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写真館 普段使いに活路 頼みの綱はSNS世代

2016/10/2

自然光で写真が撮れるスタジオが増えている(スタジオココア横浜港北店=横浜市)

 斜陽とみられてきた写真館で新規出店が増えている。老舗写真館や異業種からの参入組が、従来と異なるスタジオでSNS(交流サイト)に写真を投稿する世代の取り込みを狙う。

 大きな窓から柔らかな自然光が差し込む部屋で1歳になった我が子を見つめる夫婦。「かわいい~」とカメラマンの声が響く。親子がいるのは横浜市に9月にオープンした住宅風の写真スタジオ「スタジオココア横浜港北店」だ。

 母の若林友美さん(26)は「カジュアルに撮れて子どもが自然に笑う。成長の記録をきれいな写真で残したい」と話す。「インスタグラム(写真共有アプリ)に投稿し友人に見てもらいたい」ともいう。

 スタジオは1976年創業の小野写真館(茨城県ひたちなか市)が出店した。2代目の小野哲人社長(41)が2012年に茨城県で1号店を開業し、横浜港北店が5店目となる。1日5組限定の貸し切り型で「くつろいだ空間で家族の歴史を記録してほしい」と小野社長は語る。

■自然な表情残す

 11年にIT(情報技術)出身者が設立したディッグ・フィールズ・アンド・コー(東京・目黒)の「プレシュスタジオ」は昨年からフランチャイズ事業を始め、今の8店から19年に55店に増やす。フランチャイズ先には子供服の商社など本業と相乗効果を狙う企業が多い。

 従来の写真館は、ストロボをたいて固定カメラで撮っていた。今は自然光や自然光に近い光の中、雰囲気の異なる部屋や中庭など場所を移動しつつ、手持ちカメラで自然な写真を撮る住宅型のスタジオの出店が目立つ。

 住宅型スタジオの先駆け的存在が、06年に初出店したアップルツリーファクトリー(埼玉県越谷市)の「ライフスタジオ」だ。首都圏にある15店は予約が3カ月先まですぐ埋まる。蒔田高徳・情報室長は「日常でありながら非日常を体験できる。自然な表情を引き出す従業員のコミュニケーション力も強み」と話す。

 総務省の調査によると、写真館を含む写真業の事業所は1996年の約2万8千カ所から12年には約1万600カ所にまで減少した。それが14年は12年比で7%増え1万1千カ所強と増加に転じた。統計には広告写真業などを含むが、約半数は写真館など一般向けが占めており、増加には住宅型スタジオの出店が影響しているようだ。最近は「カメラ販売やプリント店が証明写真の撮影業に転じる例も多い。こうした業者が写真館を始める動きもある」(日本写真館協会)という。

■迫る淘汰の波

 写真館は使い方が広がってきた。七五三など伝統的な“ハレの日”だけでなく、マタニティー姿の撮影や誕生日などで家族で足を運ぶ。女子会やカップルも利用するようになった。

 スマートフォンで撮影した写真をSNSに投稿する人が多いことが背景にある。光の使い方などはプロのカメラマンにかなわない。しかも、「自宅だと写ってほしくないものまで写り込んでしまう」(34歳女性)が、スタジオならその心配はない。写真データを撮影当日に渡すのも特徴で「すぐにSNSに投稿できるほか、自ら好みのアルバムを作れる」(37歳女性)との声も多い。

 ただ、すでに競争は激しさを増しており、値引き合戦が起きている。写真データは75枚3万円前後が相場だが2万円台も出てきた。船井総合研究所の井口章・チーフ経営コンサルタントは「今後、淘汰が加速するだろう」とみる。

 明治時代に創業した写真館から独立したメモリス(名古屋市)は衣装を自社製造し、他社との違いを出す。解像度の高い4K動画からきれいな表情を写真として切り出したり、成長の記録として声も残したりするサービスを提供するところも出てきた。誰でも気軽に撮影できる時代だからこそ、写真館の存在感を際立たせる工夫が求められている。

愛知県でも住宅型スタジオの新規出店が目立つ(愛知県春日井市のメモリス勝川店)

 ◇   ◇

■新たなビジネスモデルも登場

 写真館ビジネスを巡っては、子どもの写真展やフォト雑誌の発行を組み合わせたビジネスモデルも登場するなど、様々な事業が動き出している。

 群馬県伊勢崎市の「so―happy」は今年7月、前橋市内に写真スタジオ「スタジオリンク」をオープンした。自然光が入り込む約100平方メートルの撮影スペースを持つ。

 同社はこれまで出張撮影を手掛けるとともに、子どもの撮影会や写真展を開く「キッズスマイルプロジェクト」を実施してきた。今年9月には、群馬県内の飲食店などの情報を掲載した雑誌「キッズスタイル」を創刊した。公募で集まった子どもたちをモデルに、スタジオや飲食店で撮った写真を載せている。12月には乳幼児とママをモデルにした雑誌「ベビースタイル」を創刊する予定だ。

 大川渉社長は「子ども一人ひとりが主役となって撮影を楽しんでもらいたい。撮られる人の魅力を最大限引き出すのが自分たちの仕事だ」と話す。写真の良さを伝えるとともに、写真スタジオを身近に感じてもらい、利用者に何度も足を運んでもらう狙いだ。

 インターネットでの写真の販売システムを手掛けるフォトクリエイトは、全国の幼稚園や保育園、学校などの行事の写真に、6秒前後の動画を加えて販売するサービスを提供する。同社の提携先のカメラマンが撮影した動画を販売するほか、一部の写真館に対しても出張撮影の動画が販売できるサービスを始めており、今後、事業を拡大する方針だ。「動画には声が入っており、成長の記録としてどんなことを話していたかを振り返ることができる」(同社管理本部)のが利点だ。

 幼稚園児や保育園児を撮影できるロボット「みーぼ」を開発したのは、ユニファ(名古屋市)だ。園内で過ごす子どもの普段の姿を写す。撮影した画像は、ネットを通じて親がみることができる。家で、その日の園内であった出来事を親子で話せる。家族のコミュニケーションの道具としての期待は大きい。「みーぼ」は現在、全国約20施設で導入されているという。

 デジタル化に伴い、写真を撮影・販売する効率は格段に上がってきた。「写真館への新規参入が目立つのも『もうかる商売』だと認識されている証拠だ」と日本写真館協会は強調する。撤退や廃業が増えているにもかかわらず、写真館ビジネスの可能性を探る動きは衰えていないようだ。

 ◇   ◇

■ツイッターでは賛否両論 自然光スタジオ、天候心配?

 ツイッターでは「スタジオの立地は住宅街のど真ん中だけど自然光めっちゃ当たってきれい」と自然光スタジオに肯定的な声があった半面、「雨やだ!せっかくのスタジオが!!!自然光とは!?」と天候に左右される難点が指摘されていた。また「コスプレ撮影OKの建物を貸し切って撮りたい」とのつぶやきもあった。

 子どもの成長記録に関しては「生後半年くらいのかわいい写真をフォトスタジオに撮りに行きたい」「(マタニティーフォトは)子どもに見せるため。おなかにいる時から写真が残っているって結構うれしいみたい」という声があった。調査はNTTコムオンラインの協力を得た。

(福士譲)

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