バラエティー番組満足度 1位はタモリ、2位は生き物
「視聴率」は放送時間にテレビで見られた率を示すが、今回は、スマホなどテレビ以外も含み、放送翌日までに視聴した「接触数」と、そこで見て面白かったかを5段階評価する「満足度」を集計、平均値を出したものから、人気番組を探った(調査はデータニュース。1都6県、20代から70代までの男女3000人を対象)。昨日公開のドラマ編に続き、バラエティー編のランキングをお届けする。
新たな発見のある散歩番組に高い支持
視聴習慣に関わり、ファンを取り込めれば局にとってドラマよりも強力な下支えとなるバラエティー。「満足度」が高いのはどのような番組か。
1位は、最近視聴率も好調な『ブラタモリ』。以前は東京近郊に限られていたが、レギュラー放送で全国を回るようになって今年で2年目。段差や断層にこだわるなど、タモリの目のつけどころが光り、専門的な情報が満載だが、散歩番組ならではの気楽さで見られる。「興味深く勉強になった」(男性36歳)という意見が多く、知的好奇心が満たされるところが満足度につながっているようだ。ほかに、こちらは行き当たりばったりのゆるさが魅力の『モヤモヤさまぁ~ず2』が7位に入っている。散歩番組は一時期ブームになっていたが、知っている場所でも新たな発見があることから、意外と満足感を得られるジャンルのようだ。
次いで、『トコトン掘り下げ隊!生き物にサンキュー!!』が2位となった。14年の放送1年目は、様々な生き物をテーマにしてきたが、15年からはペットとしてより身近なイヌ、ネコを重点的に取り上げており、特に女性の支持を得られるようになった。「かわいくて癒される」(女性54歳)、「家族で楽しめる」(女性41歳)と、和やかな持ち味でファンを増やしている。生き物系では『天才!志村どうぶつ園』が10位に入っており、支持層、感想ともに似た傾向だ。
3位には、『世界の果てまでイッテQ!』が入った。15年のバラエティー平均視聴率ランキングで1位になった国民的番組は、満足度もやはり高かった。世界の祭りやアクティビティーなどに参加し、出演者が思い切りよく体を張る姿は圧巻。「温泉同好会が面白く、お腹が痛くなるまで笑った」(女性30歳)、「子どもと一緒に見て大笑い」(女性40歳)と、バラエティーらしい楽しさで視聴者を引きつけている。
アポなし取材の見ごたえ
新しい番組で最も好調なのが、4位の『家、ついて行ってイイですか?』だ。15年10月から深夜でレギュラー放送が始まり、16年4月からゴールデンタイムに昇格した。駅で終電を逃した人に番組スタッフが声をかけ、タクシー代を出す代わりに自宅までついて行っていいかを交渉する。アポなしで訪れる部屋には生活感があり、朝まで話を聞く間に、ドラマのような印象的なエピソードが語られることが多い。「いろいろな人生が垣間見られる」(男性44歳)、「笑いも涙もあって面白い」(女性32歳)と、ドキュメンタリーのような見ごたえが強みとなっている。一般の人の人生ドラマをテーマとする番組としては、海外ものの『世界の村で発見!こんなところに日本人』が9位に、『YOUは何しに日本へ?』も12位に入った。
若者に人気の『夜ふかし』
5位には、『月曜から夜ふかし』がランクインした。放送が深夜帯になるためか、20~34歳の若い層の支持が高い。MCの村上信五とマツコ・デラックスが、街頭インタビューなどのVTRを見てトークする。滑舌の悪い女性や、失敗してばかりの発明家など、個性の強い一般の人をいじる内容で、「マツコと村上君の掛け合いが面白い」(男性39歳)、「辛口なテロップや出演者の正直な毒舌に好感が持てる」(女性23歳)と、深夜らしいトークが人気の要となっている。マツコの番組では『マツコの知らない世界』も14位に入った。
そのほか『嵐にしやがれ』が6位、『VS嵐』が11位。女性だけで見れば、両番組とも満足度は3.8を超え、『ブラタモリ』に次ぐ評価となる。20年続く8位の『鶴瓶の家族に乾杯』は「ほのぼのする」(男性52歳)という感想が多く、50歳以上の満足度が高かった。
今回、視聴率では安定しているクイズ番組は、上位に入らなかった。その場で楽しむという性質上、必ずしも満足度と釣り合うとは限らないようだ。
【研究】『ブラタモリ』 タモリを驚かせたい気持ちが奏功
バラエティーでの満足度No.1は『ブラタモリ』だった。タモリが町を歩きながら、その土地の歴史や文化を探る。どんなところが支持されているのか。
制作統括の中村貴志氏は「ディレクターが現場を歩き回って、初紹介となるネタを探しています」と明かす。例えば小樽の回では、山を削って平地を作った町のはずなのに、1カ所盛り上がったところに建っている家を発見。疑問に思い、案内人である専門家と調べた結果、100年前の「削り残し」だという事実にたどりつき、地元の新聞にも取り上げられた。「普通なら通り過ぎてしまうところでも、地形が好きなタモリさんだったらどう見るかと意識して、ほかの番組やガイドブックなどで扱っていない情報をすくっています」。
失敗しても撮り直さない?
そのため、ロケの準備に最低でも2カ月はかける。マニアックになりすぎないように、松山なら道後温泉、沖縄なら首里城と、有名な観光地も押さえたうえで、歴史や地学、文化など、何十人ものエキスパートに話を聞く。そんな地道な取り組みが実を結んでおり、昔電車が通っていた痕跡など、地元の人でも知らないような土地の成り立ちを毎回紹介できている。
ロケでは、ドキュメントの部分を重視。タモリに台本は渡さず、うまく撮影できなかったとしても、撮り直しはしない。だからこそ、嘘偽りがない、タモリの楽しそうで前のめりな反応が際立つ。「専門家の方も、ディレクターも、タモリさんを驚かせたいんです(笑)。面白いものを見せたいというモチベーションが高いことが、プラスに働いています」。
地質の話など難しい内容が多いが、近江友里恵アナウンサーとのやりとりなどに、ユーモアがあふれる。汗をかきながら山を登ったり、ヘルメットをかぶって地下を探索するなど、この番組ならではのタモリの姿が見られるのも、高い人気を得ている理由のひとつだ。
対象期間は4月1日~8月7日。地上波全局、19時~23時台にスタートする番組で集計。接触数(視聴者数)が少なすぎると満足度は高くなる傾向があるため、接触数50人以上の番組を対象とした。データニュースが運営するテレビウォッチャー調べ。http://tv-watcher.jp/
視聴率はビデオリサーチ関東地区調べ。平均視聴率はビデオリサーチ関東地区のデータを基に日経エンタテインメント!編集部で作成。小数点2位以下は四捨五入。放送時間拡大などによる加重平均はしていない。
(ライター 内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2016年10月号の記事を再構成]
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