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生活排水も「水源」 多摩川はこうして復活した

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ナショナルジオグラフィック日本版

多摩川の源は、山梨県と埼玉県の県境にそびえる笠取山の山頂直下、水干(みずひ)と呼ばれる場所だとされている。私もそこを訪ねて、「水干 多摩川の源頭 東京湾まで138km」と書かれた案内板を目にした。岩の間から滴り落ちた水が沢となり、一之瀬川、丹波川と名前を変え、小河内ダムから下流は多摩川として流れ下る。

しかし、その水の多くが東京湾までたどり着くことはない。水干から84キロほど下流にある羽村取水堰(せき)で、8割ほどが抜き取られるからだ。

中・下流域では生活排水が"水源"

それでは、堰から下流の水はどこから来るのか。秋川や浅川といった支流の水や川底から湧き出す伏流水もあるが、実は、中・下流域の水のおよそ半分が下水の処理水だ。この区間には都の6施設のほか、三鷹市や川崎市などが管理する四つの下水処理施設があり、合わせて年間3億7000万立方メートル余りの水が多摩川に流されている。これは、羽村取水堰で抜き取られる量よりも多い。

つまり、家庭の台所や風呂、洗濯、トイレなどで使われた水が多摩川の源なのだ。この川はそれだけ、人間の影響を受けやすい。

半世紀ほど前、この川は「死の川」と呼ばれていた。水質が著しく悪化し、アユをはじめ、さまざまな生き物が姿を消したのだ。調布取水堰の周辺は当時、汚れた多摩川の象徴だった。白い泡が川面を覆い、風が吹くと異臭とともに、付近の道路や住宅へ飛ばされていった。

「子どもの頃は、越中ふんどし一丁で家の前の石垣から川に飛び込んだものです。魚を捕ることぐらいしか、遊びなんてなかったですから」。そう語るのは、東京都福生市の高崎勇作さんだ。アユやカワマス、ウナギ、ウグイ……生命あふれる多摩川を、高崎さんは覚えている。

高崎さんが川の異変に気づいたのは、東京オリンピックが開かれた昭和39(1964)年のこと。近所の魚屋で買ってきた多摩川産のウグイを焼いていると、異臭が漂い始めた。何か変だと思いながらも、焼けた魚を恐る恐る口に運ぶ。まずい。思わず吐き出した。「あれ以来、多摩川の魚を食べたことはありません」。川を眺めながら、高崎さんは言った。河口から50キロほど上流の川岸に生まれ育った高崎さんは、82歳になる今も川のすぐそばで暮らしている。「私の一生は多摩川の思い出ばかりです」

アユのすめる川に

45年前に都が多摩地域で最初に運用を始めた南多摩水再生センターを皮切りに、約20年かけて多摩地域に6カ所の下水処理施設が整備された。1965年に6%だった同地域の下水道普及率は現在99%を超えている。

水の汚れ具合を示す指標に「生物化学的酸素要求量」(BOD)値がある。6施設の下流にある多摩川原橋で観測されたBOD値の変化を見ると、1971年に6.6mg/Lだった値が、およそ10年間は増加傾向にあったものの、その後、減少に転じ、2003年からは3mg/L以下で推移している。数字からも、多摩川がアユのすめる川によみがえったことがわかる。

都は現在、活性汚泥法に加え、赤潮などの原因となる窒素やリンを取り除いたり、より微細な汚れを除去したりできる高度処理の導入を進めている。「技術的には、処理水をもっときれいにすることはできます」と下水道局の宮本彰彦さんは話す。ただ、コストがかかり、その分、下水道の維持管理費が高くなるという。

(文=大塚茂夫 ナショナル ジオグラフィック日本版編集長)

[ナショナル ジオグラフィック 2016年10月号の記事を再構成]

[参考] ナショナル ジオグラフィック10月号では特集「多摩川の今」のほか、大量の難民流入に直面する「欧州の新しい顔」、血に染まるサイの角/アフリカ系米国人の足跡/キューバ 変化の大波を前に、の特集5本を掲載しています。

NATIONAL GEOGRAPHIC (ナショナル ジオグラフィック) 日本版 2016年 10月号 [雑誌]

著者 :
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,010円 (税込み)

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