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お菓子が「大人化」 おつまみサイズなどで狙い撃ち

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かつては子ども向けとされてきたお菓子だが、近年はプレミア感を打ち出した大人向けのお菓子が注目されている。ちょっと値段が高くても、品質がよく、おいしいものを食べたいという大人のニーズが、お菓子市場の拡大を後押ししているようだ。

お菓子市場のターゲットは子どもから大人へ

明治は今年、1968年から発売されているロングセラー商品「カール」をベースとした「大人の贅沢カール」を発売した。

最近、ロングセラー商品を「大人化」したお菓子が増えている。明治の「大人のきのこの山・たけのこの里」、不二家の「カントリーマアム(大人のバニラ・ココア)、グリコの「ポッキー<大人のミルク>」、ブルボンの「大人プチシリーズ」、ネスレの「キットカット ミニ 大人の甘さ」など、各メーカーが定番のお菓子を次々と大人向けへ展開している。

「お菓子を小さい頃に食べていても、成長とともに離れる方がほとんど。一度離れていったユーザーを取り込めないかと考えました」(明治広報部の粉川良恵さん)

「定番のロングセラー商品で取りこぼした層を拾うためにさまざまな商品展開をしていますが、その中でも特に大人層に力を入れはじめました」(不二家広報室の上田博子さん)

矢野経済研究所が発表した「2016年版 菓子産業年鑑 流通菓子編」によれば、2008年度以降、メーカー出荷金額ベースで前年度比が98%~101%と停滞気味だった流通菓子市場だが、2014年度は消費税引き上げがあったにもかかわらず前年度比104%。2015年度は102%(見込み)で、2年連続で規模が拡大した。同研究所は市場拡大の主な要因として価格改定が受け入れられた点や、チョコレートやナッツ類の健康効果が注目されたことなどをあげているが、これらも大人を消費者として取り込んでいるからだろう。「大人をターゲットにした商品開発に菓子メーカー各社が注力しており、こうした大人消費がここ数年の流通菓子市場を下支えしている」と同研究所は分析する。

「食べ比べたい」から、定番商品も売れる

ロングラン製品の「大人化」の先駆けとなったのが、2013年に明治から発売された「大人のきのこの山」「大人のたけのこの里」。同社広報部の粉川さんによれば「把握している限りでは、"大人"と冠してはじめて流通したお菓子」だという。

発売にあたり、パッケージを大人が手に取りやすいよう、落ちついた色調とシックなデザインに変更。チョコレートは厳選したカカオ豆を使用し、チョコレートの割合を増やすことでビターな風味を強めた。クッキー部分の食感にもこだわり、「大人のきのこの山」では香ばしいプレッツェルと、「大人のたけのこの里」ではココアクッキーと組み合わせている。

1970年代から発売されている定番お菓子の新しい切り口は、「発売と同時に瞬く間に話題となった」と粉川さん。「『きのこの山』『大人のきのこの山』『たけのこの里』『大人のたけのこの里』の4商品をあわせた2013年の売り上げは、当初の想定を上回り5割増でした。現在も『大人のきのこの山・たけのこの里』の人気は衰えず、2016年3~9月の売り上げは、前年を上回っています」

新製品だけでなく、定番商品もあわせて売れているという。「慣れ親しんでいたお菓子がどう変わったのか気になり、一緒に手に取る人が増えたのでは」と粉川さんは分析する。

大人に向けて、量は小さく

今年発売された大人向けカールを見てまず目に付くのは、これまでのカールと比べ袋が小さいこと。従来のカールの容量が64gなのに対し、大人向けカールは50gに設定している。これは「大人が独り占めして食べるのにちょうどよい量」なのだという。

小型化は他の大人のお菓子にも共通するトレンドで、「大人のきのこの山」が74gから64gへ、亀田製菓の「ハッピーターン 大人の梅わさび味」は、通常サイズの96gではなく、32gで販売。不二家の「新ベイクショップシリーズ」のように、少なめの個数で販売しているものも。

一方で、満足感はしっかり得られるよう、食べ応えにも工夫を施した。「『カール』はとうもろこしを原料としたコーンスナックですが、『大人の贅沢カール』では小麦を使用することで、大人に好まれるサクッ、カリッとした堅めのかみ応えを実現しました」(粉川さん)

パッケージも黒や赤を基調としたぜいたくさを前面に押し出すデザインに刷新し、高級感を表現。商品名も小さく配置されているため、一見カールとは思えない。

こうした大胆なイメージ転換が受け、「晩酌のおつまみに夕方以降のコンビニで手に取る人が多い」(粉川さん)。8月に発売した「大人の贅沢カール 濃旨炙り海老味」の出荷数は、当初目標の150%だったという。

ビジュアルも大胆に変えたお菓子も

パッケージを大人向けに変更する仕様は、どの定番お菓子でも見られるアプローチだが、お菓子の形までガラリと変えたのが、不二家の「新ベイクショップシリーズ」。同社の人気商品である「カントリーマアム」の名前を冠しているものの、外見は大きく異なっている。

「『カントリーマアム』は異なる2種類の生地を使用した二重構造になっていて、中身のチョコチップ入り生地が、外側のクッキー生地に隠れていますが、『チーズタルト』はクリームチーズを使った中の生地部分が表に出ている"中身が見えるカントリーマアム"がコンセプト。『ブラウニー』は形を大胆に変更した"四角いカントリーマアム"です」(上田さん)

「いくら素材や製法にこだわっても、お菓子のビジュアルが同じでは違いが伝わらず、『それなら定番商品でいい』と購入者は考える」ため、見た目は大きく変えた一方、食感はカントリーマアムならではのしっとり感が残り、ブラウニーにはカントリーマアム専用のチョコチップを使用しているという。

「『新ベイクショップシリーズ』は、40~50代の主婦をターゲットにしています。ちょっとしたぜいたくを楽しみたいというニーズに応えるため、カントリーマアムの特徴であるしっとり感を徹底的に追求し、市販のお菓子だけれど、まるで洋菓子店で買ったような上質感と手作り感のあるお菓子を目指しました」(上田さん)

今年10月には、新しく「ホームパイ」を大人向けにした「ホームパイベイクショップ 窯出しデニッシュ」も発売する。生地のサクサク感は、ホームパイの食感を思い出させるが、生地の間にチョコレートを挟みこみ、サイズも一回り大きくして、食べた時に十分な満足感を得られるように工夫。大人向けのぜいたくさと懐かしさを同時に味わうことを目指したという。

少子化社会でお菓子を支える大人向け商品

今回、大人向けのお菓子を集め試食してみたが、子ども向けに比べて、高級感のあるパッケージ、食べきりサイズ、甘さ控えめといった共通点を実感できた。不二家が「"大人"とつく商品を2製品開発中」、明治が「今後も大人をターゲットとした商品を展開」としているように、現在も、各社が30~50代をターゲットとした大人向けのお菓子の開発に力を入れている。

「大人向けのお菓子の売り上げは着実に伸長しており、ますます市場が広がる」と各メーカーは見込む。今後も定番お菓子の大人向けへの展開は続きそうだ。

(ライター 二川智南美=かみゆ)

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