新Apple Watchを分解 防水性能アップで難儀

Apple Watch Series 2を分解した
Apple Watch Series 2を分解した

iPhone 7/7 Plusが発売された2016年9月16日、米国のベンチャー企業iFixit(アイフィックスイット)が東京で、世界に先駆けて分解作業を行った。その様子は「iPhone 7『分解の儀』 職人の技を見た」でお届けしたが、まさにそのとき、隣の机ではApple Watch Series2を分解していた。

大きく進化したApple Watch

Apple Watchも今回は大きな変化を遂げている。

一番の変化は、防水性能が着用したまま水泳ができるレベルまで高くなったこと。Apple Watchは2015年に登場した最初の製品では「水深1メートルの水に30分間水没しても、水が浸入しない」レベルの防水だった。これは今回のiPhone 7/7 Plusと同レベル。水の中で激しく動かすと水没の恐れがある。それに対してApple Watch Series 2の防水性能は「50m防水」レベル。水泳など、浅いところであれば水に入れたままの運動も可能なレベルだ。

また、GPSが内蔵された、FeliCaに対応した、など機能も充実した。あの小さなきょう体にどのようにこれだけの機能を入れているのだろう。

Apple Watchを分解するのはiFixitテアダウン・エンジニアのアンドリュー・ゴールドバーグ氏。iPhone 7 Plusを分解したジェフ・ソヴァネン氏以上に、黙々と作業に取り組むタイプだ。いつの間にかApple Watchが箱から取り出され、最初の撮影が始まっていた。

Apple Watchの箱。取り出すところは見られなかった
まずは外観を撮影

黙々と作業するアンドリュー・ゴールドバーグ氏

いきなり巨大ドライヤーを取り出す

さて、分解に取りかかる。どうやって開けていくのだろうと思って見ていると、取り出したのが、巨大なドライヤーのような「ヒートガン」だ。これをApple Watchの画面に向けて1、2分吹き付ける。「どれくらい熱くなるの?」と聞いたところ、「持てないくらい、相当熱いよ」とのこと。

ヒートガンで表面を熱する

次に取り出したのはナイフ。「まさかガラスをやわらかくして切ってしまうのだろうか」と想像したが、それは外れ。ガラスと本体との間にナイフの刃を挿し込んでいるようだ。

ナイフの刃を挿し込む

だが、どうも思ったように剥がれないらしく、再度ヒートガンで熱し始めた。先ほど以上に念入りだ。そしてナイフで再挑戦。やっと、すこしずつ刃先が間に入り込んだようだ。ナイフだけでなく、プラスチックのオープナーも使ってようやくディスプレーと本体とに分かれた。後から聞いたところによると、防水性能を向上させるために、かなり接着剤が強固なものに変わったようだった。

ようやく刃が入り始めた
プラスチックの「ピック」も併用して開ける

ディスプレー側にFeliCaのチップ搭載

3本のケーブルで本体(下)につながれた画面側(上)

ディスプレー側は3本のケーブルで本体側につながっている。この作りは前バージョンとはだいぶ違うらしい。今回のケーブルは抜き差し可能なコネクターを使っているので、修理はこれまでのものより楽になりそうだ。

ケーブルを外した画面側。右上がFeliCaに使うチップ

ケーブルをはずすと、中に様々なチップが載っている。分解時にはチップの役割までは分からなかったが、後からのiFixitの分析によると、一番右上に見えるチップがFeliCaの機能を実現するNFCのチップなのだそうだ。

存在感大きなバッテリーとタプティック・エンジン

本体側の中央にあるのがバッテリー。その上に「TAPTIC」の文字が見える

本体側には大きく2つの部品が見える。大きい方がバッテリー、小さい方がiPhone 7 Plusにもあったタプティック・エンジンだ。振動を使ってユーザーにフィードバックするための部品だ。小さなApple Watchの中で、この2つの部品の存在感はかなりのものだ。

バッテリーはiPhoneと同様、接着剤で固定されており、それを丁寧にはずしていく。形といい、大きさといい、粒タイプのガムにそっくりである。

バッテリー。容量は273mAh
右が感圧タッチ(Force Touch)のセンサー

バッテリーの後は、本体の周囲に付いている、枠のような部品を取り外す。これは防水関係ではなく、画面を押すことに反応する「感圧タッチ」のセンサーだ。

そして、次にタプティック・エンジンだ。タプティック・エンジンの振動する部分は金属のケースにくるまれている。これは振動を増幅する効果を狙ったもののようだ。

タプティック・エンジン。左上のメタルケースに入っている
アンテナ

タプティック・エンジンを外した後、その周囲から取り出した小さな部品がアンテナだ。今回はGPSを内蔵したことで、アンテナの形も前バージョンから変わっているという。

小さくて薄い部品が続く。次はマイクとスピーカー。この中ではスピーカーは比較的大きく、外部に露出するため周囲には防水用のシールドも付いている。また、今回のApple Watchは、スピーカーの内部にまで水が入ることを想定している。水泳などのアクティビティーの後はスピーカー自体を振動させて水を切るという、面白い仕組みを備えているのだ。

マイクとスピーカー。裏側になってしまった
スピーカーのシールド。アングルが悪かったのでパソコン画面に映ったカメラの映像を撮影した

Apple Watchの心臓部「S2」を取り出す

アンドリューがApple Watchを開けるのに使ったギターのピックのような道具をはさみで切り始めた。小さな長方形の形に切っていく。

やおらツールを作り出すアンドリュー
「S2」を取り出す

何に使うのかと思ったら、本体に挿し込んでボードを浮かしていった。挿し込む場所が狭いので、細いツールが欲しくなったようだ。

そうして取り出したのがApple Watchの心臓部であるS2だ。SiP(System in Package)と呼ばれているように、一つのチップの中にさまざまな機能が搭載されている。これ一つが、iPhoneのロジックボードに相当すると言っていいだろう。ただし、S2は一つのチップの中に機能が入っているので、これ以上ブレークダウンして調べるのは難しい。

「S2」表側。アップル・マークが入っている
「S2」裏側

というわけで本体の分解はこれで終了。最後に裏側からLEDの部品(心拍数の計測に使う)を取り出した。

心拍数を計測するのに使うLEDと裏蓋

iPhone 7 Plusと同時に始まったApple Watch Series 2の分解は、iPhone 7 Plusよりも1時間ほど早く終了した。iPhone 7 Plusと比べて部品数が大幅に少ないのが早く終わった理由だ。細かい作業が多いせいか、分解自体は容易ではなく、アンドリューの指先に力が入っている様子がしばしば見受けられた。

分解した部品。中央右は「デジタルクラウン」のエンコーダーなどが集まった部品

スマートフォン以上に、見る機会がないスマートウォッチの分解は見応えがあった。iFixitのキットがあっても、自分で分解しようとは全く思わないが……

(日経BP社 松原敦)