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リーダーのマネジメント論

メルカリ、全社員に株購入権 起業マインドを後押し メルカリ社長 山田進太郎氏(下)

2016/9/27

米国では未上場ながら評価額が10億ドル(約1000億円)を超えるベンチャー企業を「ユニコーン(一角獣)」と呼ぶ。米調査会社CBインサイツのウェブサイトで、日本から唯一名前を連ねているのがスマートフォン(スマホ)向けフリーマーケット(フリマ)アプリを手がけるメルカリ(東京・港)だ。海外進出に苦労する日本のベンチャーのなかで、メルカリが一歩先を進んでいるのはなぜなのか。マネジメントの視点から、山田進太郎社長に聞いた。

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■『カルト』のようであれ

――メルカリの人事制度や、評価制度はどうされているのですか。

「組織は特別なある目的があって、そのためにみんな集まっています。世界的ベストセラー『ビジョナリー・カンパニー』のなかで著者のジム・コリンズ氏は優れた企業は『カルト集団』のようでなければならない、と話しています。組織が何かをするときに、特別な何か、ビジョンや理念が重要だということです。メルカリでは、ビジョンを達成するための『3つのバリュー』を設定しています。採用のときも、四半期ごとに社員を評価するときも基準にする概念です」

「1つは、『Go Bold(大胆にやろう)』。まだ道半ばですが、ある程度私たちがベンチャーとしてここまでこられたのは、今まで人がやったことがないことを実行したからです。先日、テレビコマーシャルをやったのですが、(モバイルの世界では)ゲームはよくてもフリマアプリでは効果がない、といわれていました。当然かなり研究したので無謀ではないけど大胆な戦略だったと思います。2つ目が、『All for One(全ては成功のために)』。自分の所属する部門に対して、自分がどういうことを貢献したか、ということです。組織でやっているのだから、チームで成果を出せているかをしつこく問います。3つ目が『Be professional(プロフェッショナルであれ)』。エンジニアでも、法務でも人事でも、採用でも、プロフェッショナルが集まって大きな仕事をしているので、自分のもつ専門性をどれだけ改善できるか、能力が向上できるかを見ています。この四半期に何ができるようになったのか、プロフェッショナルとしてどう成長したか。この3つを四半期ごとに評価し、報酬につながっています」

――メルカリでは、ほぼ全ての社員にストックオプション(株式購入権)を与えているとも聞きました。どういった意図からでしょうか。

メルカリ社長 山田進太郎氏

「私自身が、何もないときに何億円も投資してもらったり、育ててもらったりしてきました。その経験があるので、自分も創業者利益がどうこう、というよりは、会社として得た利益をみんなで分かち合いたいと思ったからです」

「それに、ストックオプションって事業に価値が生まれなければ何の意味もない。みんなで頑張って、我々の事業に価値をつけよう、という意図もあります。そのことで社員が、投資したいとか、別の会社を起業したい、と思うようになれば、シリコンバレーのような起業のエコシステムが成長してくるのではないでしょうか」

■人を増やしすぎた失敗

――これまでのマネジメント経験のなかで、最も大きな失敗は何ですか。

「前の会社(ウノウ)では、資金調達もして20人ほどエンジニア中心に人も採用したけれどうまくいきませんでした。一番大きな理由は、サービスを作っても成功する打率が低かったことです。ヒットもしくはゴロばかりで、収益が出るレベルまでいかなかった。うまくいかないので、『なんでできないの』と、いわば『詰める』雰囲気も作っていました。(社員に)この会社なら面白いことできると思ったが、この人じゃだめだな、と思われてしまいました。結果、ボロボロと人が何人もやめました。マネジメントもうまくできなかった」

「(会社の)方向性を見極める前に人を増やしすぎたことがミスでした。メルカリにも近いビジョンがありますが、当時も『世界で使われるインターネットサービスを』というミッションに立ち戻って、モバイルゲームを作り始めてからはうまくいくようになりました。それまではあれこれつくるけれどうまくいかなかった。20代で、若かったこともあります」

――何がマネジメントの成功になるのでしょうか。

「結局、なぜ『会社』という形を取るかといえば、組織でやったほうが大きなことができるからだと思います。私は、メンバーの様々な能力を引き出して成果を出すのがマネジメントだと思っています。その人の能力を引き出すためには、何かをやらせるというよりは複数の意見を取り入れる。やると決めたらコミットすることでモチベーションを引き出す。その最中は苦しいかもしれないけど、達成したら全ての苦労が報われて、人としても一段スキルを高められる。チーム全体の成長が、私はマネジメントだと思っています」

■創業メンバー探しのポイント

――起業にあたって、創業当時のメンバーをどのように集めたのですか。

「私の場合は、もともと知り合い、というケースがほとんどです。今の取締役は、全員もともと知り合いで、いつか仕事したいなと思っているような人です。そのとき、一緒に仕事しているか、してないかは、時の状況とかタイミングによりけりで、自分のやりたいこととその人のやりたいことが合致すれば一緒にやろうよ、といつも声をかけています。長い人生だから、別れることもあるけどまたやるかもしれない」

――メンバーを探すとき、スキル、価値観など、何が一番重要ですか。

「スキルだけではないですね。どちらかというと、冒頭に申し上げた『3つのバリュー』のようなものが大事だと思っています。これは、なんとなくですが私の好きな人たちの性質だと思います。今メルカリにいる取締役の小泉文明はミクシィの取締役だったのですが、ウノウとミクシィのマインドが似ている、と感じています。実際、メルカリには、もともとウノウにいた人や、ミクシィの人が多い。これから来る人たちも『3つのバリュー』を基準に採用するので、ますますそうした文化になっていくのではないでしょうか」

山田進太郎氏(やまだ・しんたろう)
1977年生まれ、愛知県出身。早稲田大学在学中に楽天で「楽オク」の立ち上げなどを経験、2000年に卒業。その後、ウノウ設立、「映画生活」「フォト蔵」「まちつく!」などのインターネットサービスを立ち上げる。10年、ウノウを米ジンガに売却。13年2月にメルカリを創業、社長に就任

(松本千恵)

前回掲載「非上場のメルカリ なぜ評価10億ドル超に成長したか」では起業の経緯と今後の展望について聞きました。

「リーダーのマネジメント論」は原則火曜日に掲載します。

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