iPhone 7かGalaxyか 最強スマホ、頂上対決
戸田覚のPC進化論
ついに「iPhone 7」が発売された。最大のトピックはSuicaへの対応だろう。これまで「おサイフケータイが使えないからiPhoneは買わない」という声を繰り返し聞いてきただけに、感慨深いものがある。Androidユーザーにとっても気になる進化と言えるのではないだろうか。
ということで、今回はAndroid端末の代表格「Galaxy S7 edge」とどちらが魅力的なのか、独断と偏見で比べてみることにした。iPhoneは、Galaxy S7 edgeと同じ5.5型液晶のiPhone 7 Plusが対象だ。
iPhone 6が登場したころ、つまり2年ほど前の5.5型は非常に大きく感じたが、最近は多くのスマホが5型以上になっており、5.5型でもそれほど大きいとは思わなくなってきた。
ドコモのオンラインショップで一括購入の場合の価格は、Galaxy S7 edgeが9万3960円、iPhone 7 Plus(32GB)も同様に調べると9万6552円とほぼ引き分けだ。ただ実際は、キャリアによる値引きの有無など、条件の違いがある。
ここで本体サイズを比較してみよう。Galaxy S7 edgeは151×73×7.7mmで、重量は158g、iPhone 7 Plusは158.2×77.9×7.3mmで、188gとなっている。下の写真を見ても分かるようにサイズはかなり違う。
iPhone 7 Plusは薄いけれども、本体が大きすぎる印象だ。またGalaxy S7 edgeがスリムに見えるのは、液晶の脇がアールを描いて湾曲しているためで、表示面積では有利になる。しかし、正面から見たときの画面サイズが5.5型といえるかどうか。僕は、実質的には5.5型とはちょっと違うと思う。
本体の完成度はどちらも文句なしで、細部までよくできている。デザインは好み次第だろう。僕としてはシンプルな美しさという意味ではiPhone 7 Plusに軍配を上げたい。Galaxyシリーズのデザインもずいぶん良くなってきたが、まだ少しだけごちゃごちゃとしていると感じるのだ。
どちらも性能は満足だがディスプレーに差がある
どちらもハイエンドモデルらしく、性能は満足できる。OSが違うので単純にベンチマークで比較できないが、体感上の処理速度はまったく文句の付けようがない。画像などを開くレスポンスも甲乙付け難く、両者ともサクサク操作できる。
しかし、ストレージは大差がある。iPhone 7 Plusは、例によってmicroSDカードによる容量の増設には対応していない。32GBの上には128GBと256GBの2種類のモデルを用意しているが、価格の違いが大きい。128GBモデルは1万円以上、256GBモデルは2万円以上も高くなるのだ。
Galaxy S7 edgeのストレージは32GBだが、microSDカードで容量を増やせる。自分が必要な容量が分からなかったり、たくさんの動画や楽曲を持ち歩きたい人におすすめできるのは、Galaxy S7 edgeだ。
本体を見ていて気になったのがディスプレーの差だ。iPhone 7 Plusは、625cd/m2と明るくなった液晶を採用している。解像度は1920×1080ドットだ。Galaxy S7 edgeは、そもそも液晶ではなく有機ELを採用し、2560×1440ドットと解像度で勝っている。
しかし実際に比べてみると、明るさはiPhone 7 Plusがやや勝っているようだ。ただ、写真などを見たときにはGalaxy S7 edgeのほうが緻密できれいだ。有機ELは黒が締まって表示される点も、写真が美しく見える要因だろう。さらに、横から見たときの色の変化も、iPhone 7 Plusと違って、Galaxy S7 edgeはまったく気にならない。iPhone 7 Plusの液晶に欠点はないが、Galaxy S7 edgeの有機ELはその上を行く。次のiPhoneは液晶とは決別し、有機ELを採用すると予想する。
カメラはiPhone 7 Plusが勝る
カメラ機能だが、普通に撮った写真ならどちらも引き分けだろう。Galaxy S7 edgeは、F1.7の明るいレンズに加え、ピクセルサイズの大型化で暗いシーンでもノイズが少なく、美しい写真が撮れる。iPhone 7 Plusは、F1.8とこちらも明るいレンズで、暗いシーンの撮影にも強い。色域も広がっており、Galaxy S7 edgeよりさらに自然な色合いだ。どちらかと言うと、Galaxy S7 edgeは派手でドラマチックな写真に向いているように僕は思っている。
通常のスナップ写真を取るなら、どちらも満点。色合いの好みによって点数が変わってくる程度の違いしかない。ただし、iPhone 7 Plusはレンズを2つ搭載し、光学2倍ズームの撮影ができるという大幅な進化を遂げている。被写界深度を生かして背景をぼかした写真も撮れるのだが、こちらは、まだ機能が提供されていない。デュアルレンズの利便性を考えると、iPhone 7 Plusが明確に上回っていると言える。
iPhoneならどのキャリアでも使える
冷静に考えてみると、スペックもさることながら、iPhoneがすごいのは、主要キャリアにはすべて対応し、さらにSIMフリーモデルも販売していることだ。ほかのスマートフォンには、同様の構成は見られない。つまり、価格さえ納得できれば、どのキャリアのユーザーでも乗り換えられるのだ。しかも、Suicaに対応した「ApplePay」の採用により、iPhone 7 Plusは、Android端末が握っていたアドバンテージをほぼ帳消しにした。ほかの各種「おサイフケータイ」サービスにも順次対応していくはずだ。
これで、iPhoneの大きな欠点はたった1つになってしまった。それは、安価なモデルがないことだ。SIMフリースマホでは2万円程度の機種がとてもよく売れているのだが、そこにぶつける製品がない。高級ラインに的を絞っているのがiPhoneのコンセプトとも言えるのだが……。
アプリに関しては、相変わらずiPhoneのほうが優れていると僕は思っている。複数のアプリ開発者に話を聞いても、「どちらか1つを選ぶならiOSにする」と言う。Androidは、端末によって解像度がバラバラなので、特にグラフィックの美しいアプリを作るのが厳しいと言うのだ。
Galaxy S7 edgeは、素晴らしいデバイスで、Android端末の中では1、2を争う魅力的な機種だ。しかし、iPhoneがSuicaに対応したことで、Suicaを使いたいがためにAndroid端末を選択する人は確実に減る。総合力で史上最強となったiPhoneの前には少々分が悪い。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『一流のプロから学ぶ ビジネスに効くExcelテクニック』(朝日新聞出版)がある。
[日経トレンディネット 2016年9月27日付の記事を再構成]
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