斬新スタートアップ商品大賞 視力回復レンズなど授賞
リーマンショックが起きた2008年以降、しばらく停滞していたスタートアップへの投資が、急回復している。ジャパンベンチャーリサーチによると、16年上半期(1~6月)は、未上場のスタートアップの調達額が928億円と、半期での過去最高を更新。年間でも調査開始以来最も多くなる見通しという。
80年代以降、およそ10年ごとに繰り返されてきたベンチャー投資ブームは第4幕を迎えた。資金の出し手は、以前の金融機関系に代わって大企業が台頭。新機軸の商品・サービスを生み出すスタートアップと手を組み、短期間でイノベーションを起こす狙いだ。「今は100億円規模の民間ベンチャーキャピタルがいくつもあり、資金の出し手の意欲は旺盛。一部の人気企業に資金が集中している傾向はあるが、リスクを取って有望なスタートアップを発掘し、育成していこうとする機運も強い」(産業革新機構の土田誠行専務)という。
資金が集まるスタートアップは、数年前のゲーム・アプリ系から様変わり。すべてのモノがネットとつながる「IoT(インターネット・オブ・シングス)」や「AI(人工知能)」、金融とテクノロジーを融合させた「フィンテック」など、最新技術で新しい価値を生み出すスタートアップが脚光を浴びている。
しかし、投資が過熱する一方で、IoTやAIといったバズワードが独り歩きしている感は否めない。それらが自分の暮らしをどう変え、どんな利便性をもたらすのか。本当に実感している人は、まだ一部の先端層だけだろう。
そこで、日経トレンディは有力なベンチャーキャピタルの推薦企業も交えて、個人生活に密着したスタートアップの画期的な商品・サービスを厳選。「健康&食」「生活」「ファッション」などの部門ごと、総勢120点を集めた。そのうち、「生活を変えるインパクト」「新規性」「将来性」の3つの軸で最も優れる商品・サービスには大賞を贈る。
例えば健康&食部門では、夜寝ている間に着けるだけで日中の視力が回復する「オルソケラトロジーレンズ」(ユニバーサルビュー)が大賞に輝いた。同社が次に繰り出す「ピンホールコンタクトレンズ」は、たった1つのデザインで老眼も近視も遠視も乱視の人も救う世界初の商品で、将来性も確かだ。
注目のIoT関連では、チカクの「まごチャンネル」が大賞。スマートフォン(スマホ)から実家のテレビに孫の動画や写真を直接送れるもので、シニアでも面倒な設定や操作なしに孫の笑顔を楽しめる。また、フィンテックでは、ATM利用や買い物でカードを出す煩わしさを解消する超高速の指紋認証サービスや、住宅ローンの借り換えメリットを瞬時に比較してくれる無料アプリが登場している。
知らずに過ごせば損をする、人の気持ちをワクワクさせる――。そんなスタートアップ発の商品を発掘した。
健康&食部門大賞
オルソケラトロジーレンズ(ユニバーサルビュー)
手術なしで「夢の裸眼生活」を送れる夜用コンタクト。18年には近視、遠視に加え、老眼にも対応する商品を投入。
生活部門大賞
まごチャンネル(チカク)
子供の写真を実家の親と簡単に共有できる。スマホで撮った写真が自動転送され、実家のテレビに表示される。
ファッション部門大賞
VELDT SERENDIPITY(ヴェルト)
国産の精密時計とスマートウォッチが融合。高級感に加え、LEDを使った直感的な通知や電池持ちの工夫も魅力的。
Orphe(no new folk studio)
靴が新たな表現の手段になる。センサーが動きを検知し、さまざまなパターンで発光。スマホから音も鳴らせる。
米国部門大賞
Memory Mirror(MemoMi Labs)
カメラ内蔵のディスプレーを鏡に見立て、試着した服の色を変えたり、後ろ姿を確認できる"スマートミラー"。
趣味・遊び部門大賞
HADO(ハドー)(meleap)
ゴーグルとモーションセンサーを装着して戦う新感覚のAR(拡張現実)スポーツ。全国で体験施設が増殖中。
マネー部門大賞
Liquid(Liquid)
独自開発の超高速な指紋認証は、銀行も採用するほどの精度。キャッシュカードすら不要な生活を現実にする。
モゲチェック(MFS)
借り換えると支払額はいくらになるか、全国の約1000種類もの住宅ローンを瞬時に計算できる比較サービス。
学び部門
絵本ナビ(絵本ナビ)
「全ページ試し読み」「定額読み放題」など、書籍販売に関して先進サービスを次々と導入する、絵本業界の"革命児"。
大学発
近大ナマズ(食縁)
絶滅危惧種のウナギを救うため、ウナギのかば焼きに似た感覚で食べられるナマズを開発。大学教授がプロジェクトを率いた。
(日経トレンディ編集部)
[日経トレンディ2016年11月号の記事を再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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