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七色の画家・藤田嗣治 動画でたどる生涯の画業

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NIKKEI STYLE

20世紀に日本とフランスを中心に活躍した画家、藤田嗣治(つぐはる)の企画展が東京都の府中市美術館で始まった。パリで人気を集めた「乳白色の美」の作品に始まり、戦争記録画、フランスに帰化した晩年の作品まで約110点を網羅した。同じ画家とは思えないほどの幅広い画風が特長だ。この多彩な画業をたどる企画展を訪ねた。

今回の展示で改めて実感するのは、藤田の特長は画風の多彩さにあるということだ。時代や生活した場所に応じて画風や画題がめまぐるしく変化する。1910年代、藤田は20代後半でパリに渡った。ピカソやモディリアーニらと交流しながら、独自の画風を研究し続けた。こうしてたどり着いたのが、「五人の裸婦」(1923年、東京国立近代美術館)などに見られる乳白色の肌の裸婦像だ。裸婦の肌は照りを抑えた真珠のようになめらかだ。当時、画家たちの間では、あらかじめ塗料が塗られた既製のキャンバスを使うのが一般的。だが、藤田は乳白色の肌を作り上げるため、自ら布を探し、塗料や塗り方まで研究し尽くした。さらにその肌を縁取る輪郭線は流れるように繊細だ。日本画で使われる極細の「面相筆」を使って墨で描かれている。この乳白色の裸婦で藤田は1920年代、パリの花形画家にのし上がった。

花開く色彩感覚と写実性

30年代に入り、藤田の画風はがらりと変化する。それまでの乳白色を際立たせたシンプルな色づかいから、より多くの色彩を用いるようになっていく。画題も裸婦から、旅で巡った中南米や秋田、沖縄など各地の風俗に沿ったものを写実的に描くようになっていく。「客人(糸満)」(38年、公益財団法人平野政吉美術財団)も地元の風俗を豊かに描いた。日に焼けた肌の2人の女性は、沖縄伝統のまげを結い、それぞれ黄色と藍色のハリのある芭蕉布の着物をまとう。そばにはさえた朱色が特長の琉球漆器とみられる盆。背景には沖縄の家屋によく見られる赤瓦が並び、濃い絵の具の筆致で描かれた雲はどんよりと漂い、沖縄の重苦しい暑さが伝わってくるようだ。

戦争画でも試行錯誤

戦争を記録した作品でも画風は絶えず変化する。それが表れているのが「アッツ島玉砕」(43年)だと指摘するのは、戦争画専門で千葉工業大学の河田明久教授だ。今回、並べて展示されている「サイパン島同胞臣節を全うす」(45年)と同じ茶褐色の暗い色調で一見違いはないようにみえる。だが、河田教授は「アッツ島の構図は極めて異質だ」と語る。「サイパン島」は西洋の透視図法を用い、ラファエロの宗教壁画など西洋の古典画にならった構図だ。これに対し、「アッツ島は奥にいる兵士が手前の兵士の上に重なっていくような上下遠近法の構図。日本の浮世絵のようだ」と話す。藤田の試行錯誤の跡が見られる。

2つの戦争画の作品紹介には、「東京国立近代美術館(無期限貸与)」という謎の表記がある。これは保管先が東京国立近代美術館ということを示す。だが、もともとこれらの戦争画は終戦直後にGHQ(連合国軍総司令部)に接収された。このため、無期限とはいえあくまでも所有者の米国からの貸与だということを示す。この謎が解けたとき、今夏の大ヒット映画「シン・ゴジラ」に登場する日本の若手政治家が「戦後は続くよ、どこまでも」とつぶやいた場面を思い出すのは私だけだろうか。

挑戦し続けたクリエーター

藤田が画風を変え続けた背景について、美術史家で文化庁芸術文化調査官の林洋子氏は、「勝負の舞台が違ったら違う方法で勝負した。時代や赴いた先にあわせて画題や画材を変える柔軟性や器用さがあった」と分析する。「裸婦象も戦争画も晩年の宗教画も、目の前にあるものをどうリアルに表現するか、好奇心と向上心を持って挑戦し続けた真のクリエーターだ」と指摘する。

今回は広く知られた代表作だけでなく、ディズニー映画のプリンセスを思わせるようなデッサン画(仏ランス美術館)なども幅広く展示。画面の片隅に配置された動物の描写も興味深い作品も多く、見る人によって見どころは異なりそうだ。

18年には藤田の没後50年を迎える。林氏は「没後50年というタイミングは作品本位で作家を正当に評価する時期でもある」と話す。人生の歩みに焦点が当たることが多かった藤田について、芸術家として残した作品に真正面から向き合う時期だと強調する。今年は藤田の生誕130年。生涯の作品を網羅した今回の展示をきっかけに藤田の作品を真っすぐ見つめれば、藤田が放つ七色の多彩な光のいずれかが心に届くかもしれない。

(映像報道部 鎌田倫子)

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