あのNOVAのオーナーに 市職員が起業家となった理由NOVAホールディングス社長 稲吉正樹氏(上)

2つの目の理由は収入です。大学生時代、家庭教師をやっていました。30人ほどの生徒を持ってたので当時の月収30万円ほど。それが公務員になったら手取りで15万円です。「自分は幸せなのだろうか」と迷うこともありました。「それならいっそ、家庭教師の経験をもとに塾ならできるのではないか」と起業を決意したのです。

「宮城谷先生と同じような状況に身を置いてみるというのもちょっとおもしろいかな」とも思いました。周りから「いいところに勤めているね」といわれることよりも、「貧乏でもいいから自由でいたい」という思いが強かったのです。

こうして学習塾「がんばる学園」を25歳のときに一人で立ち上げました。

はじめは生徒も集まりませんでした。教室は本当に手作りで、6畳ほどの古めかしい事務所を借りて、自分でペンキを塗ったりしました。今思えばそんな手作りの教室に生徒が集まるはずもなかったのですが、「知名度がないからだ」と思い違いをし、3、4カ月後に2校目、それでも生徒が集まらないので、さらにもう1校と1年で3校にしました。それでも生徒はほとんど入らず、いよいよ生活が厳しくなりました。「中途半端にやっているから、うまくいかないのだ」と思い至り、今度はちゃんとした教室をつくりたいと考えるようになりました。

両親の反対を振り切って市役所を辞めたので、半ば勘当状態でした。何ら支援もなく、資金もありません。そこで国民金融公庫に相談に行くと、「まずは不動産を借りなければ話にならない」と言われました。世間知らずの私は、借りれば資金を貸してくれると思い込み、残っていた全財産を投じて物件を借り、再度融資を申請しました。すると今度は「若いので父親の保証が必要だ。承諾をとってくれ」と言われました。父に電話で頼み込み、理解が得られたと思って改めて融資の面接に向かい、保証人確認の電話をかけると、父は公庫の担当者に「商売をやめるように言ってくれ」と。当然、融資は受けられませんでした。

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