NOVA取得も会社売却 一敗地から反転攻勢NOVAホールディングス社長 稲吉正樹氏(下)

教育事業を買い戻してからは、これまでの7年間、ほんとうに楽しく仕事ができました。苦労は全くありませんでした。上場企業でもありませんし、金融機関からの借り入れの必要もなく、自身の資金でビジネスができましたから、気兼ねなく楽しくやれました。

ただ、ひとつひとつのことを慎重に進めていくことを心がけました。例えば物件選定にしても、以前のように多くを勘に頼るのではなく、しっかり市場調査してその物件のリスクをちゃんと勘案しながら進めるとか。

最も力を注いだのは商品、サービスの改善です。

旧NOVAの最大の問題点は、長期の授業料の前払い制にありました。それを、まだ授業も消化していないのに売り上げに計上していたのです。私らはそれを抜本的に見直し、月謝制に改めました。受講生からすると、私たちのサービスに満足いかなければ、いつでも退会していただくことができます。

あとは、なかなか授業の予約が取れないという問題がありました。旧NOVAでは授業の予約受付も校舎のカウンターと電話だけでしたが、電子カルテを導入して、全てインターネット経由で生徒が受講生が自分自身で予約をできるように改めました。

旧来は所属する校舎でしかレッスンを受けられませんでしたが、システムの導入により、どの校舎でも受けられるようにしました。先生を選ぶこともできます。

コンテンツの改善も進めました。旧NOVAはひとつのカリキュラムしかありませんでしたが、生徒の多様なニーズに応えて、オプションで様々なレッスンを受けられるようにしました。例えば、レストランでの英会話10回シリーズとか。塾と一緒です。通常の授業があって、夏期講習があって冬期講習があってというように。受講機会も増えるし、いろいろな角度で履修できるので、より習得が早くなることが期待できます。

「駅前留学」+「リアル留学」で成長めざす

従来の教室にはない感動的空間の提供をめざす(京都市のNOVA×Last Resort 四条河原町校)

旧NOVAの破綻時には約10万人の生徒がいました。当時に比べて校舎数は半分ですが、生徒数は約7万人にのぼっています。NOVAのスクールとしては出店余地がまだ残っていると考えており、少なくとも現在の倍にあたる500校は展開できると考えています。

校舎内部の充実も進めたいと思っています。これまでの英会話や塾の教室は、事務所に机を並べたようなものがほとんどでした。私らは教室を店舗と捉え、より生徒に満足いただける環境でレッスンやサービスを提供したいと考えています。「こんなところでレッスンを受けられるんだ」というような感動的空間を提供していきたいと。

さらに、英語習得の一番の近道は体験だと思います。このため、休暇を楽しみながら就労もする「ワークホリデー」やホームステイなど、気軽に海外へ行っていただけるように、海外留学支援会社をM&Aしました。海外支店の展開も進め、留学支援に加えて現地での講師採用の窓口としていく計画です。

NOVAホールディングスの今期(2016年11月期)の連結決算は売上高160億円(FCを含むチェーン売上高は360億円)、純利益10億円を見込んでいます。5年後であれば少なくとも、売り上げ、利益ともに倍増させたいと考えています。

稲吉正樹氏(いなよし・まさき)
1969年生まれ、愛知県蒲郡市出身。92年愛知学院大学文学部卒、蒲郡市役所入庁。1994年退職、がんばる学園(現ジー・コミュニケーション)を創業、2007年NOVAを事業取得。09年ジー・コミュニケーションを売却、いなよしキャピタルパートナーズ(現NOVAホールディングス)を設立、10年NOVAを含む教育事業を買い戻す。現在グループ企業は海外子会社9社を含め17社。趣味はダイビング。

(平片均也)

前回掲載「あのNOVAのオーナーに 市職員が起業家となった理由」では、起業からNOVA取得までの軌跡を聞きました。

「トップは逆境を超えて」は随時掲載です。

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