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仕事ができる、という言葉から、あなたはどういう人をイメージするでしょう?

たとえば、次の2人の営業課長から、あなたが考える「仕事ができる人」を選んでみてください。

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Aさん:「自分に売れないものはない」と豪語する営業のスペシャリスト。いつも社内トップの売上を達成しており、お客様からの信頼も厚い。その実績で課長に昇進。ただ、あまりにも独特すぎて、社内でだれも真似ができない。また本人の性格的にも、指導自体があまり好きではない。
Bさん:「みなさんが売れるようにサポートします」と丁寧に話すマネジャー。個人の営業成績は平均的だったけれど、社内の多くの部署に顔が効く人あたりの良さで昇進。課長昇進後はマネジメントに特化して、営業課員が働きやすいように他部署との連携をスムーズにしたり、受注書類作成などの業務手順を改善したりしながら、部署としての業績を上げ続けている。ただし個人としてはいつも何をしているのかよくわからない。

Aさんは営業のスペシャリスト。Bさんはゼネラリストという風に区分することができます。そしてこの質問で選んだ答えは、回答する人がどちらのタイプを目指したいのか、を示しているのではないでしょうか。

まず前提として、これらのどちらか一方がもう一方より優れているわけではない、ということを覚えておいてください。個人として素晴らしい力を発揮してくれる人も、組織としての力を高めてくれる人も、どちらのタイプも組織には必要だからです。

ではこれからの働き方を考えるとき、どちらのタイプを目指したほうが出世しやすいのでしょうか。

課長まではスペシャリストの方が出世が早い

あなたがもし、まだ20代あるいは30代前半の年齢であったり、自分ができることを一言で言えない状況であったりすれば、スペシャリストを目指すべきです。

スペシャリストというのは専門性をもって結果を出す人たちです。だから組織としての責任を任されていない状態で、目に見える結果を出しやすいのです。そして目に見える結果は、上司や同僚、後輩や取引先など、周囲の人たちからのあなたに対する評価を高めてゆきます。

「〇〇の仕事なら、彼/彼女に頼めばよい」

そんな評判を広めていくことができれば、キャリアの最初の段階での出世がたやすく実現してゆきます。

自分ができることを一言で言えない、というのはたとえば「今まで総務と経理と営業を経験してきました」としか言えないような状況です。それがなぜまずいのかといえば、あなたに何を頼めば結果を出してくれるのか、ということを理解するのに時間がかかってしまうからです。そして多くの人は、時間がかかってしまうことを嫌います。

特に、前回記事に記したような「入社意識」の強い人は気を付けなければいけません。有名な大企業に就職して、人事の言うとおりに配属先を決められて、目の前の仕事に全力で打ち込んでいる。そこで本当にしっかりと働くことができていれば、3年もあれば自分ができることを一言で言えるようになっているはずです。そうなっていない、ということは、もしかすると人事に便利使いされてしまっているのかもしれません。

自分にできることがわからない場合には、人材紹介会社に登録して、キャリアコンサルタントに相談してみましょう。おそらく的確な一言を返してくれるはずです。

ゼネラリストを目指すべきタイミング

しかし部長以上の役職にまで出世する人というのは多くの場合、Bのタイプ=ゼネラリストです。特に多くの事業を行っている多角化企業や、環境変化が緩やかな業界の企業、あるいは(最近は少なくなりましたが)規制産業などでは、顕著にゼネラリストが出世しやすいようです。

ゼネラリストが出世しやすい企業では、社内にスペシャリストがすでに一定数存在しています。そして彼ら/彼女らがそれぞれの専門性に基づいた成果を生み出していきます。そうしてビジネスが成長していくのですが、スペシャリストはどうしても自分を中心とした軸でだけモノを考えがちです。そこで、複数の専門性をまたがったような検討や意思決定を行う役割が求められます。それが典型的なゼネラリストの役割です。

あなたが今いる会社で部長以上の経営層への出世を目指すのであれば、自分の専門性に固執しすぎるのではなく、どこかで専門性を超えた視点を持てる、ゼネラリストを目指さなくてはいけません。それはできれば課長になった時点くらいが望ましいのではないでしょうか。

課長になりたての時点では、多くの課長が自分自身の専門性に基づき、プレイングマネジャーとして目の前の結果を出すことに全力を尽くしています。そんな中で、視点を高く持つようにすれば経営層に目をかけられやすくなります。おのずと出世の道も開かれることでしょう。

転職を考えるのであれば専門性を手放してはいけない

ただしスペシャリストからゼネラリストへの転換は、あくまでも今いる会社で出世を目指す場合の選択です。

現在、3つの場面で、スペシャリストであり続けることが求められます。

第一に自発的に転職を考える場面。今いる会社に対する何らかの不満から転職を考えるときには、ゼネラリストとして築いた社内ネットワークの大半が役にたたなくなります。現在すでに会社に不満を持っていて転職を考え始めているのであれば、社内ネットワークを構築する時間よりも、専門性を高めるための社外ネットワークに時間をそそぐべきでしょう。

問題は第二の、会社側の事情から転職せざるを得ない場面です。

ゼネラリストとして今いる会社で出世が視野に入っていた人ほど、不意の転職時にアピールできる要素が減ってしまっています。その見極めをどうするか、というとこれは答えがありません。しかし「今の会社で提供している商品やサービスが10年後もあると思いますか?」ということに積極的にYESと答えられるかどうかである程度の予測ができるのではないでしょうか。とはいえ、それに対して正しい予測ができる人は、第一の場面で転職を選ぶのかもしれません。

そして第三の場面は、自律的な働き方を選択するときです。

フリーランスとかセルフエンプロイドという呼び方で一定の労働市場を形成しているこの働き方は、生活の保障については自己責任となりますが、雇用される場合よりも高い報酬を受け取りながら活躍することができます。このような働き方は、専門性を持ったスペシャリストしか選ぶことができません。

言い換えるなら、ゼネラリストは今いる会社での出世を目指す働き方であり、スペシャリストは多様な生き方を手に入れられる働き方だと言えるわけです。

ゼネラリストは、安定を手に入れやすいが、変化に弱い。

スペシャリストは、不安定になりやすいが、変化に強い。

あなたはどちらのタイプを目指したいでしょうか?

平康 慶浩(ひらやす・よしひろ)
セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。
1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年よりセレクションアンドバリエーション代表取締役就任。大企業から中小企業まで130社以上の人事評価制度改革に携わる。大阪市特別参与(人事)。

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