マネー研究所

人生を変えるマネーハック

転職はお金が最優先で 自分を安売りするな キャリアと年収をマネーハック(4)

2016/9/26

 今月のテーマはキャリアと年収の関係でした。最後はキャリアアップの定番のひとつ、転職についてマネーハックしてみたいと思います。

■転職しても年収が上がるほど世の中は簡単ではない

 まず最初に心得るべきは「転職=年収増」とは簡単にいかないということです。再就職支援サービスを手掛けるパソナキャリアカンパニーの「転職に関する意識・実態調査2015」によれば、転職による年収アップの実現割合は58.1%です。

 一方で17.7%は年収の増減なし、残りの24.2%は年収減としており、4割強は転職が必ずしも経済的な好条件の獲得につながっていないことになります。

 転職にもいろんな事情がありますから、年収が下がってもやむを得ず受け入れることはありえます。ハラスメントの問題が深刻であったり、会社の業績が急降下し、今後の賞与も年収増も期待できず、職場を変えるほうが優先順位が高いケースでは転職の条件にこだわる余裕はありません。

 むしろ、そういう「選択の余地がない」状況に陥る前に転職活動を行うことが肝心なのです。

■転職を考えるキーワードはとにかく「銭(ギャラ)」でいい

 多くの人が転職を「お金」をより多くもらう手段として考えていると思います。そしてそのことに少し後ろめたさも感じているかもしれません。

 しかし、より高い年収を得るということは自分の能力をより高く評価してもらえるということです。先週考えてみたように自分の「時給」を上げることでもあります。

 マネーハック的に視点を逆転すれば「今までの会社はあなたの能力を低く見積もり、安く働かせてきた」ということですから、これを後ろめたく思う必要はありません。

 人生において、あなたがお金を稼げる時間はあまり長くありません。22歳から65歳まで働くとしても43年間ですが、ざっくりいって人生の半分にすぎません。特に定年後の20年以上の時間は無収入であり、そのための生活余裕資金の確保は限られた現役時代に課せられています。

 仮に、本来もっと多くのお金を稼げたはずの4年間を会社の業績悪化などの理由で無駄にしたとします。ボーナスが年2カ月分以上、賃上げや昇級チャンスがすべて先送りになったとすれば、おそらく500万円程度の損になっていることでしょう。

 残念ながら、あなたがどんなにその会社に肩入れしたとしても、景気回復後にその500万円を返してくれるわけではありません。

 会社に後ろめたさを感じていたり、過剰な愛社精神にとらわれていたりしている人ほど、もっと「お金」にこだわってみましょう。

■良好な人間関係や働きがいのような「感情」には引きずられない

 転職を考えるとき、人間関係が悪い職場やパワハラ・モラハラが常態化している職場であるなら話は簡単で、すぐ転職活動に入れます。また、働きがいも感じられず飽き飽きしており、仕事から得られる成長の伸びしろがない場合も転職活動に踏み切りやすいでしょう。

 逆に「人間関係が良好である」「仕事は楽しい」という職場だとなかなか転職に踏み切ることができません。しかし、「情」があなたの「お金」を稼ぐチャンスを妨げているとしたらそれは問題です。

 夏目漱石の小説「草枕」では「情に棹(さお)させば流される」という有名な一節がありますが、情に流されて経済的余裕を得るチャンスを逃してしまう人はお人好しも多いようです。

 「お金」を選ぶことは無情ではありません。どうしても非情になれないという人は、むしろ自分や家族との幸福、つまり家族への強い「情」を大事にして転職するのだと考えてみてはどうでしょうか。

■転職活動は在職中にやるのがマネーハックの大原則

 先ほどのパソナキャリアカンパニーの調査にはさらに興味深いデータがあります。転職先が決まってから会社を辞めたという人が54.3%もいるうえ、年収700万円以上の人は76.7%とかなりの多数派となっていることです。

 これは重要なデータだと思います。私もマネーハックとして、転職活動は絶対に在職中にやるべきだと考えているからです。

 離職して少し休んでから転職活動、なんて考えていると雇用保険(求職者給付)のタイムリミットの間に次を決めなければといったプレッシャーが生じます。タイムリミットは雇用保険の加入期間が1年以上10年未満の場合で90日、10年以上20年未満の場合でも120日しかありませんので、最後の1カ月などは雇用条件の検討よりも「まずは再就職」ということになってしまいます。

 要するに本当の好条件を見つける前に「妥協」をする恐れがあるわけです。

 在職中にひそかに転職活動をすれば、今の会社より条件が悪いなら無理に離職せず、今の会社にしがみつくという選択肢を残すことができます。会社のほうから無理やりあなたを解雇することは難しいので、本当にいい条件がみつかってから辞表を提出すればいいのです。

 会社のオフに面接を受けることは裏切りではありません。自分の能力をしっかり換金して、できるだけ多くの報酬を得ようとする努力ですから、気持ちは堂々と(でも会社にはいわずに)転職活動をしてください。

 キャリアアップについて、まだまだテーマは尽きないのですが、NIKKEI STYLE「出世ナビ」にもなかなか面白い情報が多いのであわせてチェックしてみてください。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはITスキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。所属は日本年金学会、東京スリバチ学会。近著に『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』(明日香出版社)『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)などがある。趣味はマンガ読みとまちあるき(看板建築マニアでもある)。Twitterアカウントは@yam_syun。ホームページはhttp://financialwisdom.jp

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