AIがコリ具合を感知 マッサージチェアのすごい進化
最新のマッサージチェアは、従来の製品とは全く違った形へと進化している。通信ネットワークで収集した体の測定データを参照し、病院と連携して健康を管理する機能や、人工知能(AI)で体の状態を感知してマッサージの強さを調整する機能など、さまざまな面から健康をサポートする家電へと変化しているのだ。
単なるマッサージ機から健康管理ギアへ
仕事の最前線に立ち、バリバリ働くようになると、気になってくるのがマッサージチェア。椅子に座ってスイッチを入れるだけで、肩や腰をたたき、もみほぐしてくれる。日々忙しく、疲れがたまっている人なら、一度は購入を考えたことがあるのではないだろうか。
マッサージチェアに対して「中高年」というイメージを持っている人もいるかもしれない。しかし、ストレッチ機能や健康管理機能などを備えた最新のマッサージチェアは、年齢ではなく家族の健康をサポートしてくれるギアへと進化している。
IoTを取り入れたマッサージチェアも登場
今、最も進んだマッサージチェアといえるのが、今年7月15日より予約開始し今秋に出荷される予定のファミリーイナダの「ルピナス」シリーズだろう。
Wi-FiもしくはLTEによる通信機能を搭載し、クラウド連携による健康管理機能を備える。血圧や脈拍、体重などの測定データ(一部データは入力が必要)と、マッサージで得た体のデータをクラウドで管理することで、健康管理ができるIoT(モノのインターネット化)マッサージチェアなのだ。蓄積した数値を基に、大きな変化が表れたときに通知したり、測定結果に基づいたアドバイスを表示したりする。
開発にあたっては病院とも連携。将来的には蓄積されたデータと検査キットなどを組み合わせた人間ドックのようなサービス(有償)も予定しており、詳細を検討中だという。
「ルピナス」のもうひとつの特徴が、世界初となるAIを搭載したことだ。椅子に座ってコースをスタートさせると、まずセンサーが動作して、指圧点を自動的に検索。その後、筋肉のコリ具合などを感知して、最適な強さで施術する。
「体の状態にあわせて、施術する力をAIが調整します。いちいち強さを微調整しなくても、いつもと同じもみ応えが得られます」(ファミリーイナダ)
販売の仕方も従来と異なる。上位モデルの「ファミリーメディカルチェア ルピナス FMC-LPN10000」の場合。単体での通信回線を内蔵したLTEモデルが月額8900円(税別)、Wi-Fiモデルが月額7900円(税別)の60回払いとなっており、本体価格は設定されていないのだ。メーカーによると「ネットワーク機能を利用するため、月額制を採用した」という。LTEモデルはWi-Fi環境などがない場所でも通信ができるのが利点だ。
チェアの形状やマッサージ用のエアーセルの数などが異なる下位モデルの「ファミリーメディカルチェア ルピナス ライト FMC-LPN9000」は、Wi-Fiモデルのみで月額4900円(税別)60回払いで購入できる。もちろん、リースではないため、60回の支払いが終わった後は、ネットワークの利用料金の支払いのみとなり、使い続けることが可能だ(LTEモデル月額980円、Wi-Fiモデル月額480円を予定)。
60回払いの期間となる5年間は、メーカー保証も付いてくる。可動部品が多いマッサージチェアでの長期保証は、「ほとんど前例がない」(ファミリーイナダ)という。
実際に「ルピナス」に座ってマッサージを受けてみた。「ルピナス」は空気で膨らむことで手足などを圧迫する「エアーセル」を182個搭載。腕だけでも、手首から肘まで、細かく、心臓に遠い部分から順番にゆっくりと圧迫してくれる。また、背中のもみ玉は、左右で独立して動く「8軸AIメカ」を搭載。筋肉の硬さに応じて自動調整しながらもんでくれるので、快適な強さでもみほぐしてもらうことができた。
ゆっくりと伸ばすストレッチ効果を重視
マッサージチェアというと、「もむ」「たたく」というイメージを持っている人も多いだろう。しかし、これは筋肉のコリやハリが起きた後の対処法。最近のマッサージチェアは、筋肉をほぐして、コリやハリを起きにくくする機能を持つ。
フジ医療器の「サイバーリラックス マッサージチェア AS-1000」は、マッサージ効果を高めるとともに、コリやハリが起きにくくするための「パワーストレッチ」機能を搭載。首や背、膝、そして足などを伸ばしたり、押し上げたりすることで、筋肉を和らげてしっかりとほぐす。
マッサージコースの前に、パワーストレッチ機能でしっかりと筋肉をほぐしておけば、体から緊張がとれるので、マッサージの効きも良くなるという。マッサージコースも業界最多となる21種類を搭載。ほぐしたい位置をしっかりマッサージできる。ゆっくりと体を伸ばす「スローストレッチ」機能や、ゆっくりとした速さで、しかもしっかりと力を入れてもむスローマッサージもできる点も、他にはない特徴だ。
この「AS-1000」にも座ってみたが、ストレッチコースを受けると、体がゆっくりとリラックスしていく気がした。説明を聞きながらでなかったら、そのまま眠ってしまっただろう。それぐらい、ゆったりとした気分になれた。
前年比1.8倍の成長を続けるシートマッサージャー
これまで紹介した2機種は、各社のフラッグシップモデルだ。調査会社GfKジャパンの市場調査でも一台一台の販売価格は上昇しており、30万円超の各社のフラッグシップモデルが売れ筋となっているという。
最新のマッサージチェアは、単なるマッサージ機ではなく、健康を維持するための医療器具ともいえる存在に進化している。値段は決して安くないが、マッサージ店に頻繁に通うことを考えると、いちいちお店に行く必要もなく、お風呂上がりなどのタイミングでストレッチやマッサージが受けられるマッサージチェアならではの長所も見えてくる。
最新モデルは家電量販店で試用することができる。体の疲れやコリに悩んでいるなら、まずは最新のマッサージチェアを一度試してみてはいかがだろうか。
だが、どうしても本格的なマッサージチェアの導入が難しいという人のために、もう1つ、最近人気のマッサージ機を紹介しよう。
マッサージチェアを購入するときにハードルとなるのが、置き場所と搬入だ。リクライニング構造などを加味すると、マッサージチェアを設置するには、それなりに広い空間が必要となる。しかも、本体は50kg以上あるものが多いため、置く場所を簡単に移動することもできない。
そこで近年、注目を集めているのが椅子やソファの上に設置して使うマッサージ機「シートマッサージャー」だ。椅子やソファの上に設置して使い、使わないときは取り外して収納できる。2013年に「ドクターエア 3Dマッサージシート」が登場したことを皮切りに、多くのメーカーが市場に投入してきた。
ドクターエア 3Dマッサージシートはコンパクトなボディーながら、もみ玉の45センチの可動域を確保し、しっかりと首から腰までを刺激してくれるのが特徴。また、立体的な縦回転を加えた「3Dもみ玉」がしっかりとコリをほぐしてくれる。
この手軽さと本格的なもみ心地により、累計出荷数80万台(2016年5月31日現在)を超えるヒットになっているのだ。
フジ医療器など本格派のマッサージチェアを手がけるメーカーも、シートマッサージャー市場に参入している。GfKジャパンの調査によると、販売台数は前年比1.7倍に膨らむ(2016年1-8月の販売台数)など、一気に普及しているという。
体の疲れやコリに悩んでいるけれど、最新のマッサージチェアは大き過ぎる、または高すぎるという人はシートマッサージャーの導入を検討してみてはどうだろう。
(デジタル&家電ライター コヤマタカヒロ)
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