ロンドン五輪モデルに持続性ある東京の街づくり目指す森ビルの辻慎吾社長に聞く(下)

森ビルの辻慎吾社長
森ビルの辻慎吾社長

森ビルは東京五輪・パラリンピックが開催される2020年を視野に入れながら東京・虎ノ門の再開発事業などを手掛け、五輪が東京という都市の国際競争力を高めるきっかけになることを示そうとしている。辻慎吾社長が意識するのは12年の五輪開催都市、ロンドンの成功例だ。東京がロンドンに勝つためのヒントなどを聞いた。

――都市の国際競争力を比べると、東京にはライバルが多いようです。

「東京の今後の4年間を考えるうえで参考になるのは、五輪をきっかけにした都市再生に成功したロンドンだ。ロンドン五輪が開催された12年、森記念財団都市戦略研究所が毎年試算している『世界の都市総合ランキング(GPCI)』で、ロンドンは世界で最も強い都市としての評価を獲得している」

――ロンドンの強さはどこにあるのでしょうか。

「交通インフラの改善などによってハード面を強化したのに加え、文化イベントなどを利用してソフト面の魅力も引き上げ、米ニューヨークを抜き、2位から1位に浮上した。ここで大切なのは世界トップの『ロンドンは1日にして成らず』ということだ。ロンドンは12年の五輪開催に合わせて、長い年月をかけて都市の競争力を引き上げていった。東京は15年のGPCIでは4位にとどまっているが、今から周到に準備し、ロンドンのような都市づくりを進めていかなければならない」

――東京五輪後には東京の都市再生の勢いが鈍るとの見方もあります。

「ロンドンは五輪後の13年から15年までGPCIでトップを維持している。五輪をきっかけにした都市再生が一過性のものに終わっていない。これは見落としてはならない点だ。東京もロンドンのように五輪を契機に都市の総合力が長期的に底上げされるような街づくりが必要だ。国際競争力を強化するための本格的な都市整備を推進すれば、グローバル化を急ぐ日本にとってプラスの効果が大きいだろう」

――20年までに東京が進化するためには、どんなアイデアがありますか。

「五輪・パラリンピックはセキュリティーなどの面で新しい技術を入れやすい。20年に向けて、人工知能(AI)と都市はどう結びつくのか、バイオ技術と都市はどうなるのか。こういうテーマについて、米マサチューセッツ工科大学(MIT)などの大学、国内外の先端企業と共同研究や共同実験をしようと動いている」

――具体的にどんな実験を始めていますか。

「当社の六本木ヒルズや虎ノ門ヒルズでは実証実験ができる。例えば、六本木ヒルズ全体でセキュリティーカメラの実験をして、新しい技術を試している。20年が節目になって、こうした技術が進歩しないといけない。20年に向けて、東京全体が新しい(技術や情報の)発信の場になるべきだ」

「今後、AIが発展すると、AIに関する倫理観やルールができあがっていくだろう。それが都市で生活する人々にどのように関わるのか。まずは実験を通じて最前線で起きていることを見て、都市にどのように影響するのかを見極めたい。情報技術(IT)が社会を変えたといっても、20年ぐらいかかった。だが、AIやバイオはもっと速い。東京五輪のころには、相当に変わっているだろう」

(聞き手は日経産業新聞副編集長 前野雅弥)

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