家計

もうかる家計のつくり方

「家計簿はつけられない」という人への処方箋 家計再生コンサルタント 横山光昭

2016/10/5

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 「毎月先取り貯蓄をしているのに、お金がたまるどころかむしろ、貯蓄が減っています」と話すのは、Mさん(36)。毎月必ず1万円を「貯蓄分」として確保しているのに、「足りなくなると使っているみたい」と他人事のように話しています。

 Mさんは外資系企業に勤める会社員のご主人(39)と3歳の長女の3人家族で、現在は専業主婦です。「子どもが生まれた時から、教育資金のためにと先取り貯蓄を始めたものの、たまりません。今後を考えると本当はもっとためなくてはいけないのですが……」と話します。

 ご主人の手取りは34万2000円もあるのに毎月赤字。Mさんは何にいくらお金を使った結果、赤字になったのかわからず、どう修正していいのかもわからないといいます。

 「家計簿はつけていません。スマートフォンのアプリやエクセルも試しましたが続けられませんでした」とMさん。家計状況を聞いてみたところ、家賃や水道光熱費、通信費など銀行口座から引き落とされる費目については、通帳を見ながら教えてくれましたが、口座などに支払いの記録が残らない費目については大ざっぱな金額さえも出てきません。

 1週間にどのくらい食費を使っているのか見当をつけたり、1カ月に購入する衣類の数から金額を予想したり、振り返りながら金額を出してもらい、何とか家計表を埋めました。

 ボーナスは夏、冬それぞれ40万円ほど出ていますが、家計の補填に充てられるため、ほとんど残っていません。毎月の赤字をなくすことができれば、せめてボーナスは貯蓄に回せるはずです。まずは毎月の赤字を解消することを目標に、支出を思い出しながら改善策を検討しました。

 まずは、生命保険料と通信費を見直しました。ここが下がると、家計の支出を安定的に削減できます。

 生命保険料が月4万6000円と高かったのは、無料の保険相談窓口で加入した保険の保障内容が過剰だったことと、お子さんの学資保険料が毎月2万円と高かったためです。保障内容を見直し、学資保険はやめることにしました。

 というのも、ボーナスで補填しても不足する月々の赤字を補うために、保険の契約者貸付で上限いっぱいまで借り入れていたからです。利息がかかるのはもちろんですが、このままでは保険金や給付金は支給されないため、意味がありません。

 代わりに教育資金のための口座を作り、積立預金をすることにしました。ジュニアNISA(少額投資非課税制度)なども検討しましたが、投資についての知識がなく、目の前の貯金もないことから、今は始めないことにしました。

 通信費は格安スマホで対応しました。家電量販店に行くと大きなコーナーが設けられており、端末も様々な種類があります。2万円ほどの端末を夫婦それぞれが貯蓄から購入しました。主に自宅のWi―Fiを使うため、契約プランもそれぞれ月2000円ほどで済みます。

 さらに、ご主人が小遣いの中の昼食代をなくし、家計に戻そうと提案してきました。ご主人の小遣いは3万5000円。年齢や収入を考えると、むしろ少ない額ですが、ご主人はもともと物欲もなく、お金を使わない方なので減らしても大丈夫だと言います。昼食代には現在、2万円かかっているそう。全額をもらうのは申し訳ないので、半分の1万円を家計に入れてもらい、簡単でも毎日お弁当を作ることにしました。作れないときは家計から500円の昼食代を出すというルールにしました。

 Mさんは子どもが公園に通うようになってからママ友ができ、外出が増えたことで家事も家計のやりくりも十分にできなくなってしまいました。ですが、朝の落ち着いている時間を利用し、簡単なお弁当は毎日頑張って作りました。

 結果、食費は最初に聞き取りをした金額と変わらない範囲でやりくりできました。夫は昼食代がかからなくなったため、自由に使える小遣いが増え、さらに飲み会代などの交際費も減ったそうで、子どもに簡単なお土産を買ってくるなどの余裕が生まれました。

 家計全体の削減額は合計6万円ほどで、収支は5万1000円の黒字になりました。

 この状況を維持するためには、Mさんは費目別の支出金額をしっかり把握しておく必要があります。そうでないと、支出の状況が乱れたときに修正ができません。

 しかし「家計簿は付けられない」という先入観があるようで、今から記録を始めるのは難しそうです。

 そこで、「消費」「浪費」「投資」と書いた3つの箱とメモ用紙、ペンを準備し、買い物のたびに支出の意味を考え、消費、浪費、投資に分けてレシートを箱に入れてもらいました。レシートがないときはメモに書いて仕分けます。そして、週末などにご主人と一緒に集計してもらいました。困ることがあればその都度ご連絡いただき、モチベーションを維持してもらいました。

 これによって支出を意識することが習慣化し、無駄遣いのない家計を維持しつつ、貯蓄していけるようになりました。ボーナスから補填することがなくなったので、3分の1程度は必要なものを買う予算にし、残りの3分の2はためていくことにしました。合計すると年間の貯蓄可能額は120万円ほどになります。

 Mさんのように、収入から最初に貯蓄分を確保しているにもかかわらず、お金がたまらないというのは非常に多い悩みです。貯蓄がなくなってしまう原因を探るためには支出を把握しなければいけないし、支出削減にも取り組んでほしいものです。

 家計簿をつけるなどの記録ができないのであれば、どのように家計を把握するのか工夫する必要があります。そしてそれを実践し、習慣化していくことが、地味ではありますが家計改善には効果があるのです。

「もうかる家計のつくり方」は隔週水曜更新です。次回は10月19日付の予定です。
横山光昭(よこやま・みつあき) マイエフピー代表取締役。家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー。お金の使い方そのものを改善する独自のプログラムで、これまで8000人以上の赤字家計を再生。書籍・雑誌の執筆や講演も多く手掛け、「年収200万円からの貯金生活宣言」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)をはじめとする著書は累計99万部。近著は「『老後貧乏』はイヤ!」(日本経済新聞出版社)。

「老後貧乏」はイヤ! 貯められない家計の治し方

著者 : 横山 光昭
出版 : 日本経済新聞出版社
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