不動産市場はバブルにあらず 金利動向に注目不動産コンサルタント 長嶋修

2016/10/5

不動産リポート

中古マンションの市場価格は調整局面入りしたという見方もある(東京都中央区)
中古マンションの市場価格は調整局面入りしたという見方もある(東京都中央区)

昨今、不動産市場に過熱感がみられること、新築マンションの発売戸数の少なさや契約率の悪化などから、「不動産市場はミニバブル」「近いうちに崩壊する」といった論調が散見されるようになった。しかし、筆者は不動産市場はバブルといえるような状況ではないとみている。

不動産経済研究所によれば2016年8月の首都圏新築マンション発売戸数は前年同月比24.7%減の1966戸。契約率は66.6%と、好不調の目安とされる70%を3カ月連続で下回った。

年初からの円高で外国人による買いが一巡したほか、行き過ぎたタワーマンション節税について金融庁が警鐘を鳴らしたことなどが市場にブレーキをかけた。

そもそも12年12月に安倍晋三政権に変わって以降、上昇を続けたマンション価格にユーザーが追いつけなくなったとみられることが大きい。一部販売現場では、必要に応じて価格値引きの提示が行われている。

しかしよく考えてみれば、リーマン・ショック前のプチバブル期には首都圏で年間8万戸を上回る供給が行われていたが、現在は4万戸を大きく下回るペースで、半減以下だ。

また、新築マンション市場はリーマン・ショック以降、大手不動産会社のシェアが増大し「都心・駅近・大規模」といった高額マンションの販売が主流である。大手系は市場が軟調と見れば供給調整を行う体力があるし、一定の値引き販売を行ったとしてもそれが経営に与える影響は限定的だ。

07~08年のプチバブル期は、1990年代後半に上場した新興・中小のデベロッパーが台頭しており、発売されるマンションは郊外へと伸びていった。首都圏では横浜から相模原、八王子、川越、春日部、柏、千葉などを結ぶ環状の国道16号を超えた郊外でマンション販売が行われたのは、90年のバブル期以来のことだった。

ここに米サブプライムローン問題に端を発するリーマン・ショックが到来、体力のない中小デベロッパーがバタバタと潰れていった。今回は、たとえ世界的な経済・金融危機や大規模な災害が訪れたとしても、リーマン・ショック級の大きな破綻劇が起こる可能性は限定的だ。

都心3区(千代田区・中央区・港区)の中古マンション市場も一服感が漂う。8月の在庫数は3907件と、新規登録数が増加している割に成約数は伸びていない。

日経平均株価と連動性の高い都心3区の中古マンション市場の平方メートル当たりの成約単価は、株価ほど調整しておらず、今後やや弱含みそうな展開だ。市場が一定の天井に達しているのは間違いない。

今後の展開は結局、アベノミクス次第である。第一の矢(金融緩和)、第二の矢(財政出動)に続いて、実効性のある成長戦略や規制緩和を描けるのか。家計の給与所得が上昇し、家賃支払いや住宅購入のパワーが増大するのか。不動産市場が求めているのも株式市場が要請していることとほぼ同じである。

短期的には金利動向に着目したい。住宅ローン金利の上昇は、同じ支払額で借り入れられる融資額が減少するため、不動産市場にマイナスの影響を与える。

例えば、住宅ローン3000万円を期間35年、金利1%で借りた場合、毎月の支払額は約8万5000円。しかし、仮に金利が2%になれば毎月の支払額は約9万9000円と1万4000円も増加する。毎月の支払額を変えずに借り入れるとしたら、借入額を2550万円と450万円も減らさなければならず、購買力がそれだけ弱まる。

今年8月のフラット35の最低金利は0.9%(返済期間21年以上35年以下、融資率9割以下)、9月に入って1.02%(同)とやや上昇した。その後、10月は返済期間20年以下のプランは0.01%低下したが、21年以上のプランは0.04%上昇しており、金利低下には一定のブレーキがかかっている。足元では急上昇する要素は見当たらないが、金利動向には要注目だ。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

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