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米で急成長 海外ETF、投資のポイント 大手運用会社に聞く

2016/9/30

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 米国株の上昇や中長期的な円安見通しから、海外投資に目を向ける人が増えている。特に、日本からでも一部の証券会社を通じて購入でき、手軽に分散投資が可能な海外上場ETF(上場投資信託)は海外投資の有望な手段といえる。米国市場でETFは急成長中だ。ブラックロック・ジャパン iシェアーズ事業部門の新井洋子ディレクター、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの杉原正記ETF営業部長、ウィズダムツリー・ジャパンの渡辺雅史ETFストラテジストの3人に、海外上場ETFへの投資のポイントを聞いた。

 ――2000年には1000億ドル未満だった世界のETF市場は15年末に約3兆ドルに膨らみました。特に米国市場のETF市場は、15年末に2.1兆ドル超(銘柄数は1800超)と拡大しています。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの杉原正記ETF営業部長

 杉原「米国の富裕層や中間層では、資産運用などをフィナンシャルアドバイザー(FA)に任せることが多い。米国のETF残高の約半分は、FAを通じて購入した個人投資家のマネーだ。米国のFAは金融商品を顧客に売った販売手数料ではなく、顧客の資産残高に応じた報酬を得るのが一般的。そのため、手数料や運用成績をシビアに比較して金融商品を選ぶ。低コストで分散投資が手軽にできるETFは、そうした顧客目線のFAから評価を得ている」

 新井「リーマン・ショック直後に、株と債券など一般に値動きが異なると考えられていた資産が一方向に下落したことから、より多様な資産に分散するマルチアセット運用が好まれるようになった。株式だけでなく、債券やコモディティーなどETFの商品ラインアップも拡充している」

 ――いま注目されているのはどのようなETFなのでしょうか。

ブラックロック・ジャパン iシェアーズ事業部門の新井洋子ディレクター

 新井「16年上半期は、債券型や金のETFへの資金流入が目立った。特に債券型のETFへの資金流入額は、世界全体で今年の年初から8月までに951億ドルと、15年の年間資金流入額(572億ドル)を既に大きく上回っている。世界的な低金利で少しでも利回りをとれる商品を探す動きが強まったことや、英国のEU離脱決定を巡り世界経済への不透明感が高まったことなどが背景にある」

 「個人が個別の債券を直接、集めてポートフォリオを作るのはなかなか難しいが、ETFなら容易に様々な債券に銘柄分散できる。例えば『iシェアーズMSCI ACWI』は先進国と新興国の株式1300銘柄、『iシェアーズ・コア米国総合債券市場』は5700超の米国の投資適格債を組み入れている」

 渡辺「独自の基準で選んだ銘柄で市場平均を上回る運用成績を目指すスマートベータ型ETFの存在も目立ってきている。まだ機関投資家の購入が中心だが、配当や利益の成長性、低ボラティリティーなど様々なコンセプトのETFが登場している。英国のEU離脱が決まった後は、米国の利上げの行方に市場の話題が移り、金利の上昇に対抗できる配当の成長の可能性が注目された。その結果、『米国株クオリティ配当成長ファンド(DGRW)』や『米国小型株クオリティ配当成長ファンド(DGRS)』への資金流入が増えた」

 ――米国市場には1800を超えるETFがありますが(日本から購入できるのは現在300銘柄前後)、どんなポイントに注意して銘柄を選んだらいいでしょうか。

ウィズダムツリー・ジャパンの渡辺雅史ETFストラテジスト

渡辺「ETFが組み入れている個別銘柄を確認することが大切だ。スマートベータ型ETFの中には個人投資家にもわかりやすい高配当銘柄で構成するETFがあるが、組み入れ銘柄に業種の偏りがあるものもある。投資信託と違ってETFはポートフォリオの中身を毎日100%開示しているので、しっかり確認したほうがいい。投資信託と同様に、ファンドができてからの運用実績を3年、5年、10年と見ることも重要だろう」

 杉原「海外投資をする際に壁となるのは情報格差だ。運用会社が海外の場合、ウェブサイトで日本語の運用報告書が提供されていたり、問い合わせができたりするなど、日本でのサポート体制が整っている銘柄を選ぶのもポイントの一つだろう。ステート・ストリートでは個人投資家が証券会社から購入できる海外ETF約30銘柄はすべて日本語で情報や資料を提供している。運用に関する問い合わせがあれば、日本法人が窓口となって対応している」

 「長期で保有する銘柄を探す場合は、純資産総額にも注目したい。純資産総額が大きい銘柄は、突然上場廃止になるなどのリスクが低いと考えられるからだ。取引量が大きく流動性の高い銘柄は、売値と買値のスプレッドが小さいため、実際の取引もしやすい。例えば今年上半期に資金流入が増えた金のETF『SPDRゴールドシェア』は東証にも上場しているが、1日の取引量はNY市場が平均200万株以上あるのに対し、東証は5000株程度。取引が米国時間となる不便さはあるものの、NY市場の流動性を生かして海外上場のETFを使って機動的な取引を行うも一考に値する」

 ――購入時に為替手数料がかかる点が気になります。

 渡辺「ホームカントリーバイアスというが、日本の投資家の資産は円に偏りがちだ。資産の一部を外貨で持つという発想を持つべきだろう。いったん外貨にした資産は、ETF売却後もそのまま外貨で持ち続けていれば、為替手数料の負担はそれほど大きく感じられないのではないか」

(聞き手はマネー報道部 川本和佳英)

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