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「養子縁組で節税」は慎重に 相続税が増えることも

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2016/11/25

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 法律では養子も相続人として認められている。相続税では実子がいれば1人、いないなら2人までが相続人になれる。相続時の基礎控除額を膨らませるために孫や子供の配偶者(婿や嫁)を養子として籍に入れる人もいる。確かに節税にはなるのだが、この方法は兄弟げんかを招くことも多いので慎重に事を進めた方がいい。

 下のCASEは、相続人になる人の条件を把握せず、養子縁組の話を進めて失敗しそうになった例だ。

CASE:養子縁組をしたら相続税が増えてしまうなんて

 生涯独身を通し子供のいないH子さん。世話になった姪に資産を残すため、姪を相続人の一員にすべく養子にすることを計画した。養子縁組で相続人が増えると節税対策にもなると本で読んだこともあり、前向きに話を進めていた。

 ところが税理士に話を聞いてびっくり。H子さんの死亡時、現状では相続税はかからないのに、姪を養子にすると相続税が生じるというのだ。

 H子さんは4人兄弟の末っ子で法定相続人は兄弟3人。だが、姪を養子にすると相続人は1人に減り、基礎控除額は4800万円から3600万円に縮小される。4000万円ほどの資産を持つH子さんにとって、この違いは大きい。悩んだ末、計画は中止に。今は自分の死亡時の相続税をなくせたことでホッとしている。

 事例のH子さんは配偶者や子供、親(直系尊属)がなく、本来の相続人は第3順位の兄弟だ(下図)。ところが養子を迎えてしまうと、第1順位に戻り、相続人は兄弟ではなく養子に代わる。節税だけに着目するなら、4人兄弟のH子さんが養子を迎えると相続人の数は3人から1人に減るので、その分、控除枠も減り、相続税は増える。

落合孝裕さん(落合会計事務所 税理士)

 ただ、H子さんには姪に資産を残したいという希望があった。税理士の落合孝裕さんは「養子に迎えるのではなく、姪に財産を残すという遺言書を作ればいい」と助言する。兄弟には遺留分がないため、H子さんは姪に全財産を引き継がせることも可能だ。

■勝手な縁組はけんかのもと

佐藤絵里子さん(相続手続支援センター横浜駅前・川崎駅前 税理士)

 養子縁組では、相続人全体を気遣うことも大切だ。例えば長男の嫁を養子とする場合を考えてみよう。もともと2人兄弟なら、養子を1人迎えると相続人は3人に増える。法定相続分通りに分けると各人の相続分は2分の1から3分の1へと減ることになる(相続人がこの兄弟のみの場合)。

 長男夫婦は合計3分の2をもらえるのに、次男は相続財産が減ってしまう。後にもめることを避けるためにも「親は次男の了解を得て、次男の相続分を多くするなどの配慮が必要」(税理士の佐藤絵里子さん)だ。

(ライター 福島由恵)

[日経マネー2016年11月号の記事を再構成]

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著者 :日経マネー編集部
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