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野外のネコは完全排除すべき? 米で大胆意見に反発も

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

野外を自由気ままに歩き回る飼いネコやノラネコが、鳥をはじめとする野生生物にとって多大なる脅威になっているとして、これらの「外ネコ」を完全に排除すべきだという大胆な意見がある。

その意見を代表するのが、このほど米国で発行された書籍『Cat Wars(ネコ戦争)』(Princeton University Press)だ。著者はスミソニアン渡り鳥センター長のピーター・マラ氏と作家のクリス・サンテラ氏。どちらかというと学術専門書に近い内容で、野外にいるネコを捕まえて避妊手術を施してから野生に戻すという、米国で現在広く行われている活動を批判し、根本的な問題解決を図るにはあらゆる手段を講じるべきと訴える。ネコの数が増えすぎて画期的な打開策もない現状では、安楽死をはじめあらゆる選択肢を検討すべきというのだ。

これが、一部のネコ保護活動家たちを激高させている。

「あらゆる手段で排除」の意図

本書は冒頭で、19世紀後半にニュージーランド沖のスティーブンス島で、人が持ち込んだネコがその島固有の希少な鳥スティーブンイワサザイを絶滅に追いやったとされるエピソードを紹介し、「これまで多くの野生生物保護家が抱いてきた疑念を裏付ける科学的証拠が次々に上がっている。野外を自由に歩き回るネコたちが、膨大な数の鳥や野生動物を殺しているという事実だ」と書いている。

「保全生態学の観点から、最も望ましい解決法は明らか。あらゆる手段を講じて、外ネコを野外から完全に排除することだ」と、著者らは主張する。

外ネコとは、著者らによると、野生化したネコ(野ネコ)だけでなく外飼いのペットを含む全てのイエネコのことをいう(柵に囲まれた庭から出ないネコや、その他何らかの方法によって広範囲に出歩くことのないネコを除く)。ただし、外ネコのあまりの数の多さから「あらゆる手段を講じて」というのが現実的ではないことも理解した上での発言だ。

そうだとしても、この一文に猛反発する人々は少なくない。

米コロラド大学の生態学名誉教授マーク・べコフ氏は米ハフィントンポストに寄稿して「著者らは、穏やかな方法でネコたちを取り除こうというのでも、安楽死を推奨しているわけでもない」と書いた。

「あらゆる手段を講じて」と聞いて何を想像するかとべコフ氏が読者たちに尋ねたところ、「わなを仕掛ける、毒を盛る、殴る、銃で撃つなど様々な答えが返ってきた。科学の名のもとに暴力がまかり通るようになるのではないかと恐れる人々が多かった」という。

一方、著者のマラ氏はナショナル ジオグラフィックに対し、動物たちの非人道的な扱いを奨励しているわけでは決してないと説明する。

「野ネコは保護して里親を探すか、アニマルシェルター(欧米に多い、野ネコや捨てネコなどの収容施設)に入れるのが理想ですが、里親も見つからず、シェルターにも空きがなかった場合、安楽死させるしか方法がないでしょう。マスコミは私がまるで殺人鬼であるかのように書き立てていますが、既にこれを実行しているシェルターはたくさんあります。昨年も、財源や人材不足で数百万という動物が安楽死させられました」

「最優先課題は、野生生物へ様々な影響を与えるネコを野外から排除することです」。ただ、今すぐに大量安楽死を実施すべきだというのではなく、徐々に世間を啓発し、様々な方法で外ネコの数を減らしていくべきだとマラ氏は言う。

愛護団体の主張

野ネコの保護活動を続けている「アリー・キャット・アライズ」の創立者で会長のベッキー・ロビンソン氏は、「人々の不安をかき立て、ネコを悪者に仕立て上げようとする」人々は昔から存在し、この本もそのひとつであると批判した。

『Cat Wars』の著者らによると、ネコは人間によって外部からもたらされた捕食動物で、鳥やその他の小動物に深刻な脅威となっているという。特に、島などの閉鎖された空間や、開発などによってすでにその土地固有の野生生物が脅かされているような地域で影響が大きい。さらに、ネコは狂犬病やトキソプラズマなどの病気を媒介し、公衆衛生に対するリスクともなりうる。

「少数派だが声は大きいネコ愛好家」たちが、安楽死や外ネコの強制排除に強く反対していると、本書は批判する。

一方、動物愛護団体である米国ヒューメイン・ソサイエティーのブログには、『Cat Wars』に反論する記事が公開されている。その中で同団体は、一部の外ネコが野生生物にとって脅威となっていることは認め、野ネコの数を減らすことには賛同しているが、「不幸なことに、本書は両サイドの共通の立場に焦点を当てるのではなく、痛烈な批判に終始している」と指摘した。

また、米国では狂犬病に感染した動物を厳しく管理しており、ワクチンによる対応も整っているため、人間への感染は極めてまれである(インドでは医療体制が十分でないことから、狂犬病はいまだに深刻な問題として残っている)として、本書が公衆衛生のリスクを強調し過ぎであると主張。あわせて「外ネコが鳥やその他の野生動物にとって最大の脅威というわけではない」と著者らが認めている部分も指摘した。

鳥類とネコ、それぞれの保護団体が協力して問題解決を図ろうとしている例もある。ポートランド・オーデュボン協会とオレゴン・フィーラル・キャット連合は共同で、ネコが野生動物に及ぼす影響を人道的に抑えようという取り組みを進めている。

去勢して放せばそれで十分なのか

米国では長い間、野ネコの数を減らす方策として、捕獲して去勢手術を施し、放すという活動を続けてきた。この活動は実際に効果が表れていると、野ネコ保護活動家のロビンソン氏は言う。「野ネコをかき集めて全て殺すという方法はうまくいかなかったのです」。ネコは繁殖が速く、一部の地域でいなくなってもすぐに他から別のネコたちがやってくるからだ。全て捕まえようというのは不可能なのだ。

その点は認めつつも『Cat Wars』が挙げるのは、米国の鳥類保護協会や野生生物連盟など多くの保護団体が、捕獲去勢だけでは十分ではないとしてこの活動に反対していること。一例として、ある地域のネコたちを去勢しても、やはり別のネコたちがやってきて数が増えてしまったというイスラエルの研究を挙げている。

また、捕獲去勢の努力が実るには何年もかかり、その間にもネコは野生動物や人間に脅威を与え続けるとマラ氏は主張する。それに、ペットのネコを捨てる人間も後を絶たない。

しかしロビンソン氏は、実際にこの活動のおかげで消滅したネコ集団は多いと反論する。米国で捕獲去勢を実施している地域は600以上。中には、30年続けているところもある。「このやり方は効果を表しています」と、ロビンソン氏。

ネコと生物多様性

今のところ、『Cat Wars』に対する反応は真っ二つに分かれているようだ。2013年にナショナル ジオグラフィック誌にヨーロッパの渡り鳥がさらされている脅威について寄稿した小説家のジョナサン・フランゼン氏は、『Cat Wars』を高く評価する。

「マラ氏とサンテラ氏の本は、大いに歓迎したいです。外ネコが生物多様性へ与える影響について考えようという人はとても少なく、それをオープンに話そうという勇気のある人はさらに希少です」

米国ヒューメイン・ソサイエティーは、飼いネコは外に出さないという意見には賛同するが、「あらゆる手段を講じて」それを押し付けることには反対という。そんなことをしなくとも、過去数十年間訴え続けてきた教育プログラムが既に大きな効果を表しているとの主張だ。

米国ペット用品協会が実施したアンケートでも、完全室内飼いのネコが1970年には約20%だったが、2012年には65%前後にまで増えたことがわかっている。また、今では米国で飼われているネコのほとんどが去勢手術や避妊手術を受けている。

即効性があるわけではないが、ネコを完全室内飼いにすることと、去勢または避妊手術を受けさせるという昔ながらのアドバイスが効果を上げていると、ネコの保護活動家たちも言う。マラ氏も本の中でこれらの努力を評価しているが、一方で野生生物や人間への脅威がとりわけ深刻な地域では、安楽死という選択肢も完全に排除すべきではないともいう。ニュージーランド政府が2050年までに外来の捕食動物を根絶させる方針を打ち出したばかりだが、同様の政策を他でも実施することが究極のゴールだという。

ロビンソン氏は、安楽死には反対の立場を崩さない。そして、「『あらゆる手段を講じてネコを野外から排除すべき』という言い方は間違っていると思います。これでは、暴力を奨励しているのと同じことです」と繰り返した。

(文 Jason Bittel、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2016年9月26日付]

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