ゴルファー注目、包帯パンツ やみつきの着心地よさ
肌理(きめ)が決め手の高額インナー 女性にも人気
伸縮性抜群
「もう『包帯パンツ』しかはけませんね」。都内の男性会社員(42)が愛用する下着は何とも不思議な名前。「伸縮性がすごく、はき心地が快適で、ゴルフのプレー中もズレない」。仲間に教えたところ「どこで買えるの?」と話題になり愛用者も増えた。
この男性用下着、名前の通り素材は包帯生地だ。メッシュの編み地特有の通気性や伸縮性が売り物で、ログイン(東京・渋谷)の野木志郎社長が開発した。通販会社勤務を経て、ワコールの女性用ショーツの縫製を請け負う父の会社を継いだ。「2002年のサッカーワールドカップ(W杯)を見に行った時、アスリート用パンツを作ろう、とひらめいた」
一般的な男性用パンツは、激しい運動をすると汗で不快になるうえズレてしまう。その難題を克服できるのが風合い抜群の包帯生地だった。商品開発に際しては生地の耐久性を高めると同時に、「肌当たりに違和感があるものは徹底的に排除した」。尻のカーブに沿うデザイン。縫い目の凹凸をなくす工夫。通常は背中側に付いてチクチクする洗濯表示は、パンツ正面につけたブランドロゴの裏側に。
第1号の商品は2007年に完成した。一般的なパンツに比べて通気性は約7倍。ユナイテッドアローズや伊勢丹新宿本店が「面白い」と置いてくれたが、当初は鳴かず飛ばずだった。
転機は08年に発売した新シリーズ「甲冑(かっちゅう)パンツ」。派手な甲冑のプリントは歴女ブームも手伝って注目を集めた。巨人軍の選手がこれをはいて日本一になったという報道も追い風になり、昨年始まった米歌手マドンナのワールドツアーのステージでも使われた。
包帯パンツは現在、形は20種、色・柄はそれぞれ20種ほどで5サイズを展開。価格は税別2800円~8800円ながら年間10万枚を売る。スポーツ選手やミュージシャン、アクティブな中高年の増加を映して、50代以上の男性顧客の伸びが目立つ。病院の入院患者の支持も高い。ウエストゴムなしのタイプは腹圧がかからない利点があるからだ。
肌触りの良さの追求は、着る人を様々な「ストレス」から解放することにつながる。例えば都市生活者を中心に増えている、アレルギーを気にする人にとっては、肌に負担をかけない生地のキメ細やかさ、滑らかさはこだわりたいところだ。
最近のファッション事情も「肌にフィットする着心地のいいアイテム」の需要を生んでいる。一つは3年ほど前から台頭してきた「エフォートレス(肩の力が抜けた)ファッション」のトレンド。とことんリラックスできる衣服を好む消費者が、肌にストレスを感じないインナーなどを求めている。
体形きれいに、タンクトップ
一方、中高年同様、アクティブな働く女性の増加も、体の動きに素直にフィットする素材・アイテムの人気につながる。その代表格が米VINCE(ヴィンス)のタンクトップ「フェイバリットタンク」(税別8000円)だ。ジャケットやブラウスのインナーに。ニットとの重ね着に。白や黒の定番色のほか、グリーンやネイビーなど季節カラーもそろえる。
素材は軽くてしなやかなペルー産のピマコットン。3大高級綿の一つとして知られる超長綿で、敏感肌の人でも着やすい。都内の銀行に勤務する30代女性は5枚を購入。「肌触りが断然いいので、新色が出たら買い足す。鎖骨が見える胸元が女っぽく、体形をきれいに見せられる」
10年から輸入販売する東レ・ディプロモード(東京・港)によれば「一度着て良さを知ったら手放せない、という女性は多い」。直営店は6店、累計2万7000枚を販売した。春夏物はピンクやオレンジも投入。デザインも2型に広げ、税別1万円に価格を改定する。
近年増えている本格的な女性サーファー。その人気を集めているのが米アウトドアブランド、パタゴニアのビキニ「ソリッド・ナノグリップ」のトップ(8100円)とボトム(6804円)だ。今年春夏に発売し、ほどなく完売した。
水にぬれるとグリップ力が高まる特殊繊維を裏地に使い、背中でストラップをクロスさせたデザイン。独特のぬめり感があり、ウエットスーツの中に着ても水着のままでも、ずり落ちないうえ肌触りがいいと評判だ。
パタゴニア日本支社にとってもここまで着け心地に反応する客が多いのは意外だった。水着は主力商品ではなかったが、秋冬には投入数を増やす計画だ。
(企業報道部次長 松本和佳)
[日本経済新聞夕刊2016年10月8日付]
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