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和の香りを生活に 達人・今井麻美子さんのワザ バッグに入れ芳香ほのかに

2016/9/28

 衣替えの秋。衣装から漂うほのかな香りは周囲に好印象を与えるが、強すぎるとひんしゅくを買うこともある。西洋の香水だけでなく、時には和の香りを試してみてはどうだろう。創香家として活躍する今井麻美子さんに生活の中で香りを生かす方法を聞いた。
今井麻美子(いまい・まみこ)さん 東京都出身。50歳。大学卒業後、広告代理店、輸入ブランド会社などを経て2006年から和の香りの研究を始める。創香家、香司として和の香り講座で教えるほか、オーダーメードの香り作り、イベント演出も手掛ける。

 ――西洋の香りと和の香りの違いは何ですか。

 「香水など西洋の香りは、一般に液体で揮発性が高いのが特徴です。華やかな香りが周囲に一気に広がります。香りに鼻が慣れると使用量がどんどん増えてしまうことがあります」

 「一方、和の香りは『気遣いのある』と言えばいいのでしょうか、近寄らないと分からない香りです。洋の香りと違って持続力があり、着物や紙に移したり空間に漂う香りを楽しんだりと間接的に使います」

 「仏教と共に日本に入り、平安時代には香りを遊ぶ文化が生まれました。東南アジア原産の沈香(じんこう)、インド原産の白檀(びゃくだん)や防虫剤としても使われる龍脳(りゅうのう)、クローブと呼ばれる丁字、ニッキと同じ桂皮(けいひ)などが香りの原料で、植物由来の素材が中心となります。常温ならにおい袋、炭火で温めて使うのは香料を蜜などで練り込んだ練香、火を付けるのが線香と、温度によって使い方が異なります」

 ――日常生活ではどう使えばいいですか。

 「におい袋には14、15種類の香りが入っていて、半年から1年は持ちます。玄関に一つ置くだけで、雰囲気ががらっと変わります。におい袋は原料の組み合わせによって様々なタイプがあり、好みのものが選べます。季節で香りを変えてみてはどうでしょう。春は優しく甘い香り、夏はさわやかな香り。秋は重くしっかりした香り。正月は気分一新。はっきりした香りが合いますね。玄関を開けると、何となくいい香りがする。隣の部屋から漂ってくるのかな、くらいがちょうどいいでしょう」

 「におい袋は室内に置いたり、引き出しに入れたりするだけではなく、コートのポケットに入れて持ち歩いてもいいんですよ」

 「最近の住居は機密性が高くなり、煙を嫌う人が多くなりました。室内で線香をたくのが嫌なら、におい袋を置くという方法もあります。火の気を心配する必要もありません。余った線香は、火を付けずにそのままトイレに置けば、ほのかな香りを楽しめます」

 ――香りの応用範囲は広いですね。

 「寝室の枕元に自分の気に入った香りを置くのもお勧めです。できれば天然の素材を使いたいですね。セミナーの生徒からは『呼吸が深くなり、よく眠れる』という声をよく聞きます」

 「ビジネスの現場でも香りは使えます。文香(ふみこう)といって、紙に香りを移すアイテムがあります。細かく砕いた少量の香料が薄い紙の袋に入っていて、名刺や資料などに香りを移すのに便利です。香り次第で相手に与える印象も変わってきます。手帳にはさめば、開くたびに、穏やかな気分になります」

 ――香りが弱くなったらどうすればいいですか。

 「タンスや引き出しの中に入れていたにおい袋の香りが薄くなってきたらバッグの中など狭い空間で使うのをお勧めします。ただ、線香を入れるのは色移りの可能性もあるので避けた方がいいですね」

 「気をつけてほしいのは、香りはそれぞれに最適の温度があるということ。使い終わったにおい袋の中身を線香のように燃やしたりするのは避けたいですね。本来燃やすことを想定していないので、いい香りにはなりません。香りは暖まるとどんどん出てしまいます。車の中に放置するのはよくないですね。特に夏場は高温になるので、あっという間に香りがなくなってしまう可能性があります」

 ――イベントで香りの演出も手掛けられています。

 「和の香りの作家であるという意味で『創香家』と名乗って活動しています。落語家の五街道雲助師匠の独演会では、演目に登場する人物を思い浮かべて香りを作りました。英国のロックバンドのコンサートで香りの演出をしたこともあります。私自身、ロックが大好きなので、時々都内のクラブでDJと和の香りを組み合わせたイベントをやっています」

[日本経済新聞夕刊2016年9月28日付]

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