたわらで、空の箱を片づけたり、機械から吐き出された小枝の束を、大きなフォークですくって別のかごに移したりする作業をしていたのが、障害者たちだ。

ブドウを収穫、選果作業をする

「ブドウの入荷が多い時は、園生(えんせい)も選果作業をします。『自分の食べたい実だけ残してね』と指示すると、ものの見事によい実だけを残します」。こう話すのは、施設を案内してくれた池上峻さん(35)。池上さんは、ココ・ファームを開いた故・川田昇氏の孫にあたる。

池上さんが障害者たちを「園生」と呼ぶのは、ココ・ファームで働く知的障害者は全員、同じ敷地内にある知的障害者支援施設「こころみ学園」の入居者だからだ。同学園には現在、男女合わせて90人の知的障害者が暮らす。

ココ・ファームはもともと、こころみ学園の創設者である川田氏が、園生一人ひとりが生き生きと働ける場所をつくりたいと、1980年に設立。それ以前から、生食用のブドウを作っていたが、価格の変動が大きく収入が不安定だった。そこで、より安定収入が見込めるワイン造りに乗り出したというのが、ワイナリー開設の経緯だ。ココ・ファームの「ココ」は、こころみ学園の「ここ」から取った。

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