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X JAPANから、ももクロ~BABYMETALへ連なる美学

ビジュアル系の系譜(1)

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NIKKEI STYLE

 日本オリジナルの音楽カルチャーとして、今や世界中にファンが広がっているビジュアル系。10月14~16日には日本最大のビジュアル系音楽フェスが開かれる。ビジュアル系を語る上で欠かせない3バンド、X JAPAN、GLAY、ゴールデンボンバーについて、音楽評論家・市川哲史が"過剰なる美意識"の系譜を3回にわたり考察する。

2015年6月27~28日に幕張メッセでLUNA SEAが主催したビジュアル系(以下V系)フェス「LUNATIC FEST.」は、素晴らしかった。X JAPAN、LUNA SEA、GLAY、BUCK-TICKといった先達レジェンド勢と、DIR EN GREYやMUCCら後継者が勢ぞろいしたのみならず、凛として時雨に9mm Parabellum Bulletに[Alexandros]など思春期にV系の洗礼を受けた非V系若手バンドたちが喜々として参加したことで、単なるお祭り騒ぎではなく、日本独自のロックカルチャーとしての成熟を世間に知らしめるいい機会になったのだった。

この四半世紀<V系と呼ばれたロック>は、「自分が格好いいと思えたらそれで十分」的なわがままな美意識が命。だから「なんでもあり!」とばかりに、音楽性も世界観も詞も音も衣装も化粧もステージも宣伝も演出も、すべてが足し算を重ねて過剰に濃くなった。つまりあの豪快にして緻密な盛り盛りバンド・アンサンブルは、<V系と呼ばれたロック>の先天的な特徴でありスキルであり、そして宿命なのだ。

<悲しい宿命>から<圧倒的なスペック>へ

 しかしオリジナルV系を実体験していない世代にとって、それはとてつもなく新鮮だったようで、観客のみならず若いスタッフや関係者たちですら先達の音圧やら音数やら音量やら技量やらダイナミズムに、いちいち驚きいちいち感動していた。<洗練>という名の軽量ポップミュージックに慣れきった若い耳に、<V系の悲しい宿命>はどうやら<V系だけの圧倒的なスペック>として激しく突き刺さったようだ。

思えばV系には、ドーム公演を満員にしようがアルバムを軽くミリオン売ろうが、業界からも世間からも不当に過小評価されてきた被差別の歴史がある。まあ当該バンドマンたちの、ネタ化必至の<伝説>大量製造マシーンぶりも、ある意味自分の首を絞めたのだが。

しかしこの広義の<V系>の部類に属する(と思われる)バンドたちの一大集会により、実は「鬼っ子」と思われていたV系が<人力ロック>の醍醐味を現在までずっと伝承してきたという、歴史的事実が明らかになったのである。めでたしめでたし。

<過剰>を美徳とする足し算のロック

なのに今年もV系フェスが開催されてしまう。10月14~16日の「VISUAL JAPAN SUMMIT 2016」(幕張メッセ)がそれだ。「日本中のV系バンドよ全員群れ集え!」的なうたい文句に、懐かしい危険なにおいがする。そう、昨年の「LUNATIC FEST.」開催中、その注目度の高さと会場の熱気に興奮して「来年はXが主催してフェスやるよ!」と口走っていたYOSHIKIが、LUNA SEAやGLAYや楽天を巻き込んで本当に実現させてしまう。

これは大変だ。誰よりも巨大な大風呂敷をにぎにぎしく広げてはそのまま放置して、次の大風呂敷を広げる男である。その勢い任せのアバウトさが引き金となり、Xはこれまでどれだけの<伝説>を残してきたことか。

1989年にメジャーデビューして途中解散したものの、Xの実働期間は18年に及ぶ。なのに発表したアルバムは、ミニアルバムをカウントしてもわずか4枚だったりする。今年3月にリリースされるはずだった20年ぶり(!)の新作も、PATA入院による英ウェンブリー・アリーナ公演中止に伴い、なし崩し的になぜか延期となった。

しかしXファン及びXを知る者なら、いまさら誰も驚きはしない。中止になったツアーやライブは国内外で数知れずだから、開演時刻の1時間2時間遅れなど話題にもならん。レコーディングも延びる延びる終わらない終わらないで、歌わされ過ぎたTOSHIは喉から血を吐き、何百回も歌わせた張本人のYOSHIKIは「TOSHIが死んじゃうーっ」と泣いたほどだ。3rdアルバムは世に出るまで5年半かかった。ちなみにYOSHIKIの某別ユニットなんて、10年間で300曲レコーディングし続けたのにいまだにリリースされていない。

YOSHIKIは<アンビルトの女王>、もとい<アンフィニッシュトの殿様>なのか。

<非常識なロック>だから海外で面白がられた

高速でハイスパートで音数もやたら多く、人間の身体機能ギリギリで演奏するしかない楽曲。しかも「自分が格好いいと思う音楽は全部やりたい!」とばかりに、既存の音楽ジャンルの枠組みを無視してヘビーメタルからハードコアパンクからクラシックから何から手当たり次第に取り入れるから、ひたすらにぎやかにせわしなく展開する羽目になる。にもかかわらず、「日本人の魂は歌謡曲だ!」とメロディーだけキャッチーなので、摩訶(まか)不思議だけども痛快なロックが誕生した。

とにかく<過剰>を美徳とする足し算のロック――そんなXの音楽スタイルが、生き急ぎ感や劇場性も含めてV系スタイルのひな型になったのは言うまでもない。非業の死を遂げたメンバーもいるし、「おまえらの心を壊してやる」とアジってたボーカリスト本人が洗脳されたりなど、頻出する予想外の展開もまた<怒とうの生き急ぎエンタテインメント>V系に似つかわしい。

そしてこんな<非常識なロック>だからこそ、「コンナろっくイママデ聴イタコトナイ」と、ロックの本場である海外でも面白がられているのだ。

誰も頼んだ覚えがないのに世界最速を勝手に目指すYOSHIKIのハイスパートドラムを軸に、高速のリフをひたすら弾きまくるhideたちの肉体は当然疲弊していくのみ。不毛だ。不毛だけれどもしかし、度を超した不毛さは圧倒的なカタルシスを生む。Xがトゥーマッチであればあるほど、見ているこちらは痛快なのである。

ももクロ、BABYMETALも同一線上に

そういう意味では、ももいろクローバーZの<謎の全力少女>っぷりも同一線上にある。1曲あたりの振り付け量が他のアイドル比3倍なのに何曲も何曲も歌い踊り続けるのだから、尋常ではない。バラードですら猛烈に踊っていた。そもそも毎回毎回体力の限界に挑むアイドルって何だ? まるでルチャリブレを思わせる、側転に組体操にエビ反りジャンプ。ただでさえ下手クソなのに、めちゃめちゃ踊るものだからよりド下手くそにしか歌えないボーカル。それでも口パクを拒否して生歌を貫く姿勢は、まさしく<捨て身の美学>だ。

BABYMETALも外せない。彼女たちのメジャーデビューシングルで<世直しメタル>曲『イジメ、ダメ、ゼッタイ』はXの代表曲『X』を徹底的に<再生>しており、問答無用で笑わせてくれる。ライブではX(エックス)ジャンプならぬ×(ダメ)ジャンプで、ベビメタと観客が完全一体化してしまう。「うぃーあー?」「えーっくす!」ならぬ「うぃーあー?」「べびーめたる!」の応酬そのものが、<ハイスパート自爆ロック>を極めてた頃のXの見せ場そのままで、痛快この上なかったりする。

彼女たちが見せる、人間の身体能力の限界に挑むような<全編キレっキレの高速フォーメーションダンス>は、超速弾きギターソロやインタープレーと同じ感覚でクールだ。というか、演(や)る側も見る側も知らぬ間に溺れてしまうこのトランス感は――やっぱXのあのカタルシスと同一なのであった。

そういう意味では、原作漫画に3次元の身体を少しでも近づけるべく演者を鍛えあげる『弱虫ペダル』などの≪2・5次元ミュージカル≫も、Xワールドの延長線上にあるのかもしれない。

XはV系のオリジン的存在のみならず、日本が誇る元祖フィジカルエンタでもあったのだ。何はともあれ、国産初のオリジナルロックはすごいのである。

誰もまねできないグダグダっぷりも含めて。

市川哲史(いちかわ・てつし)1961年岡山県生まれ。音楽評論家。『ロッキング・オン』『ロッキング・オン・ジャパン』『音楽と人』『オリ★スタ』『日経エンタテインメント!』などに寄稿。近著に『逆襲の<ヴィジュアル系>-ヤンキーからオタクに受け継がれたもの-』(垣内出版)。11月に『どうしてプログレを好きになってしまったんだろう』(シンコーミュージック)発売予定
今週はビジュアル系バンド特集。4回連続で紹介します。
10月4日(火)日本最大のビジュアル系音楽フェス
10月5日(水)X JAPAN
10月6日(木)GLAY
10月7日(金)ゴールデンボンバー

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